「最近何となく職場の雰囲気が悪いんだよねえ・・」というご相談を受けることがあります。
私:「何か思いつく原因はありますか?」
お客様:「それが原因がはっきりしないんです。確かに業績が今一つ伸びない停滞感はありますが、特段問題が起きたわけでもないですし」
私:「いつ頃からですか?」
お客様:「今思えば、半年前位から徐々にそうなってきている気はします。最近特に強く感じるようになりました」
こんな時はどんな手を打ってよいかわからないものです。
しかし、このような状態の会社にはある共通した問題があるのです。
なぜ職場の雰囲気は悪くなるか?
「雰囲気」というのは非常に曖昧な言葉ですよね。
人によって感じ方も異なります。
そんな時、聞くべきは前向きで感度の高い社員の声。
感度の高い社員が「最近会社の雰囲気が悪い気がします」と言い出した時は要注意です。
何か明らかな理由があれば別です。
例えば、離職者が相次いでいるとか、要職の人同士が対立しているとか、業績がひどく悪化しているとか。
その理由をひも解いて、きちんと段階的に解決していくしかありません。
難しいのは、明らかな理由がない場合です。
感度の高い社員が雰囲気が悪いと感じたのは何か理由があるはずで、それを掘り下げていくと、実は次のような症状が表面化している場合が多いです。
- 社員の遅刻や早退など勤怠の乱れ
- 以前より社員同士の会話や冗談などが減った
- 隅っこでヒソヒソ話している社員がいる
- 会議等での発言が減った
- 挨拶の声が小さくなったり、挨拶の時に目を見なくなる
では、上記のような症状が表面化するのはなぜだと思いますか?
例えば考えられるのは、
- 権限ある特定の上司のひどい振る舞い
- 経営陣や上司への信頼の低下
- 社員同士の信頼関係の弱体化
- 会社の制度や仕組みへの信頼の低下
- 過酷な業務量、顧客からの過剰な要求やクレーム
- 上記の理由などにより、意欲の減退した社員、転職を考える社員が増えた
このように、職場の雰囲気が悪化したと感じる原因をたどっていくと、問題の根は結構深い。
会社として深刻な問題に行き着く場合が多いです。
職場の雰囲気が悪化する根本的な要因
先ほど、職場の雰囲気が悪化する原因を幾つかあげましたが、更にその根本にある要因は何だと思いますか?
一言でいうなら、“矛盾”です。
企業は人材の力を結集して何らかの商品やサービスをお客様に届け、お客様の役に立つ存在。
そして企業活動を通じて利益を出さねばなりません。
利益を出すためにどの企業も必死に頑張っています。
ところが必死になる過程で、企業は多くの矛盾を抱え込んでしまいます。
では企業が抱える矛盾とはどのようなものでしょうか?
幾つかありがちなものを列記してみます。
■ 理念矛盾
・「社員を大事にする」と理念で掲げているのに、顧客からの不当な要求を社員に我慢させる
・「お客様の美と健康のために」という宣伝文句を使っているのに、体に害のある健康食品を売っている
■ 採用矛盾
・「当社の仕事はやりがいがある! 成長できる!」と聞いて入社したのに、入ってみたら単純作業をやっている社員ばかり
・「上下関係なくコミュニケーションがフランク」と聞いて入社したのに、やたら威張っている上司が何人もいる
■ 経営の言行不一致
・「実力主義」を標榜していながら、業績評価で何を評価されているかわからない
・「何でも言える会社」を標榜していながら、社長に意見するとすぐに否定される
■ 組織矛盾
・若手が正しい意見をいっても、社長は古参幹部の意見ばかり取り入れる
・ハードワークを求められるのに、幹部はぬくぬく仕事している
・上司が尊敬できない。成果を横取りされる
などなど。
私は会社は”矛盾のデパート”だと思っています。
それを否定するつもりは全くありません。
全て綺麗に理念通り、社長の発言通りいかないことだって沢山あります。
お互い人間同士、色んな問題も引き起こします。
しかし、雰囲気のいい会社と悪い会社には決定的な違いがあります。
いい会社では、トップが矛盾を認め、矛盾に向き合い、1つずつ解消していこうと努力しています。
悪い会社では、トップが矛盾に気づかないもしくは気づかないふりをして、改善しようとしません。
この姿勢の差が非常に大きいと思います。
社員の殆どは会社に矛盾があること自体を批判したりはしません。
ただし、その矛盾を解消すべく、正面から向き合って欲しいと願います。
1歩ずつ矛盾が解消されていく姿を見たいと思っています。
矛盾が減るどころか逆にどんどん増えていく会社では、社員の心のバランスが崩れ始め、心が徐々に離れ、そのマインドが職場の雰囲気の悪さにつながっているのです。
職場の雰囲気を阻害する”矛盾”を解決する方法
会社にはびこる矛盾をどう解決するかは大変頭の痛い問題です。
しかも一発で解消できる方法は残念ながらありません。
例えば、良い業績が出たら決算賞与をドンと出せば士気が上がるのではないか、と考えたくなるものです。
しかし現実はそうはなりません。一時的に皆喜んでくれますが、すぐまた元通りです。
私もかつて経営していた会社で業績が良くなり社員に還元もしたので、来期はもっと頑張ってくれるだろうと期待したことがありましたが、良い雰囲気は長続きしませんでした。
単発のカンフル剤の効果など大した力がありません。
社員が会社で働く魅力を着実に高めていかない限り、人の心は離れやすいと身をもって感じました。
会社が目指すべき高みに向けて、それを阻害する矛盾を粘り強く着実に取り除いていく。
根気強く矛盾をなくしていくと、会社の個性や長所がクリアになります。社員の迷いや不満も減っていくはずです。
今の時代、物やお金で人心掌握することは非常に難しいですよね。
社員があなたの会社で迷わず頑張る理由が必要です。
うちの会社で格好いいヤツとは?
最後にある本をご紹介します。
糸井重里さんが創業された株式会社ほぼ日に関する「すいません、ほぼ日の経営」という本です。
その中にこんな内容が書かれていました。
『企業の風土を決めるのは何が格好いいかということです。
ほぼ日の場合の格好いいは「人がうらやましがるようなアイディアを出して、実行する」ことです。』
この表現はとてもいいなあ、上手いなあと思いました。
企業理念とかビジョンとか色々あるけど、要は「うちの会社では〇〇なヤツが格好いい」という価値観は会社の進むべき方向性や社員に求める姿を明確にあらわしています。
『ほぼ日』の場合、「人がうらやましがるようなアイディアを出して、実行するヤツが格好いい」という前提にもとづいて、人事制度、働き方、様々なルールや文化が決まっているそうです。
言い方を変えると、「人がうらやましがるようなアイディアを出して、実行するヤツが格好いい」という価値観に矛盾しないよう会社を作っています。
その価値観に賛同する人材が集まり、その人材が格好よくなれるよう会社が存在する。
だからこそ、その人材は『ほぼ日』で働く意味、そこで頑張る理由があるのだと思います。
あなたの会社において格好いいヤツとはどんな存在でしょうか。
格好いいヤツが力を発揮しやすい会社になっているでしょうか。
色々と考えさせられるいい本でした。
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