コロナで丸裸にされた、組織と人の向かう先

2020.08.27

新型コロナウイルスの影響により働くスタイルが大きく変化し、その結果、水面下で見えていなかった諸問題が一気にあぶり出されました。

元々、白と黒ははっきり見えていたけど、何となく放置されていたグレーが、白と黒にくっきり分けられた印象です。

  • 強い組織と思っていたが、思ったよりもろかった・・
  • 元々目立っていなかった社員が、コロナ期に大活躍した・・
  • リモートワークを解禁すべきか侃々諤々議論していたのは一体何だったのかと思うほど、いざやってみたら何の問題もなかった・・

あなたの会社でも色々な変化があったのではないでしょうか。

 

この大変化を経て、今後企業は組織をどのように作り替えて行けばいいでしょうか?

 

既にコロナに受け身対応する時期は過ぎ去りました。

事業の存在価値、ビジョン、雇用、評価、働き方などを根本から見つめ直す時が来ています。

 

実際に幾つかの会社で起きたケースを3つ紹介します。

 

営業担当者の提供価値の差

 

ある広告系の会社。
コロナでかなり影響を受けましたが、営業部では業績が殆ど落ちない社員と激減した社員がいました。

  • 【影響少社員Aさん】 通常月250万円→コロナ下220万円
  • 【影響大社員Bさん】 通常月300万円→コロナ下70万円

この会社の社長はこれまでBさんの方が優秀だと思っていました。
しかしコロナを経て見方が逆転しました。

 

Aさんは派手さはないけれど、お客様からの信頼が厚く、競合の営業担当者の中で最も頼りにされている存在でした。

Bさんは好景気の波にのって新規開拓を広げていました。
受注がリピートしない傾向はありましたが、それを上回る勢いがありました。

コロナを経て明らかになったことは、お客様の財布の中で、Aさんは不景気の時でも使うお金を託される存在、Bさんは好景気の時のみ発生する上澄みの仕事を受ける存在でありました。

よって上澄みが蒸発した瞬間、Bさんは仕事が激減しました。

 

当のBさんは受注減で営業インセンティブが激減したため、この会社に居続けて大丈夫だろうか?と考え始めました。

そして社長は改めて深く考える機会となりました。

  • 自社の営業担当者が真にお客様に貢献する価値とは何だろうか?
  • 真に評価すべき人とはどんな人だろうか?

 

出社する人、しない人

 

ある住宅管理系の会社。

緊急事態宣言を受け、突貫工事でテレワーク環境を整備、基本在宅勤務OKとしました。

 

ところがこの会社にはどうしても現場に行かなければできない仕事もありました。
電車に乗って外出するのは憚られる時期ではありましたが、誰かは行かなくてはなりません。

担当部署内で打合せした時、明確に『私は行きたくありません』と主張する社員Cさんがいました。

それを聞いて、自分だってできれば行きたくないけどお客様がいる以上誰かが行かなくてはと思い、『私が出ましょうか』と手をあげた社員Dさんがいました。

 

Cさんの話を聞いて社長はとてもがっかり・・
仕事の姿勢を教えてこなかったことを後悔しました。

一方Dさんは必ずしも優秀社員とは言えなかったけど、その心意気に感動しました。

 

あの時期、Cさんのような声が出るのも理解できなくはありません。Cさんなりの危機感や恐れがあったはずです。

さらにCさんは、現場業務のないリモート環境で働ける会社の方がいいのでは?と考えるようになりました。

 

社長がコロナの混乱が少し落ち着いた頃、改めて考えたことは、

  • そもそも正社員とは何なのか?(正社員は会社の指示に従って業務を行う存在、苦しい時は一緒に頑張ってくれる存在であるべきと思っていたが、どうもそう単純ではないようだ・・)
  • 会社が大切にすべき社員はどういう人か?
  • 個人の意志はできるだけ尊重したいが、社員同士が互いに相手の立場を考え助け合わなければ組織として存続していけるのだろうか?

 

在宅リモート営業で学び合う組織と孤立する組織

 

最後にもう1つ、営業組織の話です。

対面営業に慣れていた人にとって、リモート営業は皆苦労されたと思います。
私も経験しましたが、特に新規のお客様と関係性を築くのは難しかったです。

 

世の営業が皆リモートに苦労していた時期、ある会社では悪戦苦闘する営業担当者同士が声を掛け合い、リモート営業の悩みや工夫について勉強会を行いました。

zoomアイスブレイクのネタ、共有資料の見せ方、声のトーン、相手の反応がわからない時の対応など、色々な観点から情報共有を行いました。

同僚も苦労していることを知ると皆気持ちが楽になり、先輩のいいやり方も学び、担当者達は徐々にリモート営業スキルを上げていきました。

 

しかしそんな会社ばかりでもありません。

リモート営業が上手くいかず、自宅で悶々とする営業担当者も沢山います。

同僚とたまに連絡をとって愚痴を言ったり、上手くいかないことを慰めあったりするものの、打開しようという動きになりません。

チームとして、この苦しい時を乗り越えようと動きが自発的に生まれない状態です。

 

そもそもリモート営業なんて殆ど誰も経験がありませんでした。
上司だってどうやったらいいかよく分かりません。

その時に皆でタッグを組んで立ち向かえるチームとそうでないチームにくっきり明暗がわかれました。

しかし、これはコロナでたまたま浮き彫りになったにすぎません。

普段どのように組織を作ってきたかの差がはっきり出ただけなのです。

 

組織と人の向かう先

 

以上3つのケースを紹介しました。

コロナを経て企業は改めて問われることとなりました。
「自社の事業が生み出す真の価値とは? 雇用の在り方とは? 人の評価とは? 組織風土の在り方とは?・・」

もちろん正解はなく、あなたの会社がどんな会社でありたいかという想いが大事です。

 

別に今の環境下であっても、
「うちの会社はリモートはよほどの時しか認めない。集まることを重視する!」

これはこれで全然いいですよね、明確ですし。

「ジョブ型なんて無理無理! うちの会社は多能工で臨機応変な対応が強み。安定した正規雇用と楽しい仕事環境を創り出す分、社員には色々な仕事をやってもらう」
これもとってもいいですよね。

もちろん本気でジョブ型を追求するもありです。

どのような道であれ、世論や流行に惑わされず、自分達らしいあり方を追求したいものです。

 

忘れてならないのは、中小企業には主に4つのタイプの働き手がいて、それをどのように組み合わせるのが最適か?という視点ではないでしょうか。

  • (スキルを持った上で)全社視点を備え、重要業務においてリーダーシップを発揮できる人
  • 専門的なスキルで価値提供する人
  • 専門性は高くないけど、会社のことをよく理解し、様々な実務を着実に遂行する人
  • ルーチンの仕事を着実に行う人

 

以上、「コロナで丸裸にされた、組織と人の向かう先」でした。

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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