間接部門 (経理・人事・総務などのバックオフィス)は、営業や製造などフロントオフィスの仕事を後方支援する仕事です。
ご存知のように、近年はITツール等の活用によって間接部門の仕事が大きく変化しつつあります。
従来の業務の中で大きな比重を占めていた事務処理的な仕事は減り、その分、会社をより発展させていくための企画、参謀的役割が大きくなってきました。
そこで求められるのが「マーケティング力」です。
社内の各部署がどのような問題を抱え、どのようなニーズがあり、それに対してどのような施策を打ち出し、いかに伝え、アクションにつなげてもらうか?
このマーケティングのステップをやり遂げることが、今、間接部門に求められています。
今週のブログでは、会社の発展に貢献するための間接部門のマーケティング的役割についてお伝えします。
目次
間接部門 に求められる役割の変化
間接部門の仕事は大きな変化の波にあります。
最近のCMにも見られるように、これまで大変な作業だった事務処理業務を現在はITツールがアシストしています。
経理業務では、請求から支払いまで業務がペーパーレスで自動化され、仕訳入力もほぼ自動化されています。
経理部社員が行う仕事は入力や書類作成といった作業から、「データのチェック、データを活用したコスト低減提案、経営分析、経営管理の高度化」などにシフトしています。
人事業務では、入退社の書類手続きがオンライン化され、給与計算業務はほぼ自動化され、対外的な手続きもオンライン申請や書類作成の自動化により事務作業の軽減が顕著に進んでいます。
代わりに、社員の定着化に向けた取り組み、人材育成、組織開発など、社員の力を伸ばし会社の発展につなげる役割が求められています。
これは実際は今に始まったことではなく昔から経理や人事に求められていた役割ですが、実際はなかなかそこまでできていませんでした。
日々の事務作業に追われ、その対応で手いっぱいの間接部門が多かったと思います。
テクノロジーの進化によって事務作業から解放されつつある今こそ、守りの間接部門から攻めの間接部門に移行すべき時です。
間接部門 の仕事は人を動かすこと
「攻めの間接部門」は、会社をより良くするためにさまざまな改善を行っていくこととなります。
ほとんどの改善は、間接部門内で完結するのではなく、関係部署を巻き込んで行動を起こしてもらうことを必要とします。
これにはマーケティング部門と同様の企画力と実行力が求められます。
「攻めの間接部門」が実際に行動したケースをいくつか見ながら、マーケティング部門との共通点を探ってみましょう。
A社 情報システム部門主導で、メールからチャットへ移行
A社では、これまでメール中心に行っていた社内のやり取りを、チャットツールに移行することとしました。
その意思決定から導入に至るまで、情報システム部門は以下を実行しました。
- チャットツールを使いたいという現場の声があったため、各部署の社内コミュニケーション状況をヒアリング
- チャットツールの導入によりコミュニケーション効率の向上ならびに情報共有の質の向上が見込めると判断し、経営会議に提案、承認を得る
- ツールを選定し、導入計画を策定
- 「社外コミュニケーションはメール、社内コミュニケーションはチャット」というルールなど、導入に際しての決めごとや活用方法を資料としてまとめる
- 社内説明会を開催し、利用開始
- スムーズに移行できた人とそうでない人あり。チャットへ移行せずメールがメインの人がいると、結局両方を見る必要があり、業務効率が上がらない
- チャットの利用率を部署毎にグラフ化し、活用が進んでいる部署とそうでない部署を見える化
- 活用の進まない部署に話を聞きにいき、その原因を確認。各部署に「チャット導入促進担当」をおき、当該担当者と情報システム部門で連携
- 導入は進んだが、まだ社内メールに頼る人もいたため、
「●月●日をもって社内メールは終了!」と宣言
それ以降はメールを使用できないようによう強制力を発動
- チャットへの移行を完了
この事例からお分かりのように、情報システム部門がやっていることは、新商品を開発してリリースするマーケティング活動にそっくりです。
顧客の抱えている問題を探り、それを解決するためのソリューション(新商品)を考え、市場に投入
↓
投入してもすぐに売れるわけではないので、売れない原因を見つけ、対策を打っていく
↓
徐々に市場に浸透したら、さらに加速させるために、何らかのキャンペーン活動を行う
企画や開発部署が顧客の動向を見ながら仕事を進めるように、情報システム部門は社内各部署の動向を見ながら、「チャットツール導入」というプロジェクトを成功に導いていきます。
B社 人事主導で1on1ミーティングを社内に根付かせる
B社では長年にわたり目標管理を行ってきましたが、うまく機能していないという悩みがありました。
期初に目標を立てるだけで、半年後の評価まで特段のフォローをしないため、社員も自分の目標が何だったか忘れてしまうほどで、立てた意味がなくなっていました。
そこで経営陣から上司と部下の1on1を毎月実施させるよう、人事に指示がありました。
人事が行ったのは以下の活動です。
- 各部署の責任者やキーパーソンに、目標管理における現状の課題をヒアリング。1on1を実施することに対する意見も聞く
- ほとんどの部署において、上司と部下の会話が日々の業務の進め方の相談や、生じる問題の目先の対応に追われていることが判明。
「重要度高、緊急度低」の問題にほぼ手がついていないため、1on1の有効性を確認
- 1on1の実施頻度、やり方、内容等について検討し、関係者向けの説明資料を作成
- 部下のいる人達全員に、1on1勉強会を実施。
「部下と何を話したらいいのか?」と戸惑う上司が多くいたので、その後1on1事例動画を作成し、それを皆に参考にしてもらう
- 全社で1on1をスタート
- 開始から2ヶ月が経過したが、まだ全く実施していない人たちがいるので、再度必ず実施するよう呼びかける。
1on1の目的、やり方、意義についてわかりやすい資料を作成し、全社に配布。
- それでも実施しない人に、状況をヒアリング
- 実施しない人からの質問をまとめる
「業務時間内にやるのか業務時間外かどちらか?」
「部下から聞かれてもわからないことはどう答えたらいいか?」
「そもそも実施する時間がない。業務を止めてでも1on1をやらなければ駄目か?」
それぞれの論点に対して、会社としての見解をまとめてリリース
- 3ヶ月経過した時点でほとんどの部署が1on1を実施するようになる。
最初から徹底して実施してきたX部門の1on1実施後の職場の変化について取材し、その内容を社内報で配信
先ほどの情報システム部門同様に、現状調査に始まり、(顧客である)各部署への発信、伝わるコンテンツの作成、実施状況のチェック、実施しない部署への個別対応、利用を加速させるための仕掛けなど、やっていることはマーケティング活動そのものと言えます。
この2つの事例を通じて、間接部門が全社を動かすマーケティング活動のイメージが湧いたでしょうか。
マーケティング発想のない 間接部門 はどうなる?
間接部門は営業部門などから文句を言われることがあります。
「現場がわかってない」「官僚的」「事務的」「命令口調で偉そう」などなど。
間接部門がこのように言われてしまう原因には以下のような状況が関係しています。
間接部門 に寄せられる不満とその原因
■ 現場に行くことが少なく、現場の温度感が分かっていない
=①市場調査不足
■ 現場が分かっていないまま考える企画なので、実態がずれてしまう
=②顧客の声を踏まえない1人よがりの企画
■ 何か新しいことをする時に現場への説明が足りない
=③告知のコミュニケーションが不足
■ 説明資料が非常にわかりづらく、何をいいたいのかわからない
=④販促ツールや商品パンフレットに相当する説明資料が読み手目線になっておらず分かりづらい。宣伝コピーの検討不足
■ 伝達メール等が一方的で、現場の状況を聞いてくれない
=⑤相手が顧客という意識が足りない。顧客との双方向コミュニケーションが成り立っていない
①~⑤はマーケティングにおいても重要な要素ですが、間接部門もこれらを意識することで仕事のスタンスが変わり、社内各部署に対して価値の高い仕事ができるはずです。
まとめ
近年のITツールの活用加速により、間接部門の仕事が事務処理中心の部門から経営参謀的な企画・推進部門に変わってきました。
長らく間接部門に関わっていた人はこの変化になかなかついてこれないかもしれません。
「間接部門=業務を受けとって処理をする部門、事務業務をミスなくこなす部門」と認識している人がまだまだ存在します。
しかし、従来のそのような事務処理発想では経営から求められるニーズに応えられず、やがて社内で担当する仕事がなくなってしまうかもしれません。
まずは基本的なところからで構いませんので、
現場に足を運び、現場の人と話をする
企画を立てる前に現状をしっかり把握する
伝達などコミュニケーションの手段と伝え方をとことん練る
伝えて終わりではなく現場が変わるまでが自分の役割と認識する
このようなことから始めてみましょう。
日々の仕事を一つずつ変え、社内各部署という顧客目線を持つことでマーケティング発想が身につき、よりよい仕事につながっていきます。
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