伸び悩んでいる社員を、ビジネススキルの向上で突破させよう

2018.11.02

あなたの会社でこんな社員はいませんか?

  • 経営幹部に引き上げたものの力を発揮できず悩んでいる
  • 異動した部署で従来と違う成果を求められ伸び悩んでいる
  • 会社の営業方針が変わったが、新しいやり方についていけてない

そういう時は、当該社員のビジネススキルを見つめ直し、具体的なスキルを向上させていくことで壁を乗り越えられる場合が多いです。

「まだ経営幹部としての覚悟が足りないからだ!」と精神論を説いてもなかなか改善しません。
「適性がない」と早々諦めてしまうのも勿体ないです。

ビジネススキル上の弱点がどこにあるかお互いに話し合い、何が課題か納得の上で改善していくステップについてお伝えします。

 

ビジネススキルの向上を軽視しない

次の2つの関係性を、あなたはどう感じますか?

①「仕事への意欲、やる気が足りない  スキルが上がらずできない」
②「ビジネススキルが低い  できない  仕事への意欲、やる気が上がらない」

①のように気持ちが根本的な原因となっている場合もあります。
一方で②が原因でつまずく人を沢山みてきました。

やる気はあるんだけど、ビジネススキル不足で仕事を上手く回せない。
結果として意欲が下がってしまうというケースです。

逆に言えば、仕事に必要なビジネススキルを向上させれば結果につながり、やる気も上がっていくという人です。

 

役職者も同様です。

一定の役職になると、仕事において覚悟や責任感を問われる場面が多くなり、ビジネススキルより人間性や経験値で仕事を進めがちです。

それは半分しょうがないことではありますが、仕事は人間性、意欲、経験値、スキルなどの掛け算です。
どんなに出世した人でもビジネススキルを継続的に向上していくことは欠かせません。

 

ビジネススキル向上の処方箋

あなたの部下が伸び悩んでいたら、以下のビジネススキル分解図の観点でどこが足りないか、どこを改善したらもっと仕事が上手く進むか考えてみましょう。

 

 

それぞれを簡単にご説明します。

 

ビジネスの読み書き算盤

新入社員から3年目くらいまでのしっかり習得すべき全般的なスキルを言います。

「聞く、伝える、書く、メールマナー、ビジネスマナー、時間管理、タスク管理、報連相、IT活用・・」などの基本スキルです。

簡単に見えて、企業のそれなりの役職の方でもここができていないが故に信頼を失ってしまうことがあります。

ヒューマンスキル

様々な人間関係をコントロールしながら周囲と円滑に仕事を進める力。交渉力やプレゼン力、調整力など含む

コンセプチュアルスキル

物事を俯瞰的にとらえ、問題の対策や新たな企画、概念などを考え出し、論理的に表現・伝達する力。思考力、分析力、問題発見力、構想力など

テクニカルスキル

開発・生産・物流・営業・人事・法務などなど、専門領域における知識、経験、ノウハウ、技術

 

組織を率いる立場になると、以下2つのスキルも求められます。

 

マネジメントスキル

目的に向けて適切に仕事と人を配分し、進捗を管理し、人を育て、生じる問題を解決しながら、ゴールに導いていく力。“物事を正しく行う”

リーダーシップ

ビジョンを示し、伝え、動機づけ、決断し、やり抜いて実現する力。“正しいことを行う”

 

あなたの部下はこれらビジネススキルのうち、どこでつまずいていますか?

 

 

ビジネススキル向上で乗り越えた人の事例

エンジニア部隊を率いることになった元営業管理職Aさん

ずっと営業の管理職をやった後、急遽社内IT部門の部長になった男性。

彼の悩みは、「自分にエンジニアスキルがないので技術的な指導ができない、仕事の大変さや進め方が適切か否かがよくわからない」というものでした。

悩みながらも彼は上司に相談し、自分のスキルを冷静に考えたところ、気づいたことがありました。

  • 「テクニカルスキル」:部下のエンジニアレベルには到底追いつかない。少しずつ理解度を高める必要はあるが、焦ってもしょうがない。難しいことを分かりやすく伝えてくれるブレインを社内外に持とうと判断
  • 「ビジネスの読み書き算盤」、「ヒューマンスキル」:話を聞くスキルと、相手の気持ちに寄り添うスキルが弱い。従前は自分が詳しい営業部隊の管理職だったので、部下から少し話を聞けば大抵のことは想像がついた。 しかしエンジニアの仕事に対しては、もっとじっくり寄り添っていかないと現場の真実が見えてこない。相手の立場に立つ必要がある
  • 「マネジメントスキル」:やり方が我流すぎたので基本から学ぶ必要がある。部署に必要なマネジメント機能のうち、自分がやる事、任せる事を切り分ける。報告の受け方、会議の進め方、部署内情報共有などを見直す

 

IT部門責任者に適応するためには何をすればよいか見えてきたことで、彼は気持ちが楽になりました。

進めるべきことも明確になり、次々と自己改善、組織の改善を進めていきました。

 

経理から経営企画職に転職したBさん

経理実務を7~8年経験した後、経営企画職として転職した男性。

経理で培った数字から会社全体を見る目を生かし、更に経営全般に関わりたいと思っていた。
しかし、いざ転職してみると随分とギャップがあり、適応に苦しんだ。

  • 「コンセプチュアルスキル」:経営企画は役員と打合せする機会が非常に多く、限られた時間で要点をわかりやすく明解に伝える力が求められた
  • 「ビジネスの読み書き算盤」:経営計画作成、業務提携、人事制度、営業管理など複数のテーマが同時進行し、関わるメンバーもそれぞれ違う。タスク管理、スケジュール管理のレベルを更に一段高める必要
  • 「テクニカルスキル」:各テーマに即した知識もどんどんつけなければならない
  • 「ヒューマンスキル」:会社の経営課題を正確に把握するには、現場の真実の声をしっかりひろう必要がある。とはいえ現場の人はなかなか本音を話してくれないので、いかに信頼され、上手に話を聞き出す力が必要

各方面で課題山積でしたが、めげずにコツコツ積み上げていく精神力とビジネススキルの向上が一体となり、経営企画の中核的存在に育ちました。

 

ビジネススキルの観点で社員の仕事を見てみる

「あいつは仕事ができる、できない」と大ざっぱに表現しているものを、もう少しビジネススキルに分解して考えてみましょう。

同じ営業でも、ヒューマンスキルで売る人、テクニカルスキル(商品知識など)で売る人、コンセプチュアルスキル(提案力など)で売る人など様々です。

もしあなたの会社でかつての花形営業が壁にぶつかり長期低迷していたら、その人のビジネススキルと仕事で求められるスキルを明文化して比べてみましょう。

恐らくかつては強みだったスキルが既に通用しなくなり、新たなビジネススキルを習得すべき段階に来ていることがわかります。

 

仕事に意欲や根性は欠かせませんが、それを意欲を長期的に維持するためにはビジネススキルも必要です。

この視点も取り入れると更に人材育成が促進されるはずです。

 

 

筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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