「無形資産」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
ぱっと浮かぶのは、特許や商標などでしょうか。
企業には他にもたくさんの無形資産があります。
- 個々の社員が保有するノウハウや経験
- 製造レシピや生産工程、研究データ、ビジネスプロセス、マニュアルなどのノウハウ
- 取引先、外注先などとの関係
- 社長や社員が保有している人的な「つながり資産」
- etc.
今回、この中で着目していただくのは「つながり資産」です。
目次
「つながり資産」とは?
「つながり資産」とは、普段の仕事における取引先や仕入先ではなく、社員一人一人がもつ緩やかな人とのつながりのことを指します。
例えば、業界つながりの知人、仕事を通じて知り合った友人、前職の同僚、研修や勉強会の仲間、取引先などから紹介された第三者、同窓会の友人といったものがこの中に入ります。
たまに会うくらいの関係だけど、何かの時にふと思い立って相談できるような関係です。
社員の人脈の重要性を理解しよう
この「つながり資産」はなかなか強力な財産です。しかし私がお客様と話をする中でよく感じる問題があります。
それは、中小企業では社員が保有するつながり資産が非常に少ないことです。
「社員の人脈が狭い」とも言い換えられます。
社長は頻繁に外に出る機会があり、人を紹介される機会も多いので、どんどんネットワークが広がります。
一方、社員は社内で日常業務に追われている場合が多く、つながり資産があまり広がっていきません。
役員や幹部社員でさえ、そのような傾向が見られます。
つながり資産が広がれば会社にとっても本人にとっても大きな財産になるので、非常にもったいないことです。
「つながり資産」の価値
「つながり資産」のメリットについてお話しします。
「つながり資産」はどんな時に生きてくるでしょうか?
通常業務の延長線上においては、さほど重要ではないかもしれません。
ところがこれまでの延長線上にないことをやろうと思った瞬間、「つながり資産」が大いに力を発揮します。
例えばこんなときです。
- 新たな業界にサービス展開したいとき
- 初めて海外進出するとき
- 初めて人事制度をつくるとき
- 初めて新卒採用をするとき
- etc.
初めて新卒の学生を採用しようと思い立って、とりあえず人材紹介会社に声をかけたとします。
恐らく、人材紹介会社の営業マンは自分達に仕事がくるような説明しかしてくれません。
中立的な立場でのアドバイスも期待できないでしょう。
ところが、もし「つながり資産」の中に新卒採用経験が豊富で中立的にアドバイスしてくれる知人がいたら、どうでしょうか?
新卒採用市場の動向、あなたの会社の採用力、人材会社の評判、どんな準備が必要か、など様々な課題に対してアドバイスや、決して本やネット上には書かれていない最新のリアルな情報を聞くことができます。
このようなことを考えると、「つながり資産」にはプライスレスな価値があると思いませんか?
「つながり資産」はベンチャービジネスのスピードを支える
ベンチャービジネスの成長過程でも「つながり資産」が大きく貢献しています。
新聞で見聞きするような成長ベンチャーなどを分解していくと、それは関わる人達の人脈の産物と言えます。
あるベンチャー企業がかつて成長過程でこんな課題に直面しました。
- 大手企業にどのように営業をかけて食い込むか
- 専門分野の大学の先生とのコネクションをどう作るか
- どこから資金調達するか
- 販路開拓のパートナーはどこと組むか
1つ1つの課題をどのようにクリアしたかというと、ほとんどが人脈をきっかけとしたものでした。
- 大手企業開拓は顧問の人脈を頼りに進めました。
- 大学の先生とのコネクションはある幹部社員の友人のルートから、その先生を紹介してもらいました。
- 資金調達に詳しい人を紹介してもらい、その人に調達の方法やどこから調達するのがよいか、更にお薦めの投資家紹介までアドバイスしてもらいました。
どこから資金調達するか決めるために、投資家を多数リストアップして、1つ1つ特徴を調べて、どこが自分に合っているか考えてから接触を図る・・・なんていうまどろっこしい作業はしていません。
中小企業が「つながり資産」をもっと増やす方法
「つながり資産」を活用するメリットは、このようにビジネスのスピードと精度をあげられることです。
「つながり資産」が多いほど、多様なジャンルの知見、経験知を得られる可能性が高まります。
しかしながら、多くの中小企業では外部とのネットワークは社長に依存。
外界と閉ざされた社員がたくさんいるようでは成長に限界があります。
では、会社全体の「つながり資産」を増やすにはどうすればいいでしょうか?
社長の腹落ち
まず社長であるあなたがその重要性を腹落ちすることです。
残業が美徳の会社では、「お先に失礼します!」と言って社外セミナーなどに行く人がマイナス評価されたりします。
外に出てネットワークを広げようとしている人をもっと評価し、その知見を生かしましょう。
役員、幹部こそ外に出て人脈を広げる
役員や幹部が日常業務に埋没する状態も直さなければなりません。
役員、幹部がそうである限り、彼らの部下はもっと狭い世界で日常業務に埋もれ、視野が広がっていきません。
役員、幹部がやっている業務のうち付加価値の低い仕事、時間を減らし、クリエイティブに動ける時間を捻出しましょう。
役員、幹部自身へのプレッシャーと期待値を上げ、過去の経験でできる仕事ではなく、経験のない挑戦的なな仕事を増やしましょう。
そうなれば自ずと、「社内にこもってばかりでは局面を打開できない」ということに気づき、行動に変化が出てくるはずです。
中によそ者を取り込む
自ら外に出ていって人脈を築くのは、人によってはハードルが高い場合もあります。
その場合には、自社のカルチャーとは真逆の発想や独自の人脈を持つ人材をカンフル剤として中に取り込むのもいい方法です。
正社員でなく、顧問や業務委託でも構いません。
「何だこの人!?」という人材に接するうちに、社員は自分が井の中の蛙であったことに気づきます。
一部の社員は大いに刺激を受け、自ら社外の人と関わる機会を増やしたり、自分の見聞を広めようとする行動をとるでしょう。
まとめ
社長の人脈だけに依存している会社は限界があります。
さらに人手不足も深刻で良い人材がなかなか手に入らない今は、社員をいかに成長させるかもキーポイントになります。
これからの時代はとくに、社員それぞれが「つながり資産」を広げ、成長に伴う課題を効率良く乗り越えていっていただきたいと思います。
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