リーダー育成 の落とし穴|リーダーが育つのを待つのではなく、意図的に輩出する方法

2024.05.30

 
多くの企業で リーダー育成 のための研修が行われています。

これらのリーダーシップ研修の場は、リーダーシップスタイルを理解したり、普段自分がリーダーシップを発揮できているかを振り返る良い機会になります。
 

しかしリーダーシップとは、本来、日々の仕事を通じてのみ真に体得し磨かれていくものです。

実際の業務でリーダーシップを発揮する機会がなければ、研修でリーダシップを学んだところで「論語読みの論語知らず」になってしまいます。
 

今週のブログでは、リーダーシップ実践の敷居を下げることでリーダーシップ発揮の機会を増やし、全体を底上げする育成についてお伝えします。

 

リーダーシップにまつわる誤解

 

リーダーシップについてはいくつか誤解や思い込みがあったりします。

その常識を取っ払うことは、多数のリーダー人材を輩出する上で重要な視点です。

 

誤解1「リーダーとはこういう人」

 
一般的に考えられがちなリーダー像は、エネルギッシュで声が大きく人前で話すのが上手な人です。

しかし、仮にその人の最大の目的が“自分の出世”だったとしたら「皆から信頼されるリーダー」になれるでしょうか?
 

たしかに「エネルギッシュで声が大きく人前で話すのが上手」はリーダーに望ましい要素の1つではありますが、不可欠な条件ではありません。

今の時代は「サーバントリーダー」が求められているとよく言われますが、このリーダーシップスタイルは自ら先頭に立って引っ張るのではなく、後方支援しながら皆を進むべき方向に導いていく方式です。
 

多弁なリーダーもいれば、多くを語らない静かなリーダーもいます。

情熱ほとばしるリーダーもいれば、内に闘志を秘めたリーダーもいます。

外交的なリーダーもいれば、内向的なリーダーもいます。
 

それぞれ強みと弱みが異なるだけで、いずれも優れたリーダーになれる可能性があります。

企業の成長ステージにもよりますが、リーダーの型は決して1つではなく、色んなタイプの人がリーダーになることができるのです。

 

誤解2「リーダーは年長者が望ましい」

 

チームでリーダーを決める際、何となく暗黙の了解で年長者がリーダーに選ばれることがありませんか?

しかし、年齢とリーダーシップはあまり関係がありません。

たしかに人生経験、業務経験が豊富という意味では年長者に一日の長がありますが、リーダーシップの要件に年齢は必要ありません。
 

最近の事例として、ある飲食フランチャイズチェーンの運営会社にて、22歳の女性が社長に就任しました。

大抜擢ではありましたが、年上の社員たちはその抜擢に納得していました。

社員たちはその女性について、「情熱がある」「いつも皆のことを気にかけている」「厳しいけど暖かい」と感じており、社長にふさわしい人物と思っているようでした。

 

誤解3「リーダーは万能でなければならない」 

 
リーダーは万能であり、メンバーよりも優秀でなければならないという誤解もあります。

もしリーダーに何か弱点や苦手なところがあると、そのチームのメンバーたちはリーダーに対して文句を言いがちです。
 

しかし、リーダーがリーダーシップを発揮するためには、メンバーたちがリーダーをサポートしてリーダーを盛り立てるフォロワーシップこそが欠かせません。

メンバーたちにフォロワーシップが全然なく、皆がリーダーに依存する状態だとしたら、優秀なリーダーであってもなかなかチームを導いていくことはできません。
 

リーダー1人の万能性に期待するのではなく、リーダーの弱点をチームが補い、全員が協力して同じ方向に突き進む文化を育てることが、組織の成功へと繋がっていきます。

 

リーダーに求められる条件とは?

 

リーダーを巡る誤解について説明しましたが、では具体的に「リーダーに求められる条件」とは何なのでしょうか?
 

リーダーの役割は、会社の社長であっても、体育会の部長であっても、市長や町長も、忘年会幹事も、基本的には変わりません。 

チームの向かうべき未来(ゴール)を示し、その未来に向けて何が必要か、何をすべきかを明確にします。

その上でゴールに辿り着けるようスケジュールや役割分担、責任を整え、決して諦めることなく前に進みます。

メンバーを単なる参加者にせず、当事者として巻き込むことも重要です。
 

リーダーシップ力とは、上記の役割をどれだけ果たせるかによって決まります。 

具体的な能力ベースでは、先ほど述べた「伝える力や傾聴力などのコミュニケーション力」、「論理的思考力」、「決断力」、「先を見通す力」、「リスク感知力」などが求められますが、

それ以上に大事な条件はもっとシンプルな、以下の3つです。
 

情熱

忍耐力、持続力

組織のため、メンバーのためという心

 

情熱

情熱が必要なのは言うまでもありません。リーダーは嫌々やるものでも、誰かに指示されて動く存在でもありません。

自分なりの目指すゴール、思い、情熱があってこそ、人を導いていくことができます。

 

忍耐力、持続力

 

何かの目的に到達する道のりは常に困難に満ちています。

辛いことも嫌なこともありますが、その困難に耐え、取り組み続ける力が求められます。

また、情熱も一時的なものでは困ります。

情熱に持続性がなければ途中で頓挫してしまいます。

 

組織のため、メンバーのためという心

 

リーダーが自分のために動いていたら人はついていきません。

自分の出世のため、地位を守るため、自分の思い通りに物事を進めるため・・・

このような動機で動く人には、いかにリーダーシップの能力を備えていたとしても、冷ややかな視線が向けられます。
 

一方で、仕事の目的が組織をより良くするため、メンバーがより成長できるため、メンバーがより豊かになれるため、このような動機で皆のために行動できるリーダーのもとに人は自然に集まります。 

 

以上の3つは、一国のリーダーである総理大臣に対して国民が求めるものを想像してもらえれば、より理解しやすいと思います。

 

リーダーを育てるには、経験すること/経験させること

 

リーダーシップは実際にリーダーを経験してこそ身に着くものです。

誰もがリーダーになれるわけではありませんが、経験を積めば積むほど、多くの人がリーダーになれる可能性を高めることができます。
 

先日プロを引退したサッカーの長谷部誠選手(ドイツのブンデスリーガで17年にわたって活躍。日本代表のキャプテンでの出場数81試合は歴代一位)が仰っていました。
 

「日本代表キャプテン就任時、自分がふさわしいとは思わなかった。しかし、ふさわしい存在になれるようあえて振る舞い、そういう意識を心がけた結果、自身の人間性が磨かれ、長年その責務を担うことができた」
 

今や優秀なリーダーとして真っ先に名が挙がる長谷部選手ですら、最初からリーダー人材だったわけではありません。立場が彼を真のリーダーに育てたのです。
 

リーダーはある日突然生まれるものではありません。

皆がよちよち歩きの新米リーダーからスタートして、徐々に経験の幅、大きさを上げていくことで、より強いリーダーに育っていきます。
 

「リーダーが育っていない」という会社は、リーダーの実践機会を提供できていないことが原因かもしれません。

年齢や経験にとらわれず、多くの社員にリーダーを経験させてみてはいかがでしょうか?

 

皆にリーダーを経験させるコツ

 

管理職になってからリーダーを経験するのでは遅すぎます。

というか、それでは管理職になってから管理職の仕事がつとまりません。

リーダーシップを発揮する機会を若手社員のうちからどんどん経験させるべきです。

経験させる方法は、日常業務の中にたくさん転がっています。

 

小さなタスクにおいて、その責任をまかせる

 
上司の出張のホテル手配のような単純業務を頼むならば、出張のスケジュールから移動経路、段取りなどの出張計画全体に対して、最適な提案を考えてもらいましょう。

同様に、採用業務において面接官と候補者の面接設定を担当しているならば、ただ日程を調整するだけではなく、最もスピーディーかつ皆がストレスのない日程調整の方法に責任をもってもらいましょう。

守備範囲は狭くても、その仕事に責任を持つことはリーダーへの第一歩です。

だんだんと主体性が芽生え、他者との調整業務を通じてリーダーシップの学びが得られます。

 

後輩の指導者になる

 
後輩が入ってきたら、業務の指導役や困りごとの相談役を担ってもらいましょう。

自分の仕事で成果を出すことと、他人が仕事で成果を出せるよう育てることは別物です。

上司部下の関係ではないとしても、先輩後輩の関係で後輩の面倒をみることで、人を導く経験、寄り添う経験、思った通り動いてくれない人に対応する経験などが学べます。

教える過程で、自分自身の振る舞いを見直すいい機会にもなるでしょう。

 

(ミニ)チームリーダーになる

 
営業1課に10名の人員がおり、その中に3年目、2年目、1年目の担当者がそれぞれ1人いるとします。

それぞれの直上司は課長ですが、この3人をミニチームに見立てます。

3年目社員をリーダーとして任命し、彼または彼女にはチームの業績達成に向けた責任者を担ってもらいます。
 

2人の後輩マネジメントと数字達成の責任を背負うのはなかなかの重荷です。苦労の連続でしょう。

しかしこの経験は小さな会社の社長みたいなものです。

3年目社員にとっては非常に価値のある経験になるのではないでしょうか。

 

リーダーを持ち回り制にする

 
ある会社のITエンジニアチーム(7~8人)では、明確に位置づけられているリーダーがいません。

このチームは比較的力量が近いメンバーで成り立ち、同じプロジェクトを担当分けして進めています。

以前は特定のリーダーがいましたが、誰かをリーダーにすると皆がその人に依存し、リーダーの負担だけが重くなるという問題が発生していました。
 

そこで取り入れたのがリーダーの持ち回り制です。1週間単位でリーダーを持ち回りにしています。

リーダーは、前週の仕事の状況の確認、今週の予定作成、メンバー間で認識に漏れがないよう情報共有の促進、困っている人のサポートなどを行います。
 

この制度を実施して見えてきたことは、元々リーダーは無理なのでは?と思っていた人でも、それなりにリーダー業務をちゃんと担えることでした。

誰かに依存することがなくなり、皆がチーム全体を考え、積極的に情報共有したり、助け合うようになりました。

リーダーを経験する人材が増えたので、会社の人材育成という観点でも厚みが増す効果がありました。

 

プロジェクトや企画の責任者を担う

 
通常の担当業務以外にも、特定のプロジェクト等を進める仕事が存在します。

例えば職場美化プロジェクト、残業削減プロジェクト、企業理念浸透プロジェクトなど、部署横断的に進めるプロジェクト。

これらのプロジェクトの総責任者は部長や課長クラスが担うとしても、実際の運営責任者には担当者を指名して、全社視点、部署横断視点で動いてもらいましょう。
 

若手社員を指名した場合、不慣れな面はあるかもしれませんが、上の世代では思いつかないアイディアや実行プランを出してくるものです。

この手の試みを行うと「リーダーシップや実行力に年齢は全く関係がない」ということを改めて実感します。
 

忘年会の企画、お客様感謝会の企画、送別会の企画など、企画モノも色々あると思います。

例えば送別会の企画であれば、日程とお店を決める仕事だけを任せるのではなく、どのような忘年会にするかのコンセプト企画から当日の進行まで考え、事前準備や関係者への各種手配まで担ってもらいましょう。

企画モノは、任せて失敗するリスクも小さいので、リーダーシップを培う練習としてうってつけです。

 

まとめ

リーダー育成

以上、リーダーシップにまつわる誤解や、条件、そしてできるだけ多くの人にリーダーの経験をさせる方法についてお伝えしました。

リーダーシップを体得するには、実践経験をたくさん積むことが何よりも重要です。

リーダーシップ人材が育ってくるのを待つのではなく、どんどん経験させ、皆にその素養を身に着けてもらうこと。

それが「リーダーが育たない」という組織の悩みを解決する処方箋になるでしょう。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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