【経営者必見】社員が言う「リモートワークで支障はない」は本当ですか? リモートワークの課題 と対策

2023.09.21

リモートワークの課題

リモートワークがワークスタイルの1つとしてすっかり定着しました。

会社によってリモートワーク導入の方針や出社要請日数などに違いはあるものの、何らかの形でリモートワークを取り入れている会社が多数派ではないでしょうか。
 

一方で、米国のIT企業を中心に「フルリモートワーク」を禁止する企業も増えています。

話題になったのは、世界中のリモートワークを支えているZOOM社が週2日の出社を社員に求めたことでした。
 

リモートワークには利点もあれば欠点もあります。

今週のブログでは、リモートワークの課題 と対策についてお伝えします。

 

社員は「リモートワークで支障ありません」と言う

 
色々な会社の社員の方に話を聞く機会がありますが、リモートワークをされている方には「リモートになってから何か支障ありませんか?」と尋ねます。

するとほとんどの人は「ほぼ問題ないですね」という回答をされます。

加えて、「通勤の往復時間がなくなったのでプライベートが充実し、通勤ラッシュの身体的負担もなくなり、いいことづくめです」と仰ります。
 

上記のメリットについては私も全く同感ですが、一方で、少数ですがリモートワーク前と導入後の違いを冷静かつ正直に評価できている人もいます。
 

その場合、以下のようなデメリットを挙げることが多いです。
 

 

仕事中にちょっとプライベートの用事をしてしまったり、家にいるので他のことをやってしまったり、正直言うと他人の目がないので緩むところがある

顔を会わせる機会が減ったので、部署の動きなどが分かりづらい

同僚との接点が減ったので、皆が今どんな仕事をしているかが見えにくい

ちょっとした雑談や会話がないので、タスクベースの話ばかり。+αの会話が乏しい

長く在籍する自分はいいが、新しく入社した人は同僚との関係性を作るのが大変ではないかと心配になる

部下や後輩に教える時間が減った(聞かれることも少なくなった)  など

 

これらのデメリットは放置しておける問題ではないので、何らかの対応を考えなければなりません。

 

リモートワークの課題 リモートワークに向く仕事と向かない仕事

 
仕事にはリモートワークに向く仕事とそうでない仕事があります。

仕事の種類を以下のように4つに分類し、詳しく見ていきましょう。
 

リモートワークの課題

 

①の仕事

 
リモートワークで何ら支障がないと言えます。

仕事の大半は個人作業で完結します。情報セキュリティ面がしっかりケアされ、紙書類が少なければ、フルリモートワークでも十分いけるでしょう。

 

②の仕事

 
お客様や営業担当者の状況によって進め方が左右される仕事ではありますが、業務自体は比較的パターン化できるものです。

関係づくりや、ときどき顔を会わせて摺合わせしたりなどは必要ですが、多くの場合はリモートワークで対応可能です。

 

③の仕事

 
初期の計画が固まれば、基本スケジュールに沿って自分の役割を進めていく仕事です。

とはいえ業務自体は都度都度調整が生じたり、原点に立ち返って議論したりというプロセスが必要になります。

業務の一定割合はリモートで打合せしながら進めれば十分ですが、ときどき対面で集まって時間をかけて議論したり、お互いの状況をよく知る必要があります。

 

 

④の仕事

 
④の仕事には2つのパターンがあります。

1つ目

発生する問題に適宜対応したり新たな価値を創出していく仕事で、これはあらかじめ決まったスケジュールで進むものではありません。

皆が日常業務をやりながら、気づいた問題を発信し、議論を重ねながら進めていく仕事です。
 

2つ目

育成や関係づくり、方針合わせなどコミュニケーションを通じて行う仕事です。

リモートワークで進められる部分もありますが、顔を会わせてしっかり時間をとって進めた方が効果の出やすいものなので、リモートワークの限界もあります。

 

社員に「リモートワークで支障が出ていませんか?」と尋ねた時に多くの人が「支障はない」と答えるのは、①や②の業務の人が多いからです。

③や④の業務を担っていたり、責任を担っている人であれば、何らかの不便を感じているのが普通です。

もし全員が「支障はない」と答えるとしたら、その会社では、会社を次のステージに発展させるために必要な④の業務が動いていないことを示しているとも言えます。

 

リモートワークの課題 「スピードが遅れるリスク」がある

 
リモートワークは仕事の遅れの原因になることもあります。

皆さんがよく仰る困りごとで、こんなものがあります。

 

「上司が超多忙な場合、オフィスであればふっと空いた瞬間に相談に行けたのに、リモートだとそういう瞬間が分からず、チャットやメールで相談を送ることとなる

ところが内容によっては文章にしづらいので、相談が後回しになる。文章化してチャットで相談を送っても、上司からのレスポンスが遅いこともある

結果として、対面ならその場で解決していた問題に、数日を要することがある」

 

上司に限らず、同僚同士であっても、オフィスにいればお喋りついでに確認していたことを、リモートではわざわざメールやチャットで送り、その返信を待つというタイムロスが多く発生しています。

 

同僚同士、スケジュール表を共有していたとしても、皆が完全にその時間通りに動いているとは限りません。

打合せと打合せの合間時間をオフィスでは有効活用できましたが、リモートワークではそれが手軽にできない弱点があります。

 

顔を合わせて思いつく相談もある

 
私は複数のお客様の仕事を並行して行っているので、毎日その会社に足を運ぶことはありません。

通常はメールやチャットでやり取りしながら、プロジェクトを進めています。
 

ところが不思議なのは、たまにお客様のオフィスに行くと、ここぞとばかりに色んな人から「ちょっといいですか?」と声をかけられ、色々な相談をされることです。

 
内容は、この日を待たずにメールで相談してくれればいいようなちょっとしたものもあれば、普段やり取りする業務内容とは異なるけど、良い気づきや問題提起をしてくれることもあります。
 

「文章に書いて相談するのは少しハードルが高いので、顔を合わせた時に相談しよう」

 
これはあなたも経験されていることかもしれません。

顔を見ることで「そうだ!せっかくだからあの人に伝えておこう。共有しておこう!」と思い立つテーマもあったりするのです。

 

対面のコミュニケーションの効果

 

対面でコミュニケーションを取るメリットは意外に大きいです。

一緒にランチを食べにいったからこそ聞ける話なんていうのもありますよね。

上司と部下で一緒に商談に向かう途中の電車の中で何気ない会話をしていると、上司が伝えている方針を部下が正しく認識していないことに気づいたりします。

毎朝顔を合わせて挨拶をすれば、部下が何かに悩んでいたり、仕事に本気で取り組めていない様子に気づくこともあります。
 

これらのちょっとした会話はやり取りが大きな問題発見のきっかけとなったり、社員の離職防止につながったり、事業拡大の糸口となったり、さまざまな効果をもたらしていました。

もしフルリモートで顔を会わせる機会がないとしたら、これらの相談ややり取りはどこに行ってしまうのでしょうか?

 

リモートワークの課題 まとめ

 
リモートワークにはたくさんの長所がある反面、弱点もあります。

その弱点に社員自身は気づいていないことが多く「リモートワーク快適です。全然支障ありません」と言います。

しかし、本当に支障は出ていないでしょうか?

これを社長や管理職の人は疑う必要があります。
 

リモートワークで置き去りになる弱点をよくよく認識した上で、自社なりのあるべき形を模索していってください。

さまざまなツールの利用、リモート上で同僚同士が交流する場づくり、お互いの業務の見える化など、リモートワーク前提でできることもたくさんあります。
 

その上で、やはり人と人が顔を合わせることによって創出される価値は何なのか?あなたの会社のビジネスにとって競争力の源泉がどこにあるのか?

ぜひ改めて考えてみていただきたいと思います。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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