【上司必見】部下の 仕事が回らない ときは?上司力を磨く「業務の引き算」

2022.08.12

上司の仕事の中に、「部下の業務量(ボリューム)をコントロールする」というものがあります。「 仕事が回らない 」という状態を防ぐためです。

 
そんなの当たり前だろ、と言われそうですが、あなたの会社の管理職を思い浮かべてみてください。
 

その役割が果たせていない管理者が少なからず存在しませんか?

業務をどんどん上乗せし、部下が対応しきれていないのに、さらに業務を増やしていく上司がいませんか?
 

この状態の行き着く先は、部下がつぶれてしまい、体調を崩したり、休職になってしまう未来です。
 

仕事は足すだけでなく「引き算」が肝要です。「引き算」にこそ上司の手腕が出るとも言えます。

 
今週のブログは、業務を減らす「引き算」のやり方についてお伝えします。

 

仕事は引き算にこそセンスが出る

 
仕事は、真面目にやればやるほどたくさんの課題が出てくるものです。

次々に浮上する課題を全て解決しようとすると、社員の業務量を膨大に増やすか、人員をどんどん増やすかしかありません。

つまり足し算の連続です。
 

会社を成長させていくには足し算は不可欠ですが、終わりなき足し算は崩壊を招きます。
 

よく「戦略とは引き算だ」と言われるように、業務も同様です。

問題が発生する度に、ひたすら仕事を増やすことは実はとても簡単です。誰でもできます。
 

しかし引き算は高難度です。

何をどう引くかで、仕事のセンスが問われるからです。

 

業務の引き算 5つの手法 

 
引き算と一口に言っても、実はいろいろな引き算があります。

引き算=「7個の仕事から1つ減らして6個にする」という印象が強いですが、実は業務の引き算は仕事を減らすだけではありません。
 

部下の業務負担を増やさず、大事な問題をちゃんと解決し、組織を円滑に運営するための引き算5つの手法を紹介します。
 

①在庫処分(業務削減)

 
引き算の典型的な方法は在庫処分、つまり業務削減です。
 

前々からたまっているのに全然進んでいない仕事はありませんか?

全然進んでいないのに誰も困っていないということは、実はやらなくても大勢に影響ない業務だったりします。
 

改めて点検し、必要のないタスクは取りやめましょう。
 

また「過去からずっと継続作成しているが、実は誰も見ていない資料」などもありがちです。

盲目的に作成してきただけで会社の何の役にも立っていない資料があるならば、即刻中止した方がよいでしょう。

 
会社は常に変化していくので、必要な仕事も必要な資料も当然変化していきます。

定期的に業務の在庫を点検し、不要なものは処分して仕事を減らしましょう。

 

②在庫並べ替え(優先順位づけ)

 
業務在庫がたくさん並んでいると、「忙しい感じ」ばかりが強くなります。

例えば営業担当者の重要業務リストが以下のようになっていたら、「やることだらけで大変!」という気持ちになるでしょう。
  

■ 新製品Aの重点拡販

■ 既存製品Bの値上げ交渉

■ 既存製品Cの解約防止徹底

■ 新規顧客比率●%以上に向けた営業展開

■ 既存顧客と月に1回必ずコンタクトをとる行動重視

■ 顧客の課題をしっかり聞くソリューション営業強化

■ 商談進捗管理の入力徹底と上司による指導

■ 他

 

課題が出る度に重点業務を足してきたため、このようになってしまったのです。

これだけ重要業務が並ぶと、担当者はどのような気持ちになるでしょうか?

どこから手をつけてよいか分からなくなり、担当者の行動に一貫性がなくなり、会社としてもちぐはぐになります。

結果、現場の繁忙感と焦りがつのるばかりで、望む成果も出ません。
 

そこで、優先順位を明確に示してあげましょう。
 

例えば部下のAさんに対しては、
 

■ 既存製品Bの利用料値上げ交渉

■ 既存製品Cの解約防止徹底

■ 商談進捗管理の入力徹底と上司による指導 

 

以上3つを「優先度:高」の業務として指定し、それ以外は「3つの優先タスクを徹底的にやった後の余力でやってください」というようにします。
 

部下Bさんには
 

■ 新商品Aの重点拡販

■ 既存製品Cの解約防止徹底

■ 顧客の課題をしっかり聞くソリューション営業強化

 

これらを徹底してもらうこととし、部下それぞれの役割や能力に応じた優先順位を考え、具体的に指示を出します。

 

優先度が低い仕事はどうなる?

 
優先順位を明確にすると優先度が下位にくる仕事が進まない不安はありますが、全て追求して共倒れするより、大切な業務に絞り込んで成果を出す方がベターです。

絞り込むことで部下の頭の中が整理され、仕事量も適切に調整されます。

その結果、部下の行動に無駄や迷走がなくなり、成果にもつながっていくという、会社と社員のWin-Win状態になります。

 

③効率化で生産性を上げる

 

自動化する

 
業務の中には「人がやらなくてもできる仕事」が実はたくさんあります。

例えば営業データ取りまとめなどの仕事では、既にあるデータを一生懸命加工して切り貼りして資料作成など行っていたりすることがあります。

エクセルのvlookupをさんざん駆使して作っているような資料のイメージです。

この作業はほとんど付加価値を発揮しない単純作業の繰り返しなので、自動化することで仕事自体がなくなります。

 

時間の使い方を見直す

 
営業外出先からわざわざ会社に戻って報告書作成しているとしたら、直帰しながら電車でスマホから報告書作成ができる仕組みにしましょう。

また、営業と技術の2名で商談する場合、その商談の9割程度は実は営業のみで対応できる内容だったりします。

そのためにわざわざ技術担当者が1時間の会議に出るのは非常にもったいないので、営業が単独で会議参加し、必要な時だけ電話で技術担当者をつなぎましょう。

 

このように従来の仕事のやり方を変えたり、IT化などにより作業の効率化を高めれば、同じ社員が同じ時間内で従来以上の業務をこなすことが可能となります。

 

④アウトソースする

 
やるべき事がどんどん増えてきた時、全て自社の社員で対応しようとしていませんか?

業務の中には社員がやるよりアウトソーシングした方がいい場合も多々あります。
 

アウトソーシングの強みは

「一時的に発生する業務の吸収弁」

「社員にない強みの発揮」

「契約にもとづいた納期での納品」

 

社員であれば、「他の業務が忙しくてできませんでした」という事態が起こりえますが、アウトソーシングの場合はそういった甘えは基本的にありません。

 
費用は発生しますが、大事な仕事に誰も手をつけないままズルズルいくよりは、お金をかけてでもすぐに実行できるのがアウトソーシング活用のメリットです。

もし「わざわざお金をかけてまでしなくても・・・」と感じるような業務だとしたら、それは恐らく重要度や優先度の高くない業務なので、②で上位3つに入らない業務かもしれません。

 

⑤社員間業務調整

仕事が回らない

 
部署全体の業務量はさほど多くないのに、特定個人だけ大渋滞していることがあります。
 

特に優秀な社員にばかり業務が集中し、そうでない社員は暇そうにしているなんてこともあります。

このような不健全な状態は長続きせず、いずれその優秀な社員が音を上げて離職や休職につながりかねません。

できるだけ早く、集中している業務の一部を別の社員に移行する業務調整が必要です。
 

仕事が集中している優秀な社員の場合、上司も任せっきりになり、仕事の中身がブラックボックス化しがちです。
 

一度上記の①~④の観点で検証してみてください。
 

具体的なやり方としては、1週間の仕事を時間単位で記録させ、その内容を説明してもらえれば実際の状況が見えてきます。

優秀な人でも実は不要な仕事をしていたり、当人以外の人ができる仕事も抱え込んでいるものです。

一極集中していた業務を周りの社員に分配し、社員同士の業務量をある程度平準化させられれば、特定社員集中のリスクが緩和され、組織が安定化します。

 

部下の業務量管理に欠かせないこと

 
部下の業務量調整を適切に行うためには、部下の仕事の状態を正しく理解しておかなければなりません。

仕事の指示をしたら「後はおまかせ」では、上司の役目を果たしていません。

定期的に進捗確認を行い、順調に進んでいるか否か、どこで滞っているか、残業が多くなり過ぎていないか、仕事量が適切か、などを把握します。
 

普段からしっかり対話する時間をとり、部下の悩み、困りごと、仕事の進捗などについて理解しておきましょう。
 

毎朝本人の顔色や表情の確認も欠かせません。

遅刻や欠勤など勤怠の乱れ、服装や髪の乱れなども何かの兆候だったりします。
 

日常的に部下に関心を持ち、五感を使ってコミュニケーションすることで、部下一人一人の適正業務量をコントロールできるようになります。

 

まとめ

 
仕事に終わりはなく、次から次へとさまざまな課題が降りかかってきます。

そんな時こそ(やるべき仕事が多いときこそ)大事なのは仕事の引き算です。
 

部下の業務を増やすばかりではなく、増やしたら何かを減らし、トータル業務量を適切にコントロールする必要があります。
 

引き算の方法として

①不要な仕事を削減する

②優先順位を決めて優先度の低いものは後回しとする

③業務効率化を進め、仕事の時間効率を高める

④必要に応じてアウトソーシングする

⑤組織内メンバー間の仕事の分担(割り振り)を調整する
 

以上5つの方法を組み合わせながら、引き算のセンスを磨き、部下がイキイキ存分に力を発揮できる職場を作っていきましょう。 

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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