人事評価 でよく問題になるのはその公平性です。
「〇〇さんは上司に気に入られているから評価が高い」
「□□さんは目標が簡単すぎるから達成して当然。評価が高いのはおかしい」
「上司(評価者)は人を見る目がないから僕の評価は不公平」
などなど、現場からは色んな声が出てきます。
このような問題にどのように対処すればよいでしょうか。
今週のブログでは、人事評価をできるだけ公平に行い、本人の納得感を高め、評価制度を通じて社員の力を伸ばす考え方についてお伝えします。
目次
人事評価 に絶対的な「公平」は存在しない
人事評価の公平性を考える上での1つの大原則は、人が人を評価する限り絶対的な公平はあり得ないと割り切ることです。
「人間が評価するから不公平が生じる」と考えて極力数字で評価しようとトライするケースもあります。
しかし全てを数字で評価できるよう定めたところで、そこにも目標数値の難易度の違いや、本人の力の及ばない外部環境の影響、上司によるサポートの有無の差なども生じてきます。
結局、どこまで追求しても「完全なる公平性」は無理があります。
よって、人事評価制度を運営する側はある程度の不公平はやむを得ないと割り切っていいでしょう。
単年度では不公平が生じても、複数年度では優秀な人材が必ず評価されていくのであれば、それで良いと思います。
とはいえ、度を超えた不公平があると人事制度自体が社員の不満の種になりかねません。
人事評価制度の運用次第で、より公平な評価に近づくよう精度を高めることは可能です。
人事評価 運用のコツ
それでは人事評価をいかに公平に実施するかという観点から、その具体的な方法について詳しく見ていきましょう。
目標設定を真剣に
目標管理を取り入れている場合、設定する目標の難易度によって不公平が生じやすくなります。
目標を立てる段階で必ず下記の3つの点を意識し、しっかり手間をかけて目標設定をしましょう。
1. 目標を立てる手順に注意
各部署、個人個人がバラバラに目標設定するのではなく
全社の目標設定➡(それにもとづく)部門の目標設定➡課の目標設定➡個人個人の目標設定
という流れで作りましょう。
例えば全社で20%成長という出発点があれば、各部門、各個人の目標もその難易度に連動したものになっていきます。
2. 個人目標は全社員がストレッチトゴール水準で定めるルールに
ストレッチトゴールとは、頑張れば何とか手が届く目標水準です。
普通にやっていれば達成できる水準は低すぎ、どんなに頑張っても無理な水準は高すぎるので、その間の何とか手が届くぎりぎり水準に設定します。
3. 目標は会社/部門の方針と本人の考えを摺合わせしてください。
会社/部門が一方的に個人目標を決定するのではなく、本人の考えるストレッチトゴールをぶつけ合い、よく話し合った上で納得感のある目標を設定しましょう。
以上3つの点を考慮することにより、目標難易度のバラつきを減らし、本人の納得感も醸成することができます。
月々の1on1等の実施および結果の記録(備忘録として)
通常人事評価は半年に1回、または年に1回実施します。
ところが半年経ってから上司からいきなり低い評価をつけられたら、本人的には納得感に欠けるでしょう。
「だったらもっと早く今の仕事ぶりを注意してくれればいいのに・・・」
「そこまで高い目標を求められてるなんて知らなかった・・・」
これを防ぐには、少なくとも毎月1回は上司と部下の間で1on1ミーティングの場を持ち、仕事の進捗や課題について話し合うのがおすすめです。
1on1にはその他の効果も期待できるので一石二鳥です。
月に1回話し合っておけば、お互いの認識のズレがなくなり、半年後、1年後の評価にも納得感が得られるはずです。
なお、せっかく1on1を実施するならば、その結果を記録に残しておきましょう。
備忘録的に毎月の進捗状況を記録しておけば、半年後1年後の評価を行なう際の参考にもなり、半年前のことを一生懸命思い出さなくてもよくなります。
360度評価
直上司1人(+その上の上司)の評価だけではある程度のバラつきが出てしまうのは否めません。
普段の仕事ぶりを近くで見ている部下もいれば、接点が少なく評価に必要な情報が不足している部下もいると、同じ上司でも評価の公平性が難しくなります。
そこで有効なのは、360度評価を取り入れ、同僚や部下や他部署などの上司以外の人からの評価も加える方法です。
360度評価は運用上ケアすべき点はありますが、人は他人のことをよく見ているものなので、的を得た評価結果が得られる場合が多いです。
評価される本人にとっても、1名の上司だけに評価されるよりも納得感があります。
部下や同僚の評判をきく
360度評価を導入するにはそれなりの手間や調整を要します。
そのような手間をかけずに評価に客観性を持たせるには、評価対象となる人の同僚や部下に評判を聞いてみましょう。
中には上司の自分に見せる顔と部下に見せる顔が全く違う人もいるので、参考になる意見が聞けるはずです。
人事評価のシーズンに入ってから聞くと相手も構えてしまうので、平時にそれとなく聞いておくのがおすすめです。
評価会議等で目線を合わせる
年度が終了して人事評価を行なう段階では、評価点を最終確定する前に全社で目線合わせを行うのがおすすめです。
部署によって評価の厳しい部署、やたら甘い部署があったりするので、全社的にバラつきをなくし、公平性を高める場とします。
「〇〇部長は評価が甘すぎる!」みたいな不平が出にくくなるでしょう。
上司の評価スキルの向上
言うまでもないことですが、上司の評価スキルは公平性に影響する問題です。
個人の価値観や経験によって評価にバイアスがかかることがあるので、正しいやり方、考え方を研修等で教えていきましょう。
評価結果をオープンにする
社員の評価を思い切ってオープンにする会社もあります。
オープンにすることで、上司としては自分の評価結果に一層のプレッシャーがかかるので、妥当な評価をしなければという気持ちになります。
評価結果をフィードバックする
最終的な年度評価を部下にしっかりフィードバックしていますか?
結果を伝えるだけでなく、良かったところ、足りなかったところ、来年への期待などをしっかり伝えながら、評価結果も伝えてください。
AとかBとかの最終評価結果だけを通知しても本人は何もわかりません。
なぜA評価になったかの説明を行い、納得してもらうプロセスに意味があります。
フィードバックは本人の成長にとって大切な場であるだけでなく、フィードバックする上司側にも評価者としての責任を感じてもらう場になるでしょう。
人事評価 は「公平性」よりも「納得度」
人事評価をいかに公平に実施するかという観点での工夫改善についてお伝えしました。
それぞれの説明の中で「納得」という単語が何度か出ていたと思います。
人事評価で「絶対的な公平はあり得ない」とお伝えしました。
追求すべきは「公平性」より「納得度」です。
仮に公平さにバラつきがあったとしても、評価された本人がその評価に納得していれば大きな問題にはなりません。
上記の8つの方法はいずれも評価の納得度を高めてくれるものです。
少しでも公平な評価に近づけようと会社が努力するならば、社員にとっての納得度は自ずと上昇していくでしょう。
まとめ
そもそも人事評価の真の目的は何だと思いますか?
本来の目的は社員を評価して昇給昇格や賞与額を決めることではありません。
「評価という機会を通じて自己を振り返り、次の成長に向けて目標を新たにする」という社員の成長のきっかけ作りです。
減量中の人が体重計に乗って現時点の体重を測るのと同じで、「人事評価が今の自分を知る良い機会となり次の目標の出発点になる」というのが最も望ましい形です。
その目的を踏まえると、人事評価は公平性や正確性を追求し過ぎるよりも、本人が納得いく評価を行い、しっかりとその評価をフィードバックして次につなげていくことが大事であることが分かると思います。
評価の納得度を高めるためにも、ぜひあなたの会社に最適な形で先の8つの制度運用方法を取り入れてみてください。
こちらの記事もおすすめです。