【 経営者の悩み 】 古参幹部 をどう処遇する?会社の成長に応じた正しい人事処遇を

2022.11.11

企業が成長していく過程で必ず直面する問題が、 古参幹部 の人事 です。

 
創業間もない頃から成長を支えてきた幹部たちですが

彼らの成長が会社の成長スピードに追いつかず、次第に会社の足を引っ張る存在になることがあります。

 
これまで会社の成長を支えた幹部なので、社長にとっても信頼が厚く感謝している人物です。

であるからこそ、その人材が成長のボトルネックになった時、社長は「彼らをいつまでも幹部ポジションにおいていてよいのか?」という悩みに直面するのです。
 

今週のブログは、成長の限界が見えてきた古参幹部をどのように処遇していくべきかというテーマでお伝えします。

 

古参幹部 が会社の成長についていけなくなる理由

古参幹部

 

成長企業が必ず直面する問題に「古参幹部が昔の成功体験に引きずられ、変化を妨げる存在になる」という現象があります。

成長企業で、この問題が起きない会社はないといっても過言ではありません。
  

古参幹部がついていけない理由は大きく4つあります。

 

①何でも屋から専門スキルへの転換ができない

 
創業からある段階までは社員の仕事の幅が広く、特定分野の専門性よりもユーティリティプレイヤーとしての幅の広さが求められます。

しかし会社が成長してくると、1つの機能においてより高度な専門性が求められるので、創業時からの幹部も自らの専門性を高めていく必要があります。

その変化に出遅れると能力の発揮しどころが減ってしまいます。

 

②強すぎる成功体験から脱却できない

 
会社が大きくなる過程を中核的存在としてリアルに体験しているので、その成功体験は非常に確固たるものとなります。

しかしその成功体験だけで未来も経営していけるわけではありません。
 

少数の強い個が引っ張る経営から、組織として戦う経営に転換していく必要があります。

営業であれば、顧客との関係も各担当営業が顧客とどっぷり深くつながり支援するスタイルから、より効率的なタッチポイントを作るやり方に変化していくなど、従来のやり方から次々変化させていかねばなりません。

成長ステージに応じたマネジメントのやり方に進化しないと、部下から「時代遅れの上司」とみられてしまうでしょう。
 

 

③部下との関係性の変化についていけない

 
創業間もない時期からの幹部は社内において絶対的な存在です。

社長からの信頼が厚く、社員の誰もがその幹部をよく知っています。その幹部が右と言えば社員は右に向くような関係性でした。

しかし会社の成長とともに中途採用で優秀な人材が入ってきたり、新卒で入社する社員のレベルも上がってきます。
 

外部から来た優秀人材は、古参幹部のやり方に異を唱えることもあるでしょう。

そうして、従前のように「自分が言えば皆が従う」という関係ではなくなってきます。

色々な人材が入ってきて、優秀な人材も増えてきたならば、古参幹部は部下との関係の作り方や仕事の指示の仕方、コミュニケーションスタイル、風土醸成などを徐々に変容させていかねばなりません。

 

④プライドや恐れが邪魔をする

 
上記①~③の問題について薄々感じているものの、プライドや変化への恐れが邪魔をして変われない人もいます。

自分のスタイルを変えるというのは勇気を伴うことです。

本当に変われるかどうか自信を持てないこともあるので、できれば変わらず従前のスタイルのままで延命させがちです。
 

社内におけるステイタスが高くプライドも高くなっている人の場合、それが崩れる恐れがゆえに、会社の変化を邪魔することすらあります。

 

変化に対応できる 古参幹部 はどんな人か?

 
継続的に成長している会社において、創業間もない時からの古参幹部が10年~15年程度経っても会社の成長についていけてるケースは多くありません。

会社の新しいステージに応じた自己変革ができず、部下の重しになってしまったり、変化を否定する存在になりがちです。
 

一方で、古参幹部でありながら、新しいステージに対応してどんどん成長していく人もいます。

そういう人達に共通しているのは、これらの点です。
 

  • よく学ぶ
     
  • 自分のポジションとか権威より、仕事のクオリティや会社の成長に関心が高い
     
  • 過去の成功要因を客観的に分析できる
     
  • 偉ぶらない。誰とでもフラットに話ができる
     
  • 社長に対して「イエス サー!」ではなく、きちんと自分の意見を伝えられる
     
  • 部下や後輩を育てられる など

 

古参幹部 が今後も通用するか否かのシンプルな見分け方

 
古参幹部を今後も要職においたままでよいか見分ける簡単な方法があります。
 

見分け方1:他の会社でも通用するか 

 
最もわかりやすいのは、その古参幹部が仮に転職しようとした時に、同じ年収で採用する会社があるか?ということです。
 

 

もしそういう会社がないとしたら、能力的にかなり限界がきていることの証明です。

何の人間関係も築けてない別の会社で力を発揮するには、相応のマネジメント力、人間関係構築力、リーダーシップなどが求められます。

第三者の会社から認められないとしたら、今の会社での活躍も難しいでしょう。
 

仮に、中途採用で外から入ってきた人が入社後半年~1年経って古参幹部と同等水準のパフォーマンスを発揮するとしたら、外から来た人材の方が古参幹部より遥かに優秀な人材でしょう。

社内の信頼、人間関係、業務知識を元から持っている古参幹部に対して、外から入ってきた人が1年でキャッチアップできるとしたら、その人材は非常に有望であり、古参幹部に取って変わるべき人材とも言えるでしょう。

 

見分け方2:成長カーブがどうなっているか 

 
もう1つの視点は成長カーブです。

社長から見て、古参幹部の総合的な仕事の能力は右肩上がりでしょうか?
 

 

そのカーブの角度はどの程度でしょうか? それとも上がらずに横這いでしょうか?

また、古参幹部の部下で優秀な人材の成長カーブはいかがでしょう。

現時点では優秀な部下より古参幹部の方が実力値は上かもしれませんが、成長カーブを比べると部下の方が明らかに右肩上がりだとしたら?

あっという間に力は逆転するでしょう。
 

成長カーブが一度横這いになったら、再度右肩上がりに戻すことは容易ではありません。

古参幹部をその要職にいつまで就けておいてよいか、冷静に見極める必要があります。

 

古参幹部 の処遇

 

古参幹部の処遇を決められるのは、長らく一緒にやってきた社長しかいません。

登用するのもその任務から外すのも、社長が本人と腹を割って話すしか方法はありません。

もし将来的に会社の成長を担う力がないと判断したならば、早いタイミングで幹部の役割から下りてもらう決断が必要です。
 

社長がそれに気づく頃には、本人も既に薄々気づいているのが普通です。

人によっては自ら下りた方がいいと自覚し、社長にそう言われるのを待っています。

人によっては何としても抵抗してでもしがみつこうとします。
 

いずれの場合であっても社長が本人のため、会社のためを深く考えた上で、悩んだ本音をぶつけてください。

 

古参幹部 の降格 伝え方と処遇は慎重に

 
幹部の任から下りてもらう場合であっても、いきなり告げるのではなく、できるだけ早い段階で本人の問題点やどこを改善して欲しいかを明確に伝えてください。

それが改善されなければ、いずれかのタイミングでポジション変更することも伝えておきましょう。
 

いざ実際にポジションを落とす時は、決して会社を辞めてもらうとかではなく、本人の強みが活かせる新たな仕事を与えてください。

同じ部署に残るとややこしくなるので、全く別の部署に異動させた方がいいでしょう。

これまでやってきた仕事に中途半端に口出しできるポジションにおいてしまうと、新任幹部も社員も皆やりづらくなります。

お互いのためにも、異動して新たなスタートを切ってもらいましょう。
 

 

待遇が変わる(下がる)場合、いきなり給料を落とすことは避け、段階的に下げていくのが賢明です。

「将来的に自己改善すれば敗者復活もありえる」ということも伝えましょう。
 

古参幹部をどう処遇するかは社員たちも注目しています。

過去に貢献してくれた人を大事にする会社の姿勢は、他の社員にも安心感と温かみを感じさせ、士気を下げることなく対処することが可能です。

 

古参幹部 の処遇 まとめ

 
会社が成長するにつれ、創業時から支えてきた古参幹部が通用しなくなることがあります。

その人材に今後の会社の成長を託せるか否か、本人の仕事のスタイルやマインド面含めて、じっくり検証してみてください。
 

並行して、外部人材の登用や社内からの抜擢も考える必要があります。

もし幹部の役割から外すと判断したならば、本人とじっくり話す場をもち、本人の気持ちにも十分配慮した処遇、配置転換などを行いましょう。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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