会社の不満 を言うだけの「野党社員」をつくっていませんか?主体的に動く「与党社員」を育てる経営戦術

2023.02.03

会社の不満 を言うだけの「野党社員」をつくっていませんか?
会社の中には、比喩的な意味で「与党社員」と「野党社員」が存在していると言えます。

 
与党社員とは、自分が会社を良くしていく当事者であると認識して、会社の問題解決に自ら取り組む人です。

野党社員は、会社の問題点、できていない点を指摘はするものの、それを改善する主体者にはなろうとしない人です。
 

もし会社中が野党社員で溢れてしまったら、一体どうなってしまうでしょうか?
 

今週のブログでは、与党社員を増やすことの重要性と、社内に野党社員が増えてしまう理由と対策について考えてまいります。

 

与党社員と野党社員

 
与党社員と野党社員は「仕事に対する姿勢とアプローチ」が大きく異なります。
 

例えば、ある会社の法人営業部某支店では以下のような問題点を抱えていました。
 

ある会社の問題点

■ 商品の差別化要素が薄れ、他社商品と比べた優位性がない

■ インセンティブ制度が古い社員に有利になり過ぎており、新しく入った社員がほとんどもらえない

■ 評価制度が形骸化しており、本当に貢献した人がちゃんと評価されない

■ 新人が中途入社しても誰も教えてくれず、放ったらかしのOJTにとどまっている

■ 本社は数字の要求ばかりで支店をサポートしてくれない など

 

与党社員

 
この環境下、Aさんは上記問題点を理解した上で、最大限自分として何ができるかをポジティブに行動し、さらに、これらの問題点を解決するにはどうしたらよいかまで考えました。

この場合のAさんは与党社員と言えます。
 

Aさんがとった行動
 

■ 支店に新しく入社してくる人への受け入れ教育の仕組みを作ろうと思い立ち、支店長の承認を得た上で自ら受け入れ教育の教材や指導カリキュラムを作成しました。分からないところは、先輩社員にも相談しながら進めました。

■ 評価制度は本社で決めていることなので、自分の力だけではどうにもなりませんが、支店長から評価制度の背景を聞いたり、本社人事の知り合いと意見交換など行いながら、自分なりに評価制度の改善ポイントをまとめ、人事に提出しました。

 

Aさんは自分の回りに生じる問題を、自分が主体的に解決すべき問題ととらえています。

だから問題を放置せず、自分なら何ができるかを突き詰めて行動しました。

 

野党社員

 
一方、同じ環境下にいるBさんは、「支店が問題だらけだから自分達社員は成果が出せないんだ」という思考になっていました。

彼は野党社員と言えます。
 

Bさんがとった行動
 

■ ランチ時や喫煙ルームなどで営業担当者が集まるたびに、不満をもらしました。

「うちの商品じゃ売れないよね。そもそもあんな高いノルマ無理でしょ・・・」

「評価制度も形だけだし、インセンティブ制度も不公平だし、これじゃ士気あがらないよね・・」

「本社は全然現場分かってないくせに数字ばかり要求するし・・・」
 

■ 周囲にいる別の野党社員も「そうそう!」と共感し、お互いに不満を吐き出すことで、何となくスッキリしています。

■ 彼らは3ヶ月後も全く同じ不平不満を言っていました。

 

野党社員が増える理由

会社の不満

 

例えば、創業間もない5人のベンチャー企業を想像してみてください。

恐らくその5人の中に野党社員はいないはずです。
 

皆が自分は会社の主役と思い、やれることは何でもやろう!という情熱をもって仕事に取り組むので、全員が与党社員の状態です。

5人が会社全体の事を考え、お互い密なコミュニケーションをとり、社長も社員も同じチームとして動く高揚感、躍動感があるはずです。
 

さて、その会社が発展して100名になったらどうでしょうか?
初期メンバー5人と同じように、100人全員が与党社員でいられるでしょうか?

おそらく無理でしょう。どんな会社でも、社員が増えれば野党社員が出てくるものです。 
 

会社の発展と共に野党社員が増えるのには相応の理由があります。
 

会社の発展と共に野党社員が増える理由

■ 社長と現場の距離が開き、会社の方向性が見えづらい

■ 会社の全体が見えず、部分の担当になってしまう

■ 他部署が何をやっているか見えず、横の連携意識が弱まる

■ 人間関係が密でなくなり、帰属感が薄れる

■ 本音でじっくり対話する時間を持っていない

■ 上司のサポート、会社のサポートがない(何事も孤軍奮闘感が強い)

■ 上司が部下に仕事を任せたり創意工夫をさせない(行き過ぎた上位下達)

■ 自分が認められていないという疎外感

 

このような理由が複数重なると、自分が動いても無駄、自分では動かせない、と感じてしまいます。

その結果「誰かが解決してくれるだろう」という他社依存思考になり、野党社員になってしまうのです。

 

会社の成長と野党社員の増加は比例する?

 
 
会社が大きくなると、個人1人1人の貢献密度が下がりがちです。

5人の会社は1人当たりの役割が単純平均で20%ありますが、100人の会社では1人当たり1%しかありません。

もちろん会社が発展した上での100人なので、5人の時代より全体の仕事が増え、1人1人に十分な仕事量があるはずですが、

5人時代にいた社員の意識としては、どうしても薄まる感覚になることが避けられません。
 

会社を大きくするためには、誰が来ても会社の運営が回る仕組みを作り、個の属人性に依存しないことが必要です。
 

一方で、人の当事者意識は、属人性も含めて自分らしさを発揮できるからこそ高まる側面があるので、仕組みが整って自分らしさを発揮ができなくなるにつれ、野党化しやすくなります。
 

では「会社の成長」と「与党社員の減少」というトレードオフにどう立ち向かったらよいでしょうか?

 

野党社員を増やさない方法

 
どんな環境においても与党社員的に動ける人は“逸材”ですが、そのような人は滅多にいません。

多くの人は環境次第で与党側にも野党側にも成り得るので、与党社員を増やす打ち手をうてば、1人でも多く与党社員に転換させるきっかけを作れます。
 

会社が大きくなっても、社員が与党側の意識を持って働く鍵

それは「情報流通の仕組み」「対話/コミュニケーションの場」「上司の教育」です。

 

 

情報流通の仕組み

 
情報発信

社長の考え、会社の方針、経営の動きを全社員に知ってもらいます。

直接語り掛ける機会、社内報や社内掲示版などを活用した情報発信などを通じて、会社全体の動きを理解してもらいます。
 

相互情報共有

大きくなると皆が自分の部署のことばかり考え、他部署への協力、配慮、連携が弱くなります。

必要な部署同士の連絡会、関係者の共有スレッドによるチャット、社内報や掲示板の活用、部署責任者同士のコミュニケーションなどを工夫することで、相互に関心をもち、社員の視野が広がります。
 

意見を発信できる仕組み

現場の社員1人1人の意見やアイディアをつぶさない仕組みも有効です。

「自分の上司に言っても何もしてくれない」などと思っている社員もいます。

社員が直接経営陣や関係部署に意見発信できる仕組みを作り、その意見を放置せず、きちんと拾い上げる流れを整えましょう。
 

 

対話/コミュニケーションの場

 
コミュニケーションがしやすくなる仕組み

在宅勤務メインの会社が週に1回オフィスに集まると、お互いのコミュケーションが超活発化します。

普段相談できないことを相談したり、顔を会わせることで思いついたり、対話を通じて新たな気づきをもらったり、話すことで仲間の大切さや安心感を感じたり、大いに効果が出るものです。

それと同じで、在宅か否かにかかわらず、社員同士が顔を会わせコミュニケーションを深める場は不可欠です。

日常業務に埋没していると、隣の人ともじっくり会話せずに過ぎ去ってしまうので、あえて時間を決めてそういう場を確保することが大事です。

週1回のオフサイトミーティング、ランチタイムの活用、1on1、職場イベントなど、さまざまに考えられます。
 

 

他部署との繋がり強化

先ほどの事例のように、営業支店担当者が会社の評価制度に不満を持っていても、直接本社人事に公式ルートで連絡する人は稀です。

ところが、もし本社人事の担当者と職場イベントを通じて関係性ができているならば、本社人事の考え方を尋ねたり、なぜそのような問題が起きているかの理由なども聞くことができます。事実背景を知れば、営業支店担当者としての自分ができることを考えつくかもしれません。

他部署の人とつながる意義は非常に大きいものがあります。

 

上司の教育

 
自分の部下を与党社員にするか、野党社員にするかは、上司の接し方も大いに関係します。
 

■ もし上司自らが野党社員的に振る舞っていたら、部下もそれに同調してしまうでしょう。

■ 部下の問題提起を捻りつぶしたり、耳を傾けなければ、部下は建設的な意見を言うのを諦めてしまうでしょう。

■ 新しく入ってきた社員を放っぽらかしたら、孤独感を感じ、入社時の前向きな気持ちが徐々に減退してしまうかもしれません。

■ 部下に命令を押し付けるばかりで、部下自身に創意工夫させる習慣をつけなければ、完全受け身の社員を作ってしまいかねません。

部下の頑張る姿勢をしっかりと見て、認めてあげることも部下にとって不可欠な栄養素です。

このように上司たちが「上司としてのあるべき姿勢」で振る舞うことができるよう、教育していくことも重要です。

 

上司達に指導するポイントは
 

・部下との信頼関係の構築

・部下を認め、受け入れる

・じっくり話す場をもち、耳を傾ける

・サポートする

・自ら考えさせ、成長を促す
 

これらを継続する過程で、部下の意識を与党社員側に導いていきましょう。

 

まとめ

 
会社の中には「与党社員」の意識で主体的に問題解決に取り組む人と「野党社員」のスタンスで問題の指摘をするばかりで自ら動かない人がいます。

会社が成長して規模が大きくなれば自ずと野党社員が増えやすいので、その流れに抗うべく相応の仕掛けが必要となります。

「情報流通の仕組み」を整え、「対話/コミュニケーションの場」をもち、「上司の教育」をしっかり行っていきましょう。
 

併せて会社全体のカルチャ―を「与党社員こそ格好いい」という方向に導くべく、経営理念や行動指針、経営陣の発信、人事制度、社員教育などを整えていきましょう。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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