数多くの中小企業に共通する弱点の1つが「 経営管理 」です。
例えば
売上をどうやって伸ばすか、商品をどのように改善するか、人材をどうやって採用するか・・・
こういったことは常に考え投資も行っていますが、
経営管理となると、あまりその是非について議論されることもなく、その観点が抜け落ちてしまっています。
「社長は考えていたとしても、幹部や現場の社員は経営管理の視点をほとんど持ち合わせていない」ということも多々あります。
これは非常にもったいない機会損失です。
なぜなら「経営管理」は、大した投資をしなくとも会社の業績を抜本的に底上げする力を秘めているからです。
今週のブログは、中小企業にとって欠かせない「経営管理の4つの視点」についてお伝えします。
目次
中小企業が力を入れるべき 経営管理 とは?
「経営管理」は広い範囲をあらわす言葉で、予算の策定に始まり、業務の実行プロセスをモニタリングし、PDCAを回すという一連の活動を指します。
全社でコントロールする経営管理もあれば、各部署単位、各業務単位で行う経営管理(例えば、生産管理、顧客管理、人事管理など)もあります。
ここでは、「全社的な活動として行う経営管理」において、中小企業が力を入れるべき視点についてお伝えします。
中小企業の 経営管理 に欠かせない4つの視点
経営管理において非常に重要な視点がこちらの4つです。
これらは重要度が高いにも関わらず、中小企業では疎かになりがちです。
それぞれについて詳しく説明します。
商品・サービス別利益
多少ざっくりでも構わないので、商品・サービス別利益を定点観測する仕組みを必ず取り入れましょう。
私が以前働いていた会社では、CGやVR技術を活用した映像コンテンツをお客様に提案していました。
提案にあたっては、プロジェクト単位で営業がお客様に見積りを出しますが、その見積り金額がとてもアバウトでした。
かかる費用としては、社内のクリエイターがコンテンツ制作に費やすコスト(工数)、映像機器などのハードウェア代、企画の外注費などが含まれ、そこに一定の利益を乗せて見積額を算出していました。
しかし、算定の根拠となる工数単価とクリエイターの人件費が連動しておらず、実際の作業に要する時間数も非常にざっくりしたものだったので、営業担当者が自分の経験で何となく見積り金額を決めていました。
さらに、受注した後も実際に発生するコストをプロジェクト単位で計算していなかったため、一体黒字なのか赤字なのかが分からず、当初の見積り通りコストが収まったか否かの検証もできませんでした。
当時の私は経営企画責任者としてこの問題の改善に取り組みました。
まず、全ての見積りに目を通し、適切な算出がされているかをチェックしました。
そしてプロジェクト毎の収益管理システムを導入し、クリエイターの時間あたりコストを算出。
これによって各プロジェクトにかかるコストがリアルタイムに把握できるようになりました。
この結果、大きく2つの改善がありました。
- 今まで儲かっていると思っていたプロジェクトが赤字だったり、逆のことが見える化され、営業の見積り精度が改善しました。
- クリエイターがプロジェクトの予算工数を意識して効率的に仕事を行うようになり、全体の損益が改善されました。
「値決めは経営」と京セラ創業者の稲盛和夫さんが仰っているように、価格設定は最も重要な経営判断です。
しかし価格を決めるには、個々の商品・サービスのコストを知らなければ決めようがありません。
会社の様々な商品・サービスのうち、どれが利益貢献し、どれが赤字を出しているか?
これを把握せずして経営の舵取りは困難です。
事業別(部署別)利益
上記で個々の商品・サービス別利益について述べましたが、複数の商品・サービスを束ねる事業全体の利益や部署別の利益も定点観測が欠かせません。
その数字が示されないとしたら、羅針盤のない航海をさせているようなものです。
もともと全社業績しか社員に示してこなかった会社が、部署別利益を開示し、賞与支給においても部署別利益を反映することにした途端、社員の目の色が変わったケースもあります。
自分の部署がちゃんと儲かっているか否か、ビジネスに携わる人なら誰もが必ず認識しておくべきことです。
顧客別利益
「A社との取引をもっと増やして大丈夫か?」
「B社との価格交渉では下限をいくらにすべきか?」
このような問いは、当該顧客からの利益を知らずして判断することはできません。
弊社のお客様で、人材派遣事業を行っている会社があります。
売上の半分程度は特定企業との大口取引、残り半分は多数の顧客による小口取引という顧客構成ですが、
社内では「特定企業との大口取引は黒字で、残り半分の小口取引は赤字」と誰もが信じていました。
ところが顧客別利益を合理的な方法で修正算定したところ、
実は「大口が赤字で小口が黒字」と、真逆の結果だったのです。
このコペルニクス的転回(180度認識が変わる)により、大きな変化がありました。
- 経営陣の事業戦略に対する考え方が変化
- 黒字と思っていた事業が赤字だったので、その部署の担当者の意識や価格設定の考え方が変化
- 全社的にコストに対する意識が敏感に
このように、どのお客様で利益が上がり、どのお客様で赤字を出しているかという顧客別利益の検証も、大いなる示唆や材料を与えてくれます。
1人あたり生産性
「1人あたり生産性」も経営管理において外せない視点です。
ある会社のA事業部は会社の稼ぎ頭と言われており、毎年3億円の利益を出しています。
一方B事業部は8,000万円の利益です。
これを1人当りで比較したところ、A事業部は社員が150名いるので、1人あたり200万円。
B事業部は20名なので、1人あたり400万円でした。
利益額の小さいB事業部の方が効率は2倍ということがわかります。
もちろんこれだけでA事業とB事業の良しあしを論じることはできませんが、
1人当り利益が大きいほど、社員に利益還元できる余力が大きいのは間違いありません。
人口減、人手不足の今の日本において、大量の人材を投入して低い生産性で勝負するビジネスモデルは成立が非常に難しくなっています。
いかに1人当り生産性を高めて効率のよいビジネスを作るかという視点は、各事業の責任者に欠かせないものです。
なお1人当り生産性の算出については、「付加価値 ÷ 社員数」を用いるのが妥当かつ比較しやすいと思います。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
マネージャーの仕事で意外と意識されていない「仕事の生産性向上」|生産性を高める10項目
まとめ 経営管理 次第で人の行動が変わる
以上、中小企業に欠かせない経営管理の4つの視点についてお伝えしました。
経営管理をきちんとやると、社員の認識が変わり、意識が代わり、行動が変わります。
もし売上金額だけで営業担当者を評価していた会社が、利益額で評価するよう変更したらどうなるでしょうか?
「俺の部署は会社の稼ぎ頭だぜ」と肩で風を切って歩いていた社員が、実は自部署は赤字と知ったらどうなるでしょうか?
経営管理の結果は必ず数字に出てきます。
経営管理で数字を的確に把握し、数字が語る真実を社員にしっかり示していきましょう。
全社の経営レベルが必ずや一段上がるはずです。
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