受け放題型の 定額制研修 が今や多くの会社で採用されるようになりました。
定額制研修とは、主にオンライン方式で提供され、企業が固定料金で契約を結ぶと、社員はさまざまなジャンルの講座をいつでもどこでも無制限に受講できるというものです。
ところが、この「無制限」というのがなかなかの曲者です。
いつでも受講できると思うと逆に受講しなくなるのが人の性。
実際、導入した企業から「期待していたほど社員が利用してくれない」という声が多く聞かれます。
今週のブログでは、定額受け放題研修を少しでも有効に活用するための工夫や方法について、事例も交えてお伝えします。
目次
定額制研修 のメリットとデメリット
定額制研修の最大のメリットは、豊富な講座をいつでもどこでも受けられるところです。
各社のサービスによって違いはあるものの、数百~数千の講座が取り揃えられており、
ビジネスマナー、コミュニケーション、ロジカルシンキング、部下マネジメント、目標管理、戦略、マーケティング、コンプライアンス、DX、労務管理、キャリア、PCスキル、エクセルやパワポ、語学、などなど、
多種多様なジャンルが用意されています。
向学心の強い社員ならば、自分の関心の高い講座をどんどん受けていくことが可能です。
動画教材なので、再生速度を調整したり、重要なところは繰り返し試聴したりと、自分のペースで見られるのも大きな利点です。
一方でこの研修にはデメリットもあります。
それは意外と受講する人が少なくなる傾向があるところです。
理由の1つは「いつでも受けられる」という安心感から結局受講を後回しにしてしまうからです。
忙しくて受ける時間がない、講座たくさんありすぎて何から学んでよいかわからない、といった問題もあります。
実際に受講する場面においても、1人で画面を見ていると集中力が続かず眠気に襲われたり、途中で他の仕事をしてしまったり、内容をきちんと理解できているか不安を感じることもあります。
定額制研修 と対面集合研修の違い
定額制研修(オンライン)と対面集合研修を比較してみましょう。
対面集合研修のメリット
対面集合研修の良いところは、あらかじめ参加日時が決まっているので、全員がほぼ確実に参加し、研修時間中は研修に集中できる事です。
また、対面の講義形式でも眠くなることはあるものの、講師がなるべく退屈させないよう工夫してくれるので、参加者の意欲や集中力は高く保たれます。
対面集合研修のデメリット
一方、対面集合研修のデメリットは、費用が高いこと、移動時間と移動コストがかかること、半日から1日といった長時間の拘束が必要なところです。
会社からの指名で参加する場合も多いので、必ずしも本人が今学びたいものと、研修のテーマが一致するとは限りません。
(対面集合研修と比較した時の)定額制研修のメリット
対して定額制研修は、そういった対面集合研修のデメリットを補う形で出てきたサービスでもあるので、
費用がリーズナブル
いつでも好きな時に受けられる
自分の好きなテーマを受けられる
などが相対的なメリットと言えるでしょう。
定額制研修 を有効に活用するには?
定額受け放題研修をできるだけ有効に活用するためには、そのデメリットを防ぎつつ、メリットを活かすことが重要です。
定額制研修 のデメリットを防ぐ
受けられる講座がたくさんあるからといって、それらをすべてを受ける人は滅多にいません。
また、いつでも好きな時に見られるからこそ、逆に見なくなってしまいます。
対策としては、まずは個々に受けるべき講座を特定し、受講のタイミングを決めることが有効です。
A君の上司だとしたら、A君の仕事上の課題や学ぶべきテーマについて相談し、どの講座を受けたらよいかを決めます。
受講時期も「●月●日まで」と決めきちんと受講したかを確認することで、計画的な学習を促進できます。
1人学習なので、集中力が続かない、眠くなってしまうことも避けられない問題です。
その対策としては、受講した講座について簡単なレポートを提出させることが効果的です。
どのような学びがあったか?
具体的にどのように仕事に活かせるか?
わからなかった点はどこか?さらに知りたくなったことは何か?
このようなテーマで振り返ることにより、A君の受講の取り組み姿勢が変わってきます。
また、1人学習の場合、自分が学んだこと、理解したことが、きちんと消化できているか心もとないことがあります。
そのようなとき、もし同じ講座をA君だけでなく他の部下も受けているとしたら、講座を受けた者同士で簡単な勉強会を開き、お互いの感想やどう活かせるかを話し合ってもらいましょう。
これにより、見る視点が広がり、学びの総量が広がる効果が得られます。
定額制研修 のメリットを活かす
定額受け放題研修のメリットは、何よりも多種多様なジャンルの講座が豊富にあり、思い立った時にすぐ受けられる点です。
つまりオンデマンド学習が可能です。
「〇〇がちょっと苦手だなあ」
と思った時、すぐに該当する講座を探し、受けることができます。
上司がA君を見ていて「プレゼン資料のビジュアルをもう少し改善した方がいいな」とか「派遣スタッフとのコミュにケーションに苦労しているな」と思えば、それに該当する講座を受けるよう指導ができます。
仕事上の課題を出発点として、適切な講座を選定し、旬のタイミングですぐに学べる。
これこそが定額受け放題研修のメリットを最も活かす使い方ではないでしょうか。
定額制研修 は「仕組み化」が重要
お伝えしたように、定額制研修はただ導入しただけで、社員の受講を促進する仕組みを入れない限り、どんどん利用率が下がる運命にあります。
利用率を上げる仕組みを推進しないのであれば、契約を継続する意味はないでしょう。
一方で、せっかく導入した仕組みを有効活用する方針であるならば、定額制研修のメリットとデメリットを踏まえた対策が不可欠です。
以下に、定額制研修の利用率をほぼ100%まで高めた会社の事例をお伝えします。
定額制研修の活用を仕組み化し成功した事例
ある機械部品メーカー(従業員150人程度)における、定額制研修の成功事例をお伝えします。
3年ほど前に定額制研修を導入し、社員に積極的な受講を促しました。
仕組み化の背景と施策
定額制研修の導入初期はある程度受講者がいたものの、半年ほど経つとほとんど受講する人がいなくなってしまい、利用の継続可否を検討する事態に陥りました。
議論の末「社員教育を重視する方針は変えたくない」との判断から利用は継続とし、いかに利用率を高めるか考え、新たな施策を実施しました。
主に行なった施策は、以下の3つです。
- 月1回の受講促進
- 振返りレポート
- 各職種、階層における必須受講科目の設定
それぞれご紹介します。
月1回の受講促進
受講を本人任せにすると結果として後回しになってしまうので、あらかじめ受講日を全社員で確定しました。
毎月第2水曜の午後16時からの時間を全社員が1講座受講するものと決め、年初に12ヶ月分のスケジュールを入れてしまいます。
全社員が同じ時間に受講することになるので、よほど別件のスケジュールを差し込まざるを得ない人以外は、ほぼ確実に受講します。
受講する講座については、事前に上司と軽く相談して決めています。
振返りレポート
ただ講座を見ているだけでは受講効果が低くなりがちです。
そこで、受講しながら自分に何が生かせるかを考えてもらうことを目的として、受講後のレポート提出を義務付けました。
あらかじめ振返りレポートのフォーマットを決め、そのフォームに下記を記載します。
- 気づき、学び
- 自分の仕事にどのように活かせるか
- わからなかったこと
レポートは受講後に提出され、それを後日上司が確認し、必要に応じて部下と話し合いの機会を設ける流れとしました。
階層における必須受講科目の設定
この会社では管理職になる前の段階で4つの人事等級があります。
それぞれの等級において、定額制研修の講座の中で必ず受けるべき必須講座を設定しました。
例えば2等級に所属する人は、所属している間に定められた7つの講座を必ず受けなければなりません。
そして3等級への昇格審査の一環として、7つの必須講座の受講が完了しているか否かを確認します。
このようにして、受講漏れが発生しないような仕組みを整えました。
結果
以上3つの施策を推進したことにより、社員の受講率がほぼ100%になり、社員によっては定められた講座以外にも積極的に受講するようになりました。
また、営業部では研修の前に営業系の講座をあらかじめ見てから営業研修に参加させるなど、部署主導の取組みにおいても活用の事例が広がっていきました。
まとめ
定額制研修サービスは、多くのメリットを持つ一方で、利用方法によってはその効果を十分に発揮できないことがあります。
そのため企業がこれを導入する際には、単に提供するだけでなく、社員の受講を促進するための仕組み化が不可欠です。
定額制研修はコスト面でも優れているため、とくに中小企業にとっては効率的に人材育成を行うための強力なツールとなります。
うまく活用し、組織全体の成長につなげていきましょう。
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