「必ず 部下が成長する上司 」がいます。
あなたの会社にも、周囲から「●●さんのところは部下がよく育つ」と言われる、部下の育成が得意な上司がいるのではないでしょうか。
逆に「●●さんの部下はなかなか育たない」などと言われる場合もあります。
部下をうまく育てられる上司とそうでない上司の差はどこにあるのでしょうか?
今週のブログでは、部下を育てるのが得意な上司が、部下の成長を促している方法についてお伝えします。
目次
部下が成長する上司 の7つの共通点
部下が育つ上司の仕事には、本人が意識している意識していないにかかわらず、ある程度類似した7つの共通点があります。
1. ”作業”をふらない。仕事の目的を伝える
2. 問いを立て、考えさせる
3. 厳しく指導する
4. 仕事の内容を固定化しない
5. 情報開示する
6. 「テクニック」と「仕事の姿勢」の両方を教える
7. 学ぶスキルを教える
それぞれの特徴について説明します。
“作業”をふらない。仕事の目的を伝える
どんな仕事にも目的があります。
仕事の指示においては目的をしっかり伝える必要がありますが、そうなっていない場合が多くあります。
例えば、
「支店別の営業成績の資料をまとめておいて!」
「クライアントに商品Aを説明したいから、その資料を作って!」
といった曖昧な指示は、仕事の指示ではなく”作業”の指示でしかありません。
支店別営業成績の資料を作る目的が
「過去からの成績の変動を分析し、支店間比較を行い、各支店の課題が何か見極め、具体的な改善につなげること」
だとしたら、その目的をしっかりと伝え、目的に沿ったアウトプットを考えてもらうのが、この仕事の出発点です。
クライアントに商品Aを説明したい背景には、何があるのでしょうか。
・競合他社の商品と比べた商品Aの良さを分かってくれていない
→競合比較を含めた資料が必要
・商品Aがクライアントにどのような価値をもたらすか理解してもらえない
→クライアントの業務に与える影響やコストベネフィットをしっかり伝える資料が必要
どのような目的の仕事であるかを部下が理解し、自ら考えて進められれば、徐々に部下は力をつけていきます。
問いを立て、考えさせる
「これ、どうやったらいいですか?」
と部下が尋ねてきた際、上司はどうしているでしょうか。
これに対してすぐに答えを教えてしまうと、部下は「上司に聞けば答えがわかる」と考え、それが習慣になってしまいます。
これではいつまで経っても自分で考えることができるようになりません。
部下にこう聞かれた時は
「●●さんはどうやったらいいと思う?」
と質問し返してください。部下が慣れてくれば
「私はこのようにやるのがいいと思っていますが、いかがでしょうか?」
という相談が来るようになります。
少し大きな塊の問いを与えることも育成につながります。
例えば、経理担当者が
「みんな経費精算を締切日までに出してくれない・・・」
と毎月ぼやいているとしたら、
「なぜ締め切り日に出してくれないのか理由を分析し、締切日に出してもらえる方法を考え、案を出してください」
というようにミッションを与えましょう。
残業続きの社員がいたら、
「自分の業務を棚卸して、どの仕事にどの程度の時間をかけているか見える化。さらに必要な仕事/必要でない仕事に区分し、必要な仕事については効率を上げる方法を考えてみてください」
と考えさせるテーマを与えましょう。
多くの社員は日々の仕事に流され、抜本的に改善策を講じたり、上手くいかない根本原因を考えることに時間を使っていません。
しかしそのような仕事をしている限り、その部下は明日も未来も同じことをぼやき続け、問題解決の力がつきません。
惰性で流れる業務に問いを立て、改善につなげる仕事の習慣をつけてもらいましょう。
厳しく指導する
人には優しくあっても、仕事の質に対しては厳しく指導しなければ部下は育ちません。
■ 本人の能力が7であれば、8のクオリティを要求し、常に少しずつストレッチさせる。
■ 月間目標を月中20日時点で達成したとしても、それで満足させず、月末までもう一段上の目標を目指してもらう。
■ 締め切りは厳守させる。
■ 何かミスが出たら、その対処で終わらせず、この先ミスが出ない仕組みを考えさせる。
部下が自分で自分の限界を決めてしまうのは非常にもったいないことです。
部下の可能性を広げていけるよう導き、仕事の規律を守れる人材に育てていくのは上司の大切な役目です。
甘やかす上司はその瞬間は好かれます。
しかし長期的には本人のためにならず、部下の能力と将来のキャリアを潰してしまっていると言っても過言ではありません。
仕事内容を固定化しない
部下にずっと同じ仕事をさせ続けたら、次第にマンネリ化し、考えずに仕事を回すようになります。
停滞させず変化させることが大事です。
A地点までたどり着いたら、次はB地点に向けた仕事にシフトしてもらいましょう。
全ての仕事をいきなり変えてしまう必要はありませんが、1歩ずつ従来よりも高いレベルの仕事を与え、ゲームのようにステージを上げていく。
特に優秀な部下は特急電車に乗せ、ハイペースで新しい仕事や難易度の高い仕事を与えていってください。
情報開示する
上司は相対的に部下と比べて多くの情報をもっています。
かつては「情報をたくさんもっている人が偉い」という認識もありましたが、
本来は情報を知っていること自体に価値はなく、その情報を活用して会社を良くしていくことにこそ意味があります。
一部の機密情報を除けば、上司は部下にも同等の情報を与えた方が意識が変わります。
情報を多角的に見れることで部下の思考が広がり、経営に近い判断となり、アウトプットの質も高まります。
経営者がなぜ社内で最も適切な判断ができるかという理由は、最も多くの情報をもち、全体視野で決断できるからです。
他にも理由はありますが、まずは適切な情報がなければ経営者も正しい判断ができません。
経営参画意識の高い社員を育てるには、経営の情報から隔離するのではなく、
経営方針、経営者の考え、他部署で進めていることの動向、市場環境の変化などを積極的に伝えていきましょう。
「テクニック」と「仕事の姿勢」の両方を教える
上司が部下に教えることは、主に仕事を進める「テクニック」と「仕事の姿勢」の2つです。
テクニックは、「業務知識」「作業の具体的なやり方」「エクセルの効率的な使い方」といった実務に直結する技能です。
仕事の姿勢とは、「約束したことは必ず守る」「無駄な業務、効率悪い業務に気づいたら放置しない」「指示待ちではなく自ら動く」「会議では遠慮せず自分の意見を発信する」というような心がけに関わるものです。
将来活躍する人材を育てるには、テクニックだけでは限界があります。
他者の信用を得て、リーダーシップを発揮し、結果を出していくためには、それにふさわしい仕事の姿勢を持ち合わせていなければ務まりません。
一方で仕事の姿勢が立派でもテクニックが弱ければ同様に成果を出すに至りません。
どちらか一方に偏らず、両面から指導していくことで、部下の成長が促進されます。
学ぶスキルを教える
ピータードラッカーの名言があります。
「21世紀に重要視される唯一のスキルは、新しいものを学ぶスキルである。それ以外はすべて時間と共にすたれてゆく」
今の時代、この言葉に共感する人が多いのではないでしょうか。
過去の経験則で判断できないことが増え、どんな職業の人であっても、新しいものを学び続けていかない限り、自分の提供価値が陳腐化していきます。
今の上司と部下の関係が未来永劫続くことはありません。
部下から慕われる上司であっても、部下の自立を促し、1人で立って稼いでいける人間になってもらわなければ困ります。
その最大の武器が「学ぶスキル」です。
未経験の仕事に就いた時、いかにしてその仕事について学び、理解を深め、キャッチアップできるか?
これまで触れてこなかったデジタルスキルを身につけなければならなくなった時、敬遠するのではなく楽しんで習得できるか?
他人が教えてくれるのを待つのではなく自ら学べるか?
こういった変化対応力こそが「学ぶスキル」です。
「学ぶスキル」を具体的に分解すると、このようなことが関係してきます。
「学ぶスキル」の具体例
日常の情報収集や社会動向にキャッチアップする姿勢
読書習慣(書籍の選び方や効率的な読み方も含む)
効率的なリサーチ手法
人脈(相談できる人、ネットワーク)
質問力・聞く力
データを読み解く力
変化を恐れぬ姿勢
謙虚さ・素直さ など
部下の「学ぶスキル」に着目し、それらをいかに伸ばせるか?
「学ぶスキル」の向上は、会社にとっても本人にとっても、望ましい結果につながっていきます。
上司に「部下を育てよう」という気持ちはあるか?
部下が育つ上司の7つの特徴を説明しました。
さて、あなたの会社の管理職でこれらを実践できている人はどのくらいいるでしょうか?
動物の子育てを見ていると、親が子供を育てる責任が、遺伝子にプログラムされているのがよくわかります。
独り立ちできるまでの期間、親は育てる責任を全うし、その日が来ると、親は子供から完全に離れていきます。
人間の場合も、子育てへの情熱はかなり個人差があるので個別性が高いかもしれませんが、一定程度プログラムされています。
しかし、職場における部下育成は上司の遺伝子にプログラムされているものではありません。
たまたま同じ会社で上司と部下の関係になっただけの相手に対して、育成に力を注ぐか否かは相当なバラつきがあるのが実態です。
だからこそ、会社として人材育成をしっかりやってもらうには、仕掛けが必要になります。
上司には「部下の育成も仕事の一部であると分かってもらう努力」
会社全体には「上司の育成力に依存せず、会社としての成長を促す仕掛け」
このような双方のアプローチが必要です。
上司の努力
■ 部下育成について、上司に向けた教育の機会
■ 業績評価において部下育成を考課の対象とする
■ 上司の上司による指導
会社としての育成の仕掛け
■ 目標管理、評価、表彰などの仕組みで促す
■ 適切な人事異動や業務変更を促す
■ 会社全体としての情報開示
■ 研修
■ 勉強会
■ ナレッジシェアの仕組み
これらが社員たち、ひいては会社全体の成長を後押しすることにつながります。
部下が成長する上司 まとめ
会社全体の力を底上げするには、社員1人1人の成長が欠かせません。
その成長を促す最大の役目は上司にあります。
どのような上司が部下をうまく育てられるのか、また、上司に部下を育てようという意識を持ってもらうにはどうしたらいいか、さまざまな観点から部下育成の方法を深め、人材育成力の強い会社を目指していきましょう。
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