あなたの会社は社員の キャリアを考える ことに積極的ですか?
上司と部下の間でキャリアの話ができる環境ですか?
私が社会人になったのは1994年ですが、当時はキャリアという言葉などほとんど聞いたこともなく、社内でその言葉を使っている人もいませんでした。
しかし時代は変わり、今では誰もが自分のキャリアを考えながら働く時代になりました。
今担当している仕事が自分の将来のキャリアにどのようにつながっていくか?が「今の仕事を続けるか・辞めるか」の大きな判断基準になっているのです。
今週のブログでは、社員のキャリアを考えられる会社、部下のキャリアを考えられる上司になるための道筋についてお伝えします。
目次
誰もが自分のキャリアに向き合わざるを得ない理由
キャリアという言葉が使われなかった時代では、社員が能動的に自身の将来のキャリアを考える機会がほとんどありませんでした。
あったとしても、せいぜい社内の自己申告制度を使って異動希望などを出す程度でした。
社員たちも「異動希望が叶うことは滅多にない」と認識しており、形式的な制度となっていました。
「自分のキャリアは会社に任せます!」という状況です。
しかし、さまざまな環境変化とともに、社員の意識も変わりました。
働く期間の長期化で「生涯1社」は非現実的。求められるスキルも時代と共に変わります。
共働きが多数派となり夫婦のワークスタイルも多様化。転職も当たり前の時代です。
会社の配属や異動命令に従って「会社すごろく」を歩む時代は終焉し、誰もが自分のキャリアを考えながら、今の仕事に向き合っていく時代です。
社内でキャリアの話はタブー?
経営者の中には、社員とキャリアの話をするのを嫌がる人もいます。
理由は、「自分の将来を考えさせたり、外の情報や知恵をつけたりすると、結果として社員が辞めてしまう」というものです。
私も以前はそれはそれで理解できると思っていましたが、色んな人の事例を見ていて気付いたことがあります。
それは、「社員に将来キャリアを考えないと、会社にとってマイナスになる」ということです。
優秀な社員は自ら世の中の動きをキャッチアップし、自分のキャリアについても考えているので、社内でやりたい仕事ができなければ辞めていきます。
逆にあまり意欲のない社員や力のない社員に限って、勉強せず外の情報も仕入れていないため、将来のキャリアについても考えていません。
色々と会社に不満は言うものの、転職しようと思っても上手くいかないので、消極的理由で会社に残り続けます。
外の情報を与えず内向き社員を育てようとした結果、優秀な社員が出ていき、意欲のない社員が残ってしまう・・・
これは会社としては最も望まない状態ではないでしょうか?
本人のキャリアを考え、やりたい仕事にどんどんチャレンジしてもらった方が、優秀な社員が力を発揮し、会社も社員も共にハッピーになれます。
「いかにして会社の与える仕事をやらせるか?」という発想を卒業し、「いかにして社員1人1人の得意な仕事や望む仕事を担当させるか?」という発想への転換です。
「社員の キャリアを考える 」とは?
さて、社員のキャリアを考えられる会社とは、どんな会社でしょうか。
それは、社員自身が将来なりたい姿や獲得したい能力を明確にし、それに近づけるような仕事を推進していける会社のことです。
会社から指示された業務を漫然とこなすだけの会社では、社員は力を発揮できません。
まずは節目の面談の場で、上司は部下に以下のような質問を投げてみましょう。
■ 将来的にどのようなキャリアを考えていますか?
■ どのような専門性、能力、経験をもつ人になりたいですか?
■ その目標に向けて、自分自身が足りないと感じていることは何ですか?
■ 今の仕事では、キャリアの目標に沿って力がついていますか?
■ キャリア目標に近づくために、今の仕事でできること(工夫)は何ですか?
■ キャリア目標に向けて、今後当社でどのような仕事をやりたいですか?
上記のような質問を上司が部下に投げかけ、どうやったら実現していけるかを話し合う場があってこそ、社員のキャリアを考える会社と言えます。
「社員のキャリア希望を聞いていたら会社が回らない」と思う方へ
社員のキャリアを考える会社になるための鍵となる存在は上司です。
なぜなら、社員が自分の将来のキャリアについて「●●をやりたい」と言っても、
上司が「それは君の担当ではない。君は■■をやってくれればいい」とか「君に●●の仕事は合わないよ」
と言った瞬間に全てが崩れ去るからです。
上司は部下の「●●をやりたい」を頭ごなしに否定してはいけません。
例えば「マーケティング部に異動してマーケティングの仕事をやりたい」という部下がいたとします。
現状はマーケティング部に受け入れるポストはないとしても、部下が将来的に近づけるようなサポートをしましょう。
すぐに異動するのは無理だとしても、本人のキャリア希望と現在の業務とのギャップを理解し、少しずつそのギャップを埋めていく共同作業を、上司部下間でよく相談してください。
キャリア希望の例
「今後は企画部門に移りたい」という営業担当の部下
部下が「営業よりも企画をやりたい」と希望を出してきたとします。
しかし、今すぐの人事異動は現実的ではありません。かつ、異動できたとしても戦力になるとは思えません。
そこで上司が考えるべきは、今の仕事に就きながら、企画能力を高めていく方法です。
企画に異動してから企画業務をやるのでは時間がかかるので、営業にいながらにして企画能力を高めてもらうのです。
営業の仕事でも、企画能力を磨けるチャンスがたくさんあります。
- 長年使い回している営業用パンフレットを作り変える
- お客様への提案書の勉強をして、もっといいものを作る
- 顧客のリピート傾向や注文点数などのデータを分析し、営業活動の効率化に活かす
営業部にいながら企画業務でも頭角をあらわせば、将来的に企画部門から声がかかる可能性も飛躍的に高くなるはずです。
「もっと高度な仕事をしたい」という経理担当の部下
「単純な仕訳作業や売掛金管理ばかりやっていたら力がつかない。経営分析などもっと高度な仕事をさせて欲しい」
と危機感を訴えてきたとします。
まだ経営分析の能力は足りないかもしれませんが、将来を不安に思っているのはとてもいいことです。
「君には時期尚早。まずは処理でミスがなくなるまで我慢しなさい」などと言ってはなりません。
もちろん今の仕事は責任をもってやってもらいますが、“経営分析のできる経理”になるための道筋を作ってあげてください。
- 初歩的な課題として、特定の事業部の売上推移(単価×数量の推移)を分析して、そこから何が読み取れるか考えてもらう。
- 財務諸表の推移から経営の異変を見つけるため同業他社の財務諸表と比較分析してもらう
など、どんどん難しい課題を与えていきましょう。
上記2つの例に共通しますが、仕事は自分に機会が巡って来るのを待つだけでなく、自分から機会を作って磨く姿勢が大事なこともさり気なく教えてあげましょう。
上司もキャリアビジョンを持つ
現場でよく起きる問題は、上司が自分のキャリアを考えたこともないため、将来キャリアに敏感な若手世代と噛み合わないことです。
上司から見た部下
自分は社長の要請に応じて色んな仕事を引き受け社業に貢献してきたという自負があるため、部下のキャリア希望を聞いて業務指示することに抵抗感があります。
部下から見た上司
上司は長年会社に貢献してきた人ではあるけど、特に専門性もなく、部下にとっては「自分が将来なりたい姿」ではありません。
上司自身が自分の キャリアを考える
この上司・部下間のギャップを打破するためには、上司自身に自分のキャリアをしっかり考えてもらうことです。
今の時代は40代や50代は守りに入る年齢ではなく、まだまだ学習し、努力し、新しい仕事に挑戦していく年齢です。
自分の将来のありたい姿や夢を語って欲しいですし、そういう上司なら若い人のキャリアに対する不安や悩みに共感できます。
40代、50代には油断させず、刺激を与え続けることも欠かせません。
具体的にはこのような方法が有効です。
- キャリアカウンセリングを受ける機会(今後の自分のキャリアを考える機会)
- 社外の研修等への参加(世の中の変化を知る)
- 部署異動
- 社外出向
- 部下からフィードバックをもらう など
まとめ
中小企業は飛び抜けて高い報酬を出すことはできません。
就活で第一希望で入社してくる人も稀です。
それでも会社の発展のために頑張って働いてもらうには、本人の目指すキャリアと仕事内容がクロスオーバーしていることが大きな原動力となります。
広報の中途採用の場合、
一定の規模以上の会社であれば、「広報の経験がある人」を採用しますが、中小企業では、「広報は未経験だけどやる気のある人」でも採用します。
その人にとっては、未経験ながら広報を任せてもらえる貴重な舞台です。
広報のプロというキャリアを目指す上で、唯一無二の環境となるので、本気で頑張ってくれるでしょう。
中小企業のいい所は、課題がたくさんあり、課題解決できる人材が少ないので、能力・意欲の高い人にとってはどんどん自分の仕事の範囲や権限を増やしていけるところです。
社員のキャリアを考える会社になるために、「いかにして会社の与える仕事をやらせるか?」という発想を脱却し、
「いかにして社員1人1人の得意な仕事、望む仕事を担当させるか?」という発想に切り替えてみてください。
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