人事施策
最近よく『デジタル』『デジタル化』という言葉を、耳にするようになりました。
菅総理が打ち出した方針にも含まれており、メディアもこぞって使っていますね。
ただ性格が歪んでいる(?)私はデジタルという言葉を耳にするたびに、「結局デジタルを使って何を実現したいの?」と、疑問に思うことが少なくありません。
デジタルはあくまでも手段であり、それを使って実現したい姿や解決したい問題があるはずなのです。
仕事でもついつい当初の目的を忘れ、施策を実施することで頭がいっぱいになる『手段の目的化』に陥りがちです。
今回は手段の目的化に陥りやすい『社員研修の目的』について考えたいと思います。
目次
ストップ!『手段の目的化』
社員の育成や研修に悩まれている方は、業界や会社規模を問わず非常に多いです。
実現したいことや解決したい問題があるはずなのに、ここでも「実施することを目的としてしまう」例が見られます。
まずは人事施策の目的をしっかり確認することから始めましょう。
私が社員研修や育成のご相談をいただく際、必ずお伺いすることがあります。
「御社の求める人材像・社員像を教えてください」
研修や育成に限らず、評価制度や採用、報酬制度など、人事関連の全ての施策は『自社の求める人材像の実現』だと考えています。
そのため、自社の求める人材像を明確にすることが、研修を考える上での第一歩なのです。
研修の目的 皆さんの会社における『求める人材』とは?
「御社の求める人材像・社員像を教えてください」この質問をすると「小難しいことを聞いてくるな」と、怪訝そうな顔をされる経営者の方もいます。
そういうときは、下記のような具体的な質問をつなげます。
社員像・期待する役割
- 会社のビジョンを実現(または会社が今後も持続)するために、どのような社員が必要ですか?その社員は、どのような役割を担いますか?
- どのような社員と一緒に、会社の将来を作っていきたいですか?
- どのような会社の文化や雰囲気を作りたいですか?その文化や雰囲気に合う人は、どのような特徴を持っていますか?
期待する行動・意識、必要な知識・能力
- 上記で挙げた社員に期待する具体的な行動は、どのようなものでしょうか?
- 期待する行動をとるために、必要な知識や能力、姿勢や考え方はなんでしょうか?
最初は今の社員を頭に浮かべながら考えるので、考えが出づらいこともあります。
そのような時には、「一旦今の社員の状態は忘れて、社長の夢と理想と妄想(?)を膨らませて、考えてみてください」と一押しさせていただきます。
そうすると、
- 顧客ニーズに応えることで、顧客の信頼を得てきた。世の中の変化に興味を持つ、広い視野を持った社員が必要だ。
- 会社の規模が小さい分、社員一人一人の成長が会社の成長に繋がると信じている。小さくてもチャレンジを繰り返し、成長する喜びを感じる社員と一緒に戦いたい。
- チームで一丸となれる企業風土にしていきたい。他者と協力できるコミュニケーション力を持つ社員に、社内のチームワーク文化を作ってもらいたい。
と、嬉しそうな表情でお話しいただけることが多いのです。
社員に身に着けてもらいたい知識や能力が明確になれば、研修の目的が自ずと明確になります。
70/20/10の法則 研修を研修だけで終わらせない仕組み作り
米国の人材開発研究機関であるロミンガー社が提唱している、『70/20/10の法則』をご存じでしょうか?
リーダーシップを発揮している人材に対し『成長に役立ったこと』を調査した結果、『70%が経験、20%が薫陶、10%が研修』であることがわかりました。
研修において目的と同様に重要になるのが、『研修の役割・位置づけ』です。
研修を行えば、知っておいて欲しい知識や能力、新しい考え方などを情報として伝えることは可能です。
ただし研修の効果を生み出すためには、研修で学んだことを実務で実践するための仕掛けやサポートが必要になります。
研修単体で考えるのではなく、職場や業務、目標評価制度などと併せて仕掛けることが大切です。
研修をそれぞれ他の2つの要素と関連づけて考えてみましょう。
・研修内容や受講者への期待を上司や先輩社員に共有し、職場全体で社員を育成する体制と意識を醸成する(薫陶)
・学んだことを実践するために社員自ら行動変化の目標を設定し、定期的に振り返ることにより変化を促す仕組みを構築する(経験)
社内で求める社員像を共有し、皆が求める社員像に対して魅力を感じる。
そして会社全体で社員を育てる文化と仕組みを築いていく。
社員育成に裏技や近道はありません。時間とエネルギーを惜しみなく注ぎ、一つずつ施策を積み重ねていきましょう。
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