前回のブログでは、会議での良い議論を妨げる7つの(心理的)要因についてお伝えしました。
今週のブログでは、この7つの要因で会議が停滞するのをいかに防止するか?という対策についてお伝えします。
目次
良い議論を妨げる7つの心理的要因
前回のブログでお伝えした「良い議論を妨げる7つの要因」を振り返ってみましょう。
- 力関係
- 自己保身
- 発言者の偏り
- 仕事を増やしたくない
- 変化への怖れ
- 精神論頼み
- 謝罪で幕引き
上記7つの要因を取り上げたのは、これらは人の心理的背景が要因であるため、解決が簡単ではないからです。
質の高い議論を行うための4つの対策
せっかく良い意見を持っていながら発言しない人がいるのは、会社にとって大きな損失です。
いかに参加者から良い意見を引き出し、質の高い議論を行えるか
それは企業の存続発展の生命線といっても過言ではないでしょう。
では、7つの要因の影響をできるだけ取り除き質の高い議論を行うためにはどうしたら良いでしょうか?
以下4つの観点から具体的にお伝えします。
- 物理的仕掛け
- ファシリテーションの工夫
- 会議のルールと文化づくり
- 上司の態度と姿勢
物理的仕掛け
席順
会議の席順はすぐに固定化します。
大抵の会議では、第1回目に座った席にその後も毎回座り続ける傾向があります。
席が固定化すると何となく序列ができ、話す相手も固定化してしまいます。
よって、自由な議論を促したい場合は席順を入れ替え、気持ちに揺らぎを与えましょう。
座席配置
普段ロの字型やコの字型の座席配置で会議をしているとしたら、
時には研修のようにアイランド形式でいくつかのグループに分けてみましょう。
分科会と全体会議のような構造になるため、普段よりも意見が出やすくなります。
人数にもよりますが、ホワイトボードなどを囲んで、立ったまま議論するのもいいですね。
人が立ったり座ったり入れ替わったり、動きのある会議の方が、人の間の序列が意識されにくくなり、意見が活発に自由に出てきます。
ホワイトボード、模造紙、ポストイットなどの道具
道具の凄いところは、人の思考や行動、発言を大きく変える力をもっている点です。
口頭の説明だけでは良く分からず、何となく通り過ぎていた話が、ホワイトボードに記すことで意図がよく伝わり、それがさらに新たなアイディアや意見を呼び起こします。
ちょっとした思い付きはわざわざ発言しないことが多いですが、「3分間時間をとってポストイットに思いついたことを書く」という形をとるだけで、多様な見方が表に出てきます。
さらに、道具を使えば聴覚だけの会議が聴覚×視覚の会議になります。使わない手はありません。
なお、お菓子を買い込んでくるなども、場の雰囲気がカジュアルになり、自由な意見が出やすくなります。
開催時間
難しい問題の対策検討などを行う会議は一定の時間的余裕が必要です。
朝の忙しい時間帯や、皆が後ろにアポイントを控えている時などは、どうしても議論に集中できず議論が深まりづらいです。
できれば夕方など、後ろの時間的制約のない時間帯に開催しましょう。
ファシリテーションの工夫
「会議のファシリテーション」は、議論の質に影響する最重要要素です。
ここではファシリテーションで取り入れたい工夫と、ファシリテーターの役割について説明します。
意見が出やすい進行をする
会議のテーマについて担当者が一通り説明した後、「では皆さん、ご質問、ご意見などいかがですか?」というのが定番です。
このやり方で活発に意見が出てこない場合には、いくつか方法があります。
参加者から意見が出にくい理由は、自分の考えがまとまっていなかったり、全体に意見を言うのはちょっと躊躇ってしまう場合などです。
そこで最初に3分程度の時間をとり、各自でじっくり自分の意見を考えてもらいます。
また、いきなり全体の場で質問、意見を求めるのではなく、まずはペアもしくは数人のグループで話し合ってもらい、その結果を全体へ発表してもらう流れだと意見が出やすくなります。
直接意見を求める
自発的な発言だけに依存すると、発言者に偏りが出たり、自信のない人の声が拾われなくなります。
それを防ぐためには、意見を言いたそうな人や、納得いかなそうな表情をしている人を直接指して意見を求めましょう。
「会議で意見を言わない奴は出なくていい」という考え方もありますが、私はあまり賛同しません。
そういった圧力をかけることで、一層、本音ではない意見を無理に言う人が出てくるからです。
発言しない人は意見が無いわけではありません。
直接意見を求めれば、他の人にない気づきや視点を発信してくれることが多々あります。
暴走機関車を止める
会議では個々の発言時間にバランスがとれている方が活発な議論になります。
よって、周りが「まだ喋るの?もういいでしょう」と思っているのに、ひたすら暴走して自説を長々話す人を放置してはいけません。
いったん遮って、次の人の意見に移りましょう。
発言内容が議題からそれるのは、ある程度は許容範囲ですが、全く違う方向に深入りする人がいたら、これも途中で遮りましょう。
しかし「人の話を遮るのは苦手」という人もいますよね。
そんな時は、会議のルールとして「1人で長すぎる発言は控える」というルールをあらかじめ伝えておくと良いでしょう。
相互理解を促進する
発言者の表現が曖昧であったり、難しい言葉の多用により何を言いたいか周囲が理解しかねる場面があります。
お互いの認識がずれたまま更に議論が進むと、徐々に焦点の定まらない展開になっていくので、いったん誰かが通訳(理解促進)に入りましょう。
発言者に「具体的な事例を出して頂けますか?」、「今の発言は●●という理解でずれていませんか?」などと聞くと、お互いの理解が深まります。
別の誰かに「今の●●さんの発言の意図はわかりましたか?説明してもらえますか?」と振るのも有効なやり方です。
議論が錯綜してきたら、そこまでの内容のまとめやキーワードをホワイトボードに書くのも良い方法です。
参加者の頭の中が整理され、その後の議論がスムーズになるでしょう。
あえて反対意見を出してもらう
説得力のある意見を言う人がいると、そのまま「そうだ、そうだ」という感じで皆の意見が一気にそちらに流れることがあります。
最終的にその結論が良いか悪いかは別にして、
一気に皆の賛同を得た考えが「本当に妥当なのか?」ということを改めて議論することで、結論の質や納得度が間違いなく上がります。
GMのアルフレッド・スローン・ジュニア氏の会議のやり方から学んでみましょう。
彼は議論の終わりに「それではこの決定については全員の意見が一致していると考えて良いですか」と聞きました。
そして全員がうなずくと、「それではこの件についての議論を次回の会議まで延期します。反対意見を深めたり、この決定が何を意味するのか理解するための時間をとりましょう」と言ったといいます。
引用元: Idea 34: Why consultation matters – O’REILLY
議論の質を高めるためにも「全員が同じ判断となったことは一旦考え直す」というステップを挟むと良いでしょう。
会議のルールと文化づくり
良い会議を行うためには「良い会議とはどのような会議か?」ということを参加者全員がわかっていなければなりません。
部長だけが喋って、参加者はただうなずいているだけの会議に慣れているとしたら、部長だけでなく参加者全員が会議に向かう姿勢を変える必要があります。
よって、次のような会議の基本原則をあらかじめ決めておきましょう。
会議に参加する前に●●について準備をしておく
できるだけ多くの意見を集め、立場に関係なくフラットに議論を交わす
相手の発言をよく聞き、発言を正しく理解し、その上で議論を進行させる
精神論だけの結論にしない
意見を言う人を賞賛する
自分の立場に捉われることなく、会社にとって何が最適かという観点で発言できる人を賞賛する
発言した人が損をするような対応をしない(「意見を言った以上、お前がやれ」のような態度はNG)
良い発言は組織全体で受け止め、最善の対応策を考える
ぜひ、あなたの会社の「会議基本原則」を考えてみてください。
上司の態度と姿勢
会議参加者の最も上席にあたる人の影響は非常に大きいです。
その人がどのような発言、振る舞いをするかによって、会議の空気はいかなる方向にも転じてしまうので注意が必要です。
上席者が参加するというだけで参加者には多少の緊張感は出るので、少なくとも威圧感を感じさせないように工夫しましょう。
上席者がふんぞり返って座ったり、にらみを利かせたり、高圧的な発言はもっての他です。
できるだけ柔らかい表情、気さくな雰囲気を心掛けましょう。
自分の考えに反する意見を頭ごなしに否定せず、いったん受け止める度量も必要です。
先に述べた会議の基本原則に則った会議が実施できるよう、上席者自らが「原則に外れた行動を指摘・原則に沿った行動を賞賛」すれば、参加者に好インパクトを与えます。
まとめ
以上、2回わたって、会議で質の高い議論を妨げる要因と、良い議論を行うための具体的な方法についてお伝えしました。
日々の会議の質は、会社の存続発展に影響する要素でもあります。
できるところから工夫改善を重ね、会議の質を高めていっていただきたいと思います。
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