部下の退職時の 引き継ぎ はどう進める?トラブルを防ぐ5つのポイントと業務改善につなげる方法

2026.10.16

引き継ぎでトラブルを起こさないために大切なのは、退職する本人任せにせず、会社側が引き継ぎの進め方についてあらかじめ型を決めておくことです。

引き継ぎ書のフォーマットを決める、引き継ぎスケジュールを組む、途中で内容をチェックするなど、会社側が適切に関与することで、退職後の混乱を大きく減らすことができます。
 
 

たかが引き継ぎ、されど引き継ぎ。

転職が珍しくない今、社員の退職に伴う引継ぎはよくある光景ですが、引き継ぎに伴うトラブルも少なくありません。

担当者がろくに引き継ぎをしないまま辞めてしまった

一応引き継ぎは行ったものの、後任に十分に伝わっていない

引き継ぎ書を後で確認したが、見てもよくわからず、大事なことが抜けている
 

このような事態が発生し、本人が退職してしまった後になって上司や同僚が慌てふためく、などということがありませんか?

今回のブログでは、後手にまわらず炎上しない引き継ぎの進め方についてお伝えします。

 

引き継ぎトラブルが生じる理由

退職が決まった社員のうち、引き継ぎを万全に行って去っていく人は、どの位いるでしょうか?

統計は取りようがありませんが、意外と多くはない印象を受けます。

確率的には半分いるかいないかくらいでしょうか?
 

転職する人は、退職が決まった時点で既に気持ちは次の会社に飛んでいるので、引継ぎに身が入りづらいのが実情です。

それが決していいとは言えませんが、心理的には既に「心ここにあらず」状態になっていることを前提に、しっかり引き継ぎしてもらう工夫が要ります。
 

もちろん本人の責任として、万全に引き継いでもらう姿勢は求めるべきですが、引き継ぎをめぐるトラブルの原因は、辞めていく本人だけでなく会社側にも原因がある場合もあります。
 

例えば、

引き継ぐ相手がぎりぎりまで決まらない

上司が「引き継ぎ、しっかり頼むよ」と言うだけで、引き継ぐ内容は本人まかせ

退職日までの引き継ぎスケジュールが決まっておらず、それも本人まかせ

引き継がれる側が、説明を受ける時間をちゃんと確保しない

などがあります。
 

退職までの時間は限られているので、できるだけ効率よく、引き継ぐ側・引き継がれる側の双方に負担が少なく、かつ業務が着実に引き継げる方法をとるのが望ましいです。

 

失敗しない引き継ぎの進め方 5つのポイント

引き継ぎを適切に進めるためのポイントを5つお伝えします。
 

引き継ぎ書は所定のフォーマットで作成する

引き継ぎスケジュールを決める

最終引き継ぎ前に関所をもうける

2人で説明を聞く

上司がチェックする
 

それぞれ説明します。

 

引き継ぎ書は所定のフォーマットで作成する

まず、引き継ぎ書は必ず書いてもらいましょう。
 

引き継ぎ書がメモ書き程度しかなく、あとは口頭で後任が引き継ぎを受けるケースも見たことがありますが、それは避けましょう。

担当者が退職した後でも確認できるよう、必要な情報をしっかり書面に残すことは不可欠です。
 

さらに注意したいのが、引き継ぎ書の内容を本人任せにしないことです。

引き継ぎ書に関して、「わかりやすくまとめておいてね!」とだけ指示する上司がいます。特に何をどのように記載するか指示がなく、完全に本人任せにしてしまうんですよね。

そうすると、大事な情報が漏れていたり、読みづらかったりして、結果的に後任者に大変な苦労を残すことになります。
 

そのため、会社として所定のフォーマットを用意すべきです。
少なくとも以下のような点が記載されたフォーマットを渡し、それに沿って作成するよう明確な指示を出しましょう。
 

業務内容

毎日、週次、次月、毎四半期など、定期的にルーティーンで継続して行っている業務内容、具体的なやり方、参照資料、関わる人

(ルーティーン以外で)現在進行中のプロジェクト、進行中業務の内容。その進め方、参照資料、関わる人

今後進めようとしていたが未着手の業務

その他懸案事項

 

関係先

自分が窓口になっている社外の取引先、仕入先等一覧

一覧表には、先方担当者、連絡先、取引状況、商談中の内容など記載

退職に伴う引き継ぎの状況、引き継ぎ相手との顔合わせの段取り
 

社内関係先一覧

何らかの業務を共に進行している部署の担当者、内容、進行状況など

 

資料

業務上の重要資料一覧(重要な資料の活用目的、内容サマリ、閲覧権限、保管場所など)

その他各種資料の保管場所

 

アカウント

業務上、登録、利用しているサービスのアカウント、パスワード等

 

その他

上記以外の重要引き継ぎ事項

 

引き継ぎスケジュールを決める

最終出社日直前に慌ただしく引き継ぎを行うのはリスクがあります。

遅くとも最終出社日の3~5営業日前には引き継ぎを終え、残りの出社日を追加確認や修正などにあてられるようにしましょう。
 

その日程で確実に進めるために、最終引き継ぎ日に向けて、段階的にいつ何を進めておくかをあらかじめ決めておき、適宜進捗状況を報告してもらってください。

退職直前になって「実はまだこれができていません」と判明する事態を防ぐことができます。

 

最終引き継ぎ前に関所をもうける

引き継ぎ書は途中でチェックする関所が必要です。

最後の1回で全て確認というのは、引き継ぎ書の出来栄えがよくなかった時に、もはや軌道修正の時間がありません。
 

最後に全て目を通すのはボリューム的にも大変です。

そこで、少なくともチェックを3段階くらいに分け、引き継ぎ書の進捗状況や内容を確認しながら、必要な修正も指示した上で、最終提出につなげましょう。

 

2人で説明を聞く

業務を引き継ぐ担当者は1名だとしても、引き継ぎ説明は2人で受けるのが望ましいです。

2人で同時に確認した方が、確認漏れや指摘漏れを減らすことができます。
 

また、「Aさんには分かるけどBさんには分からない資料」のようになるのを避けられ、誰が見てもある程度わかる資料になっているかを確認する機会にもなります。

引き継ぎを受けた後任者が、前任者の仕事を引き受ける負担が大きすぎて辞めてしまう・・・なんてこともあるので、ぜひ引き継ぎの説明は2人で聞いて確認できるようにしておきましょう。

 

上司がチェックする

引き継ぎを退職する担当者と引き継ぎを受ける担当者同士に任せてしまい、上司がほとんど関与しないケースがあります。

「自分がわざわざ入るほどではない」と高を括っていると、後になって「引き継ぎを真面目にやっていない」「引き継がれた内容がいい加減で、後任が困る」などという事態になりかねません。
 

特に先輩社員から後輩社員に引き継ぐ場合などは、受ける後輩側が「ここがわかりません」「もっと詳しく記載してください」と遠慮なく要望を言えなかったりするので、特に上司が目を光らせておく必要があります。

 

引き継ぎは以上5つのポイントを実行することで、トラブルや混乱がかなりの程度、解消されるでしょう。

 

引き継ぎを業務改善のチャンスに変える

そうは言っても引き継ぎ業務は手間のかかる仕事です。

上司にとっても、引き継ぎを受ける後任にとっても、通常業務に加えて一時的に負荷のかかる仕事がアドオンされるので、ついつい手をかけずに済まそうとなります。
 

しかし、「楽は苦の種、苦は楽の種」という諺があるように、ここで手を抜くと後で痛い目に合います。

せっかく時間を使うのであれば、引き継ぎを単なる「退職対応」で終わらせず、一石二鳥に変えませんか?

 

実は、「引き継ぎ」には大きなメリットがあります。

それは、これまで担当者任せで中身が見えていなかった仕事が、具体的に見えるようになることです。

業務の棚卸し、業務を再点検する非常に良い機会となります。
 

業務を一通り並べて棚卸しをしてみると、色んなムリ・ムダ・ムラが見えてきます。たくさんの発見があるはずです。
 

ほとんど誰も見ていない週次レポートを毎週作成しているなら、見直すよい機会です。

引き継ぎをきっかけに「そもそもこのレポートは必要なのか」と確認し、必要性が低ければ思い切って廃止するのも一つの方法です。
 

必要以上に手間をかけている業務が見つかることもあります。

例えば、本来は各自で対応すればよい仕事まで担当者が引き受けていたり、8割の情報があれば十分判断できるにもかかわらず、毎回10割のデータを集めていたりするケースです。

こうした業務は、引き継ぎを機に簡素化できます。
 

本来は別の部署で担うべき業務を過去からの慣習で今だに引き受けているならば、移管の議論をしましょう。

人の手でやる必要のない仕事ならば自動化対応に変えましょう。
 

このように、引き継ぎのタイミングは業務改善を一気に進めるチャンス到来でもあります。

まずは現状の仕事のやり方を引き継ぎ書としてまとめてもらうのが第一歩ですが、
その先では引き継ぎ業務の妥当性を精査し、可能な効率化を進めていきましょう。

1人でやっていた仕事が0.5人でできる!なんて結末になるかもしれません。 

 

引き継ぎに関するよくある質問

Q. 引き継ぎ書は紙とデータのどちらで残すのがよいですか

基本的には、検索や更新がしやすいデータで残しておく方が便利です。

ただし、形式以上に重要なのは、保存場所やファイル名のルールを整理し、後から必要な情報を探しやすい状態にしておくことです。

 

Q. 引き継ぎ書の内容が、既存の業務マニュアルと違っていた場合はどうすればよいですか?

まず、どちらが現在の実務に合っているのかを確認する必要があります。

マニュアルが更新されておらず、実際の運用だけが変わっているケースもあれば、担当者が自己流で進めていたケースもあります。

引き継ぎをきっかけに両者の違いを確認し、必要に応じて業務の進め方を整理したうえで、マニュアルも更新しておくとよいでしょう。

 

Q. 引き継ぎ書は誰が管理するのがよいですか?

退職者や後任者個人のフォルダだけに置くのではなく、部署や会社として管理できる場所に保管するのが望ましいです。

必要なときに関係者がすぐ確認できる状態にしておくことが大切です。

 

まとめ

引き継ぎは、退職する本人に「しっかり頼むよ」と任せるだけでは、抜け漏れや認識のズレが起こりやすくなります。

引き継ぎ書のフォーマットを決める、スケジュールを組む、途中でチェックする、複数人で確認する、上司も関与する。

こうした「型」を会社側で整えておくことで、退職後のトラブルを大きく減らすことができます。

そして、引き継ぎは単に「前任者の仕事をそっくりそのまま後任者へ渡す作業」ではありません。

これまで担当者しか分からなかった仕事を可視化し、「この仕事は本当に必要か」「もっと効率化できないか」と見直す絶好の機会でもあります。
 

退職者が出たときは、業務を確実に引き継ぐことに加えて、仕事のやり方そのものを見直してみてはいかがでしょうか。

引き継ぎを「仕事をより良くするための機会」と捉えることで、業務改善のチャンスに変えることができるでしょう。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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