「自社の コアコンピタンス 」は何ですか?強みを見極め守り抜く経営

2021.11.04

先月、日本製鉄が中国の宝山鋼鉄ならびにトヨタ自動車を提訴するニュースがありました。

「製造メーカーが大口顧客であるトヨタを訴える」という前代未聞のニュースは産業界でも話題になりました。
 

私が新卒で入社したのは日本製鉄の前身の会社なので親近感もあるかもしれませんが、日本製鉄は今回あるべき経営判断をしたと思います。

争点となっている「電磁鋼板」は日本製鉄の競争力の源泉とも言える虎の子の技術( コアコンピタンス )であり、この技術の侵害に対しては大口顧客ですら許容しない、という強いスタンスが見てとれました。
 

企業が存続・発展していく上で何より守るべきはコアコンピタンスです。

今週のブログは、コアコンピタンスの死守についてお話しします。

日本製鉄がトヨタ自動車を提訴

日本製鉄がトヨタ自動車を提訴

 
日本製鉄が長年心血を注ぎこんだ「電磁鋼板」は、エネルギー効率が非常に高く、今後拡大する電気自動車において大いに需要が見込める製品です。

その技術が特許侵害されるというのは日本製鉄の生命線を脅かす話なので、今回提訴に踏み切りました。
 

恐らく日本製鉄社内では相当な議論があったはずです。

大切なお客様であるトヨタ自動車を訴えていいのか?と。
 

しかし、「会社のコアコンピタンスである技術の特許侵害は決して放っておけない」という経営陣の強い意志があったと思われます。

 

自社のコアコンピタンスは何ですか?

自社のコアコンピタンスは何ですか?

 
どんな会社であっても、お客様がいて事業が続いているということは、何らかのコアコンピタンスが存在しています。

「うちはこれといった強みがないからね・・・」

と自嘲気味に仰る社長もいますが、私はそうは思いません。
 

真の強み、コアコンピタンスが何か?を深く考えたことがないだけであって、必ず強みは存在します。
 

ただし自社のコアコンピタンスに気づいていないとしたら、それは恐ろしいことでもあります。

つまり「何があっても守るべきもの」が分かっていないということに他ならないからです。
 

自社が存在し、お客様に認められている真の強みは何なのか?

コアコンピタンスを把握し、それを死守するのは経営者の最も重要な仕事です。
 

コアコンピタンスの具体例

コンピタンスの具体例

 
コアコンピタンスには様々なものがあります。まず、分かりやすいのはこのようなものです。
 

 

  • 他社が真似できない先進技術
     
  • ブランド
     
  • 独創的な商品
     
  • 品質
     
  • コスト競争力
     
  • 品揃え
     

 
一方で、社内の人間には一見して見えにくいコアコンピタンスもあります。
 

 

  • 競合よりも抜きん出た社員の高い士気
     
  • 営業担当者の細やかさ・丁寧さ
     
  • 決めたことをやり抜く企業文化
     
  • 顧客の要望に柔軟に対応する意識
     

 
これらは、競合他社と品質・価格面では大差ない場合であっても、顧客に選ばれる理由になるものです。
 

地味なので社内の人はコアコンピタンスと気づいていない場合もありますが、実は大いなる競争力の源泉になっていたりします。

特に中小企業の場合、後者のような、一見して見えにくいコアコンピタンスを備えている会社が多いのではないでしょうか。

 

お客様に「なぜ当社と取引しているか?」と聞いてみる 

お客様に「なぜ当社と取引しているか?」と聞いてみる

 
目立たないコアコンピタンスを知るのに一番シンプルな方法は、お客様に「当社と取引してくださっている理由はなんですか?」と聞いてみることです。

もしかすると予想もしなかった答えが返ってくるかもしれません。

 

以前ある製造業では、「競合他社よりも製品提案力が優れていること」が自社のコアコンピタンスだと思っていました。

ところがお客様に聞いてみると、

「御社の提案力は他社と大差ありませんが、担当者の顧客に寄り添う真摯な姿勢を高く評価しています」

という回答が大半を占めていたのです。
 

お客様や社外の客観的な立場の人に聞いてみると、自社のコアコンピタンスが見えてくるものです。

こうして自社のコアコンピタンスを把握することが経営には欠かせません。

 

コアコンピタンスを守り抜く

コアコンピタンス

 
コアコンピタンスが明確になったら、それが維持できているか、失われていないか、常に目を光らせましょう。
 

先の 「顧客に寄り添う真摯な姿勢」 がコアコンピタンスだとしたら、自社の社員がそのようないい仕事ができている真の理由まで踏み込んでください。
 

例えば、先の会社では、「顧客に寄り添う真摯な姿勢」ができる理由として以下の特徴がありました。
 

■経営陣の真摯な姿勢(それを社員が学んでいる)
 
■社内でもお互い助け合う文化顧客を大切にする経営理念や教え
 
■目先の利益より長期的な利益を優先する考え方
 
■社員の離職率が低く長期間顧客を担当
 
■働きやすく関係性の良い職場

 
いずれも素晴らしいことだと思います。

このようなベースとなる組織文化や理念、価値観があってこそ、社員はお客様に向けていい仕事ができます。 

企業文化がコアコンピタンスの源泉であるならば、それを失わずに維持していくことが経営者の大切な役割になります。
 

仮に日本製鉄のように、先進的な技術に根差した製品がコアコンピタンスであるならば、その技術の継続的な研究開発に投資を惜しんではなりません。

その製品の価値を理解せずあり得ない値引きを要求してくる取引先があれば、思い切って取引をやめる決断も時に必要かもしれません。

 

まとめ

 
コアコンピタンスはどんな企業にも存在する、存続・発展の生命線です。

よって、まずは自社のコアコンピタンスが何かを見極めること、

そして世間体や過去の常識にとらわれず、強い覚悟とプライドをもって守り抜いていくことが重要です。
 

さて、あなたの会社のコアコンピタンスは何ですか?

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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