「 2・6・2の法則 」に応じた人材育成方法|上位・真ん中・下位それぞれに効果的な指導法とは?

2023.04.20

 
組織における「 2・6・2の法則 」とは、組織の構成員のうち、優秀な人材が2割、普通の働きをする人材が6割、貢献度の低い人材が2割という理論です。

 

2・6・2の法則

 

アリの集団における、よく働くアリが2割、普通に働くアリが6割、怠けものが2割という「働きアリの法則」と同様の考え方です。

 

社内で「2・6・2の法則」が出現するのは自然な現象と言えますが、それぞれに対してどのようにアプローチするかは組織マネジメントの重要ファクターです。

仮に下の2割を辞めさせたところで、また新たな2・6・2ができあがるので、下位を切れば解決するという単純な問題ではありません。
 

今週のブログでは、「2・6・2の法則」があるという前提のもと、組織全体を底上げするためにどのようなアプローチで育成を行うべきかについてお伝えします。

 

「 2・6・2の法則 」それぞれの人材の育て方

 

今あなたの営業部署に4人の部下がいるとします。
 

  • 社内でも優秀と評判のA君
     
  • 普通にコツコツ働いているが、特筆すべきものはないB君とCさん
     
  • 仕事の理解力が足りずミスも多く皆の足を引っ張りがちなD君
     

新年度を迎えて昨年よりも部署として売上3割増の計画を目指すこととなりました。

達成のためには4人全員が成長し、それぞれ昨年の業績を超えてもらわなければなりません。
 

さて、あなたはそれぞれにどのようなスタンス・方法で指導を行いますか?

 

優秀人材(2割)への指導法

 
優秀人材A君は以下のような特徴があります。
 

  • 言われなくても自ら課題を見つけ改善していくことができる
     
  • 物事の理解が早く、何でもすぐに習得する
     
  • メンタルが安定し、常に強い気持ちで仕事に取り組んでいる
     
  • 上司や同僚とも適切にコミュニケーションをとっている
     

優秀タイプ(上位2割)への指導のキーワードは「加速」です。

 

自分で学び自分で修正していける人材なので、あまり干渉したり細かく管理する必要はありません。

既に順調に回転している車輪を、邪魔することなくさらに加速させてあげるのが指導者の役割と言えます。

よって、優秀人材には次のような観点からの指導を意識しましょう。

 

よりチャレンジングな機会をどんどん提供する

  • ex.今までの顧客よりも企業規模が大きく要望度も高い顧客を担当させる

 

揺らぎ、変化、修羅場を与える

  • ex.これまで扱ってこなかった新しい製品の提案営業も行ってもらう。リーダーに位置づけ、他のメンバーの指導をやってもらう

 

視座を上げる

  • ex.お客様の要望に応える提案ではなく、お客様の期待を超える提案を考えさせる。今期の達成だけでなく、数年先を見据えてどのような仕掛けを行なっていくべきかを考えさせる
     
  • ex.A君にとって勉強になる社内外の人材に会わせる。良い本を薦める

 

弱点を補う

  • ex.仮に得意の顧客と苦手な顧客がはっきりしているとしたら、苦手顧客となってしまう自身の原因を突き止め、その原因を改善する
     
  • ex.強みを伸ばすためにも明らかな弱点は改善しておく

 

普通人材(6割)への指導法

 
普通人材のB君Cさんは以下のような特徴があります。
 

  • 言われたことはきちんとやるが、自分から能動的に動くことが少ない
     
  • こなし作業が多く、向上心はあまり強くない。必要以上に仕事にエネルギーをかけない
     
  • あまり深く考えずに仕事をする
     
  • 上司や同僚とは普通にコミュニケーションをとるが、報告漏れや共有漏れもときどき発生する

 

普通タイプ(真ん中6割)への指導のキーワードは「丁寧な指導と将来の見える化」です。

 
先が読みづらい仕事や曖昧な仕事を自ら切り開いていくのはハードルが高いです。
ゴールに向けて明確な道筋を示してあげ、その道を着実に進んで行けるよう導いたり、後方支援したりする必要があります。

具体的には次のような観点からの指導を意識しましょう。

 

仕事のPDCAをしっかり回す

  • ex.目標とそれに向けて行うべきアクション定め、行動計画におとしてもらう
     
  • ex.計画に対して定期的に進捗を確認し、都度対策を考えるサイクルを回す

 

フィードバックをしっかり与える

  • ex.本人のよくできている点、足りない点などを丁寧にフィードバックし、どのように改善していくかを自分なりに考える機会を持たせる(自ら考えて仕事する習慣が重要)

 

足りない実務能力を高める

  • ex.商談でクロージングが苦手であれば、クロージングのロープレを行う。見本を見せる

 

スキル向上ステップを示す

  • ex.まずaをできるようなったら、次にbを習得し、さらにcができるようになろう!そうすればX地点まで到達できます!といったスキル向上ステップを、本人に分かりやすい形で見える化してあげる

 

仕事のやりがいを感じてもらう

  • ex.お客様からの感謝の声をしっかり伝えたり、上達した事をしっかり褒めながら、仕事の醍醐味を感じてもらう

 

先輩や同僚からの刺激を与える

  • ex.先輩や同僚のやり方を学んだり、自分の工夫点を同僚に教える機会を持つ。相互に学び合い、お互いを高め合う

 

貢献度の低い人材(2割)への指導法

 
能力が足りず貢献度の低い人材D君は以下のような特徴があります。
 

  • お客様から言われたことができなかったり、伝えられた内容と違うアウトプットを出してしまう
     
  • 仕事の優先順位を適切につけられない
     
  • ミスが多い
     
  • 意欲が足りず、自信がない
     
  • 報連相が不十分

 
貢献度の低いタイプ(下位2割)への指導のキーワードは「超基本の徹底」です。

 

仕事の基本を習得する機会がないまま年次を重ねてしまった人は、今さら基本に立ち返ることもできず、要求されるレベルに能力が全く追いつかない状態になってしまいます。

新入社員研修で実施するような内容ができていないからこそ苦しんでいるので、改めてそこから徹底する必要があります。
 

貢献度の低いタイプの中には能力が明らかに不足している人もいますが、基本を徹底することで立ち直る人もいます。
 

具体的には次のような観点からの指導を意識しましょう。

 

モチベーションや姿勢を直そうとせず、業務のやり方を変えてもらう

  • 意欲のなさを無理に改善させようとしても簡単には変わりません。
     
  • ミスを叱責してもまた同じことが起きます。この人なりの仕事ができるよう、仕事の進め方の基本を見直すところから始めるのがおすすめです。

 

メモの取り方を見直す

  • 上司やお客様から言われたことをメモしていなかったり、メモのとり方に型がないので、後から読み返しても本人が訳わからなくなっています。
     
    メモの取り方、記録の残し方、メモをとった後の事後対応について徹底させましょう。

 

仕事リストを整理する

  • 通常、自分がやるべき仕事をタスク一覧でまとめておくものですが、それができていない人が多いです。
     
    タスク一覧の作成方法、優先度に応じた順位付けなどを日々考えさせる必要があります。

 

毎日の決めたタスクを確実にこなす

  • 毎朝その日にやるべき仕事を報告させ、必ずそれを終えてから帰る習慣にしてもらいます。
    帰り際に実際の進捗状況を報告してから帰社してもらいましょう。
    毎日日報を書いてもらうのも1つの方法です。

 

強みに集中させる

  • このレベルの人は苦手な事を直すのが簡単ではありません。苦手を直すよりも、”強いところ”を活かす仕事に特化させた方が会社にとっても本人にとっても意味があります。
     
  • 例えばソリューション型の営業は苦手だけど「質より量」のアタック営業には躊躇しないのであれば、数を当たることが重要な小口企業の担当に専念させるのもありです。
     
  • 自分で考えるのは苦手だけどルール通り作業するのが得意ならば、処理ルールを明確に定めた仕事に専念してもらってもいいでしょう。
     
  • 営業に向かないのであれば、長期的には別部署に異動させるのもありです。

 

「 2・6・2の法則 」それぞれの育成への時間配分

 
指導する上司の時間は有限なので、上記のような指導をいかに効率よく進めるかも考えねばなりません。

ありがちなのは、下位2割に指導時間をとられる割に、効果が見られないというものです。

これは絶対に避けねばなりません。
 

下位2割に対しては、最初は少し時間は要しますが、仕事の仕方のルールを決め、それ通りにとにかく日々やってもらうことで上司の費やす時間はほどほどにしてください。

上位2割にもあまり時間をかける必要はなく、限られた時間で良い気づきやきっかけを与えることで、さらに自ら成長していくことができます。

 

最も時間を割くべきは「真ん中の6割」

 
最もボリュームを割くべきは真ん中の6割です。

人数が多いというのもありますし、適切な指導を受けることで最も成長の変化率が高い人たちだからです。

このゾーンの人材をいかに成長させられるか、上司の指導力が問われるところです。
 

この層の人材のポテンシャルを引き出すことができれば、組織全体の生産性を飛躍的に高められるでしょう。

 

まとめ

 
組織における「2・6・2の法則」において、上司は上位2割、真ん中6割、下位2割にどのような指導を行っていけばいいかをお伝えしました。 

それぞれの指導におけるキーワードは、「加速」・「丁寧な指導と将来の見える化」・「超基本の徹底」です。
 

上位2割は自ら学び成長していく力があるので、それを加速させてあげるような指導が有効です。

真ん中の6割は放っておくと主体性に欠けますが、ゴールを示し着実なPDCAを回す中で成長していく人材なので、地道で丁寧な指導によって変化します。

下位2割は高い要望をしてもついてこれません。
そもそも仕事の基本ができていないのが根本要因なので、やるべき事をルール化して、日々着実に遂行してもらうことが有効です。
 

組織全体の成長に貢献するためにも、部下一人ひとりに向き合い、最適な指導方法を模索していきましょう。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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