社内で「○○さんは 仕事ができない 」とレッテルを貼られてしまう人がいます。
レッテルを貼られてしまった以上、本人に何かしらの問題があるのは当然ですが、○○さんは本当に「仕事ができない」のでしょうか?
「人が人に対して行う評価」はとても曖昧で移ろいやすいものです。
株価のように人の評価が上下動することもありますが、本来は人の能力は日常的に上下するものではありません。
一方で「仕事ができない」とされた人が、部署異動や職種転換などで大いに力を発揮する場合もあります。
そこに人事の醍醐味があるのではないでしょうか
今週のブログでは、「仕事ができない」と言われる人の評価を鵜呑みにせず、適材適所によって再生する方法についてお伝えします。
目次
人材は大きく分けて3種類
人材には大きく分けて3つのタイプがあります。
① 何をやらせてもできる人
② 担当業務や置かれた環境によって大いに力を発揮する人
③ 何をやらせてもできない人
①は言うまでもなく誰もが認める優秀な人材です。③は改善するのが簡単ではありません。
しかし、ほとんどの人材は②に分類される人たちです。
②の人材は適材適所によって大いに力を発揮することもあれば、力を発揮できず自信をなくして負のサイクルに入ってしまうこともあります。
よって会社としては②の人材をいかに活かせるか、1人1人の力を最大限発揮させられるかが問われています。
「あいつは 仕事ができない !」は本当か?
社内で「あいつは仕事ができない!」というレッテルを貼られ、何となく周囲からもそう思われてしまう人がいます。
特に幹部社員など偉い人が「あいつはできない!」と言うと、周りの人はそのまま信じ込んでしまいます。
人は期待されてこそ前向きに頑張る生き物なので、皆からそう思われたら、ますます元気がなくなり、力を出せなくなってしまいます。
能力値が5の人は、周りが期待をかけることで6にも7にもなります。
しかし「あいつは仕事ができない」と言われ続けていたら、本来の5の力すら出せず、4,3とパフォーマンスは下がってしまいます。
このように、レッテルを貼ってしまうのは会社としても非常に勿体ないことです。
さらに「そのレッテルは本当に正しいか?」という問題があります。
ある一面から見ると評価が低いかもしれませんが、別の人から見たら高く評価される・・・なんてことは、会社においては日常茶飯事です。
以下、具体的な事例をご覧ください。
営業で成績の上がらなかったAさんの変貌
雑誌の広告営業を行っているAさんは、別業界から中途採用で入社しました。
最初の上司は放任タイプながら、結果だけは強く要求する人でした。
Aさんは吞み込みが早い方ではなかったので、期待される営業成績になかなか届かず、上司から「あいつは仕事ができない!」という評価に至りました。
一方でAさんは、成績が上がらなくても腐ることなくコツコツ努力し、もっと力をつけたいという意欲も十分に高いものがありました。
社長はAさんの良いところを評価していたので、別の上司のチームに異動させました。
すると、1年が経った頃には社内でも上位3割に入る位の実績を出すようになったのです。
新しい上司がAさんにしたこと
■ Aさんの強みと弱みを分かりやすく伝え、本人が自己改善しやすくする
■ 広告営業で成果を出すために必要なスキル、顧客との向き合い方などを丁寧に伝える
■ 定期的に振り返りミーティングを持ち、Aさん自身に課題とその対策を考えさせる習慣をもたせる
■ よくできたことは褒め、認める。できないことはしっかり指摘する
ここから言えることは、「人材の能力が開花するかしないか」は上司の指導力によって大きく変わるということです。
指導力のない上司の下で結果が出ないからといって、それが「あいつは仕事ができない!」にはつながらない、という典型的なケースです。
逆にダメ上司の下で飛躍したB君
不動産営業のB君のケースはなかなかユニークです。
最初の上司は社内でも認める優秀な人。論理派で緻密な思考の持ち主でした。
仕事の指示は細やかで、進捗のチェックも厳密な数字に基づく論理的なやり方。人柄は穏やかで部下思いでもありましたが、要望は厳しい人です。
B君はどちらかというと感性の人で、ロジックより行動が先に立つタイプだったので、この上司のやり方に萎縮してしまい、なかなかなじめず成績も上がりませんでした。
その後、この上司が異動になり新しい上司が来ました。
新しい上司はとにかく明るくて仕事中のお喋りも多いタイプ。
社内ではあまり評価されていないどちらかと言うとダメ上司ですが、皆に好かれるタイプでした。飲ミュニケーションも大好き。
この上司がB君には見事にはまりました。
仕事のやり方など細かいことはあまり言われません。進捗管理も厳しくないですし、特段良いアドバイスもくれません。
ただ、B君の成果が出るよう一生懸命応援してくれるのは伝わってきました。
結果としてB君はどうやったら受注できるか自分で必死に考え、自分のやり方で試行錯誤を重ね、成績がグングン上昇しました。
自ら創意工夫して仕事をする方が、B君にはたまらなく楽しかったようです。
ここから言えることは、上司との相性が部下の「できるできない」を大きく左右するということです。
最初の上司は優秀で指導力もある人でしたが、B君には合いませんでした。
創意工夫できるB君には、指導力の劣る後任の上司の方がぴったりマッチしたのです。
会社のステージが変わることで能力が活かされたCさん
以前は150人ほどの中小企業で人事マネジャーをやっていたCさんは、転職して3,000人規模の会社の人事マネジャーを担うこととなりました。
ところが転職した会社では思うように力を発揮できません。
なぜなら、新しい会社ではそれぞれの業務に高い専門性を要求されるようになったからです。
採用であれば採用における深い知見と経験、労務であれば労務の深い専門知識、社員教育であれば全社規模で教育体系を考える知見などが求められます。
しかし小規模の会社で人事全般を広く手掛けてきたCさんには、そこまで個々の専門性がありません。
結果、どの仕事も中途半端になってしまい、上司から「あいつは仕事ができない!」と言われてしまいました。
Cさんは自分の力を発揮できないことに悩み転職も考えていましたが、たまたま子会社の人事マネジャーのポストが空き、そこに異動することになりました。
子会社は前職と規模の近い会社だったので、人事の仕事は採用、労務、教育などを多能工的に対応することが中心で、専門性よりも全体を広く理解していることを求められる仕事でした。
結果としてCさんは水を得た魚のように力を発揮するようになりました。
ここから言えることは、人の能力や経験が十分に活きるのは、一定の条件を満たす環境下だということです。
どんな環境にも万能に対応できる人は滅多にいません。
Cさんの本来の強みは専門性ではなく、幅広い守備範囲に長けた能力です。
よって、人事担当者の人数が少なく、採用、労務、育成など何でも担当する企業規模がぴったりでした。
以上、安易に「あいつは仕事ができない!」のレッテルを貼るべきではない3つの事例をご紹介しました。
あなたの回りにも、「あいつはできない!」と言われていた人が再生したケースがあったのではないでしょうか。
「 仕事ができない 」と言われた人を再生させる方法
「あいつは仕事ができない!」というレッテルを鵜呑みにしてはいけません。
まずは冷静に、本当にそうだろうか?どのような仕事をさせたらもっと活躍してくれるだろうか?
ということに真剣に向き合いましょう。
その時に考慮すべき視点を記しておきますので参考にしてください。
わかりやすいようにあえて両極端のケースで記載します。
業務適性
コツコツこなす仕事に向いているか / 創造力を求められる仕事に向いているか
アバウトな指示でも自分で考えて動けるか / 細かい指示やマニュアルがあった方がいいか
深い専門性を求められるか / 広く(その分浅くてもいい)裁ける能力が求められるか
スピード重視(拙速OK)か / クオリティ重視か
他部署との調整など調整業務の多い仕事か / 自分だけの仕事に集中できる仕事か
メインはチームプレーか / 個人プレーか
ノルマや高い目標を励みにできるか / プレッシャーに感じ押しつぶされてしまうか
決断を求められる仕事か / あまり決断のいらない仕事か
組織適性・環境適性
社員同士の密なコミュニケーションを求めるか / ほどよい距離感を求めるか
時間やルールに厳しい職場がよいか / 自由で多少ルーズな職場がよいか
同質的な振る舞いを求める組織か / 多様性を尊重する組織か
同僚との競争を苦にしないか / 競争に疲れてしまうか
人間関係に繊細な人か / あまり気にしない人か
同性の多い職場の方がやりやすいか / その逆か
上司との相性
緻密で指示の細かい上司が合うか / どちらかというと放任で任せる上司が合うか
細かい報連相を求める上司が苦にならないか / 求められると苦になるか
率直に厳しく指摘する上司がよいか / 褒めて乗せる上司がよいか
「あいつは仕事ができない!」と言われた人がいたら、上記のような観点から「本人が力を発揮しやすい環境にいたか」「得意な仕事を担当していたか」を検証してみてください。
ポテンシャルがあるにもかかわらず力を発揮できていなかったならば、再生プランを考えてみてください。
まとめ
社内で「●●さんは仕事ができない」とレッテルを貼られてしまう人がいますが、その人が本当に「仕事ができない」とは限りません。
人は往々にして、ある環境に身を置けば大いに力を発揮するけれど、別の環境では全然力を発揮できないことがあります。
こういう時こそ人事の出番です。
本人の特性を見極め、最大限力を発揮できる状態に導くことができれば皆がハッピーですよね。
部署異動させたり、別の上司の下で働かせたり、今の上司に改善をお願いしたり、ミッションを変更したり、対応方法は色々あります。
「仕事ができない」と言われる人材の再生ができれば、あなたの会社の人材力は大いにアップしていくことでしょう。
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