その 経営目標 、社員は腹落ちしていますか?目標が浸透しない5つの理由とその対策

2022.05.26

経営目標 」は、全社員が一丸となってゴールに向かっていくための大方針です。

ところが、多くの会社でその目標が上手く機能しないケースが見られます。
 

目標が社員に認知されていなかったり、知っていても自分事でなかったりと、せっかく立てた目標が形骸化してしまっているのです。 

目標が単なるお飾りで終わってしまったら、会社にとって何一ついいことはありません。
 

今週のブログでは、会社の目標が形骸化する5つの理由と対策、企業活動に力を与える目標設定方法についてお伝えします。

 

「 経営目標 」が形骸化する5つの理由

 
あなたの会社の社員のうち、このような人はどのくらいいますか?
 

  • 会社の年度目標をスラスラ言える人
  • 全社目標を自分個人の目標と連動させ、常に目標を意識しながら仕事をしている人
     

会社目標が社員に浸透しないのは理由があります。

仮に社員が目標を理解したとしても、経営陣と同様のマインドで目標に向かってチャレンジしない(両者の意識に大きな溝がある)のも理由があります。

 

目標が浸透せず行動につながらない理由、形骸化してしまう理由を、大きく5つの角度から説明します。

 

1. 経営目標に魅力がない

2. 経営目標に腹落ちしていない

■目標水準の妥当性
■丁寧な説明
■自分事化プロセス

3. 経営目標に向かう企業文化が作れていない

4. トップの本気度が足りない

5. 経営目標を管理する仕組みがない

 

1. 経営目標 に魅力がない

 
言葉通りですが、目標自体に「ぜひ頑張ろう!」「その目標に向かってチャレンジしよう!」と思える魅力がない限り、社員はついてきません。
 

例えば上場企業が「投資家に毎年20%の成長を期待されているから」という理由で会社目標を20%成長にしても、社員にとっては「私には関係ないわ・・・」という気持ちになります。

オーナー社長が「今年は30%成長するぞ!」と威勢よく会社目標を伝えるだけでは、社員にとっては「社長は儲かるからいいけど、僕らにメリットあるの?」と冷めた目で見られるでしょう。
 

また、目標が根性論に偏り過ぎまるで勝ち目のない作戦であれば、最初から戦意喪失します。

お客様の信頼を損ねるような販売方法で「売上倍増!」と言われたら、多くの人は心から前向きに取り組めないでしょう。
 

大事なのは、社員の目に魅力的に映る目標であることです。
 

「社員1人1人がなぜその目標を目指すのか?」

「目指すことで、会社にとって、そして社員1人1人にとって、どんないいことがあるか?」
 

単なる数字目標だけではないロマン、夢、意義といった魅力が内包されていると、人の心を動かす力になります。

 

2. 経営目標 に腹落ちしていない

 
魅力ある目標もそれが自分にとって手触り感のあるものでなければ、行動に移すことができません。

大事なのは「腹落ち」、心からの納得です。
 

腹落ちしてもらうには、これらのことが欠かせません。
 

  • 目標水準が妥当であること
  • 丁寧な説明があること
  • 自分事化するプロセスがあること
     

詳しく見てみましょう。

 

<目標水準の妥当性>

 
昨年までの成長率が5%だったのに、今年の目標が急に20%に上がったとします。

それを実現し得る新商品展開など根拠があればいいですが、特段の根拠もなく高い目標だけが下りてきたら、心の中では「しょせん無理でしょ」という気持ちが芽生えます。

 

<丁寧な説明>

 
会社目標を立てるのは社長や経営陣だったとして、社員に対してその目標設定に至った理由をきちんと説明していますか?

決まった目標のみを発表するだけでは理解が深まりません。

どのような議論を経て、なぜその目標に決定したのか、その舞台裏、ストーリーをきちんと伝えることで、理解と納得が深まります。

 

 

<自分事化のプロセス>

 
「目標が下りてくる」という言い方があります。

社長や経営陣が決めた目標が各部署に“下りてくる”というように、完全に上から下への情報の流れになっています。

そこには、「上が決めた目標だから、自分はそれに従うだけ。特に意見の余地も反論の余地もない」との暗黙の了解もあったりします。
 

これではどこまでいっても自分事につながりません。

最初のステップは“下りてくる”目標でもいいですが、それに対して質問し、意見を交わし、実現に向けたやり方など主体的に議論する場が必要です。
 

さらに全社目標に向けて、

「自分の部署では何をしたらいいか?」「自分自身は何を重点的に進めたらいいか?」などを考え、会社目標を身近な存在に引き寄せましょう。 

 

3. 経営目標 に向かう企業文化が作れていない

 
先ほど目標水準の妥当性の話をしました。

目標管理の基本的なセオリーでは、目標設定の適切な水準は「ストレッチゴール」。

つまり、普通にやれば届く水準ではなく、相当頑張れば何とか手が届く水準に目標を設定しましょう!というものです。
 

一方、セオリー通りではなく、「えっ!そんなの絶対無理でしょ・・・」という水準の目標設定が絶大なパワーを引き出すことがあります。

 
限界を超えたゴールを設定することにより、思考が刺激され、従来の常識を疑い、全く新しい発想が出てくるような場合です。

これまでの価値観を取っ払い、ゼロベースで考え直した時に、大きなイノベーションや変革が起きます。
 

ただしこれができるのは限られたチームだけ。

それは、リーダーシップ、メンバー同士の信頼関係、相互理解、助け合う風土、チャレンジに伴う失敗を許容する風土が備わっているチームです。
 

組織にそのような企業文化が備わっていれば、会社目標に向かっていく社員達のチャレンジ姿勢は大きく異なります。

 

4. トップの本気度が足りない

経営目標

 
会社目標を立てた経営トップ自身が、心の底からその目標を実現したいと思っているでしょうか?

イチローが現役時代にやっていたように、毎朝仕事開始前にその目標を心の中で反芻し、日々決意新たにしているでしょうか?
 

トップ自身が目標を立てたことでほっとしてしまい、実現に向けた迫力、実行力を欠けば、全社目標は絵に描いた餅で終わります。

トップの気持ちが緩めば、その空気が幹部、さらに中間管理職、さらに一般社員へと、あっという間に伝染してしまいます。

 

5. 経営目標 を管理する仕組みがない


社員が会社目標を理解、腹落ちし、「今期絶対達成!」と意気揚々とスタートしても、油断するとすぐに息切れします。

これはどこの組織においても、普通に起きる現象です。

個人の目標が三日坊主で終わるのと同じように、組織の目標も持続しないことがほとんど。

逆に言えば、ちゃんと1年間持続できる会社は圧倒的な優良企業になっていきます。

それでは、目標に向けて進んでいるかを管理し、しっかりPDCAを回すコツは何でしょうか?
 

 
その答えはとても単純です。

「しつこいこと」「嫌われ者役がいること」に尽きます。

 
高い目標に向けて毎日やると決めたことができなかった場合、もしそれを放置したら、堤防が決壊するかのようにあっという間に良い習慣が崩れていきます。
 

  • できない人がいたら、必ず指摘してやってもらう。
     
  • 毎日毎日チェックして、その都度指摘する。
     
  • 問題児がいたら厳しく指導する。
     
  • 全体的にうまくいかない時は議論してすぐに対策を講じる。そしてまた毎日チェックする。
     

 
これを繰り返すしかありません。
 

皆が同僚に遠慮したり、しつこく言って嫌われるのを気にし出すと、組織は安易な方向に流れていきます。

正にリーダーが自ら嫌われ役を買って出る出番です。
 

目標管理の難所はシステムやレポート作成、データ集計等ではありません。

最大の難所は、しつこく続けること。嫌われても言い続けることです。
 

リーダーのその粘りと迫力が、やがて組織風土を変えていくのです。

 

まとめ

 
「売上、利益を増やす」だけのために、どれほどの社員が本気で頑張るでしょうか?

「これが目標です」とだけ言われても、100%納得して力を発揮できる人はいません。
 

会社の目標は、社員が自分事化・シンクロして初めてその意義が生まれます。

そのためには、社員の心を動かす目標をつくり、腹落ちさせ、進捗を振り返り、しっかり管理を行っていくというプロセスが欠かせません。
 

ぜひこれを機に、上記の5つの角度からあなたの会社の目標設定を見直してみましょう。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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