どんな場面でも「 受け身の人 」は仕事で成長できません。
20代の時にコンサルティング会社に勤務していた頃の話です。
ある大手企業と打合せをすると、毎回15名ほどの人たちがテーブルの向こう側にずらっと並んでいました。(こちらは2人です。)
テーブル対面の真ん中に全体責任者の取締役がおられるものの、他の人は発言もほぼなく、何の役割や責任のもとにその会議に参加しているのかがこちらからは見えませんでした。
人材育成において、このような状況は理想的とは言えません。
どんな仕事に関わる時も「自分自身がそこに関わる目的は何か?」「自分の役割は何か?」「自分は何の責任をもっているか?」これらを考えることが大事です。
「何となく会議に参加する」「何となくプロジェクトに関与する」というフワフワした仕事の仕方をしている人には成長の機会は訪れません。
今週のブログでは、人材が主体性をもって成長する仕事の分担のあり方についてお伝えします。
目次
複数名で同じ仕事をする時の落とし穴
複数名で仕事を進める場合、お互い依存し合ったり、責任のない関わり方をする人が出たりします。
この問題が発生する要員と対処方法について具体的な場面例で説明します。
同じ仕事を複数のメンバーで担当する際の失敗例
営業の部署で「ぐちゃぐちゃになっている顧客情報リストを1ケ月かけて整理する」という仕事に、部長からAさん、Bさん、Cさんが指名されました。
この「3人で同じ仕事を担当する」というのがとても曲者です。
もし3人並列のまま取り組んだらどうなるでしょうか?
まず、3人はなんとなく打ち合わせをしてこのように決めました。
Aさん 関東以東の顧客リスト整理
Bさん 名古屋以西の顧客リスト整理
Cさん 新しい顧客情報リストのフォーマットを考える
1週間が経過して進捗確認すると、AさんとBさんのやり方が全然違い、整理の仕方が統一されていません。
Cさんは通常業務が多忙との理由でほとんど進んでいません。
AさんとBさんはCさんの忙しさに同情し、何となくそのままになりました。
さらに1週間が経つと、Bさんも業務が忙しくて進んでないと言い出し、Aさんだけがポツンとひとりで進める状態になってしまいました。
お互いに話をするのも気まずくなり、結局この業務は頓挫してしまいます。
部長も投げたきりだったので、1ヶ月が経ってからようやくこの業務が全く進んでいないことに気づきました。
この例は少々お粗末かもしれませんが、実際にこれに近いことが多くの会社で起きています。
小さな仕事も責任を明確に!
上記の例では、スタート時点でどのようにすべきだったでしょうか?
「3人で担当」とだけ言われると「3人が並列」のままになってしまいますが、仕事には必ず責任者が必要です。
よって、まずは「Aさん、Bさん、Cさん」の中から責任者を決めます。
次に、責任者が仕事のゴールと目標期限を設定し、それをどのように業務分担するかを3人で話し合って決めます。
3人それぞれの業務内容と期限についても明確に定めます。
Aさん 関東以東の顧客リスト整理(○月○日まで)
Bさん 名古屋以西の顧客リスト整理(○月○日まで)
Cさん 新しい顧客情報リストのフォーマットを考える(○月○日まで)
Aさんが責任者になったとしたら、その後業務を進めていく中で仮にCさんの進捗が遅れている場合、Cさんに期限までの提出を催促します。
CさんはCさんで明確な責任を背負っている以上、Aさんに催促されることなく、自らの責任で進めなければなりません。
万が一時間がなくてできないのであれば、責任者であるAさんに早めに連絡して、代替手段を話し合わなければなりません。
そのようなアラートを出すことなく、期限が来てから「できていません」という無責任な仕事の仕方は絶対にさせてはなりません。
まとめると4人の関係者それぞれに次のような責任と役割関係がチームとして存在します。
部長
今回の責任者のAさんが本業務を遂行できるまで指導、支援する責任
Aさん(責任者)
①新顧客情報リストを期日までに完成させる責任
②関東以東の顧客リスト整理を期日までに完了させる責任
③部長に自ら進捗報告する責任
Bさん
①名古屋以西の顧客リスト整理を期日までに完了させる責任
②Aさんに自ら進捗報告する責任
③責任者のAさんを支えて業務全体が上手く進むようにする役割
Cさん
①顧客情報リストの新フォーマットを期日までに完了させる責任
②Aさんに自ら進捗報告する責任
③責任者のAさんを支えて業務全体が上手く進むようにする役割
部長から担当3人にいたる責任と役割をこのように明確にするとメリットがあります。
BさんとCさんには「②Aさんに自ら進捗報告する責任」があります。
自分が責任者でないからといって受け身で待ちの姿勢では仕事が進みません。
自らの担当業務は自ら責任をもって進捗管理してもらいます。
BさんとCさんの「③責任者のAさんを支えて業務全体が上手く進むようにする役割」も非常に大事です。
チームで仕事をする際は、メンバーはリーダーに依存してはいけません。
リーダーが職責を全うできるよう協力するフォロワーシップが求められるので、それも明確にしています。
※フォロワーシップについてはこちらのブログをご覧ください。
上司部下の分担においても部下に責任を持たせよう
上司と部下の2人で仕事を進める場合も同じことが言えます。
「上司が責任をもち、部下は上司に言われたことをやる」だけでは、部下は成長がありません。
上司と部下で仕事を進める際の失敗例
重要ターゲット企業X社の開拓を進めている営業部の上司Dさんと部下Eさん。
当該ターゲットを顧客にする総責任はDさんにあります。
もしこの場合に「全てを上司のDさんが考え、都度都度思いついた仕事を部下のEさんに振る」というスタイルだとしたらどうなるでしょうか?
Dさん
「今日はX社の会社概要や業績をまとめておいてください」
「今日はX社と当社の過去の関わりについてまとめてください」
「今週X社に商談に行くから、営業用資料を●部印刷してください」
Eさん
「わかりました!」
このような感じで常にその時思いついた仕事をEさんに依頼していると、Eさんは主体的に動く必要がなく、ただDさんからの指示を待ち、それをこなせば任務完了という意識になってしまうでしょう。
仕事の全体観をとらえる必要もなく、目先の業務をやるだけで終わっています。
新人であればそれでも構いませんが、もし2年目や3年目の社員がこんな仕事の仕方をしていたら、将来使い物にならなくなってしまうでしょう。
部下が育つ「仕事の与え方」
ではDさんはEさんにどのように業務を与えたらいいでしょうか?
①業務を整理する
まず本業務開始時に、X社開拓に向けて進めるべき業務の一覧、スケジュール、ゴールを話し合います。
②それぞれの責任を決める
その後、業務一覧のうち、DさんとEさんが主体的に責任をもって進めることをそれぞれ明確に決め、期限や成果イメージも共有しておきます。
③定期的に打ち合わせをする
2人で定期的に打合せし、進捗の共有や困った事の相談などを行いながら、お互いパートナーのように進めていきます。
もちろんEさんはまだ経験が足りないのでDさんに頼る部分も大きいですが、それでもEさんに責任業務をしっかり受け持ってもらうことに意味があります。
Dさん
「”X社の競合調査” ”X社の業績動向調査” ”提案資料の自社紹介部分の作成”はEさんの責任業務としましょう」
このように、Eさんに主体的に取り組んでもらいながら必要に応じてDさんが指導・支援するというのが望ましい形です。
Eさんは自分の責任領域について自ら考えて期限までに進めていくことになるので、主体性、業務設計力、業務完遂力などが磨かれます。
「指示を受けてこなしていくだけ」では得られない能力が確実に身につくでしょう。
まとめ 受け身の人 をつくらない組織へ
どこの会社、どこの部署においてもやるべきタスクが山積していますが各々のタスクの責任者が曖昧だとなかなか前に進みません。
もしくは、担当者が何となく決まっているものの、当該担当者間で誰が責任者なのか・いつまでに何をやるかという部分が曖昧であるため、お互いお見合い状態のままで止まってしまっているケースもあります。
会社の中で役職が上がっていくということは、責任範囲が広がっていくことと同義です。
他人に判断を仰げば決めてくれる担当者時代の時とは背負う重みが全く異なり、意思決定の怖さに戸惑うこともあるでしょう。
その責務に耐えられる人材を育てるためには、一担当者時代から自分の仕事に責任を持って対峙し、することです。
最初は小さな範囲でも簡単な仕事でも全然構いません。
他人任せではなく、自ら主体的に責任をもって仕事をやり遂げる経験が大事です。
1つ目の小さな仕事を完遂できた人は、次は少し大きな仕事にチャレンジできます。
その仕事のやり抜けば、さらに大きな仕事、というように、これを繰り返していく中で、人は高難度業務においてもビビることなく、責任をもって主体的に取り組める人材に育っていくのです。
何となくの仕事の分担、各々の責任が見えない仕事のやり方がされていないか、社内をよく点検してみてください。
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