企業研修を実施する際に、その 研修参加者 を誰にすべきかという問題が議論されることがあります。
例えば「次世代幹部研修」というものを企画した場合、実際の研修に参加してもらうメンバーを選ぶ段階になって、誰を対象者にするか、その選定に迷ってしまう・・・ということです。
今週のブログでは、研修に参加してもらうメンバーを選ぶ際の考え方についてお伝えします。
研修参加メンバーの選び方
研修メンバーを選ぶためには、研修の目的に応じたターゲットを念頭におきつつ、研修の効果、コスト、運営効率などを考える必要があります。
以下、研修の種別に応じたそれぞれの選び方のコツをお伝えします。
階層別研修のメンバー選定方法
ex. 新任管理者研修
これは対象がはっきりしているので、選定に迷う必要がありませんね。
言葉通り「初めて管理職になる人」は全員対象者になります。
ただし、少し常識を疑ってみる必要はあります。
日本の多くの企業では
1. 管理職登用を決定 2. 実際に管理職に登用された人を対象に研修を行う
という場合が多いですが、その順序が異なるケースもあります。
それは
1. 管理職候補者に対して研修を行う 2. 研修後に習得度テストを実施し合格した人だけ管理職に登用する
というスタイルです。
つまり「管理職の基礎スキルをつけない限り管理職には登用しない」という考え方です。
一長一短ありますが、どちらが自社に適しているか考えてみてください。
ex. 新入社員研修、入社2年目研修
これらは対象者がはっきりしているので、参加メンバーに迷うことはありませんね。
「新入社員研修」は新入社員に会社の業務や文化に慣れるための基礎的な知識やスキルを身につけさせ、「入社2年目研修」は入社2年目の社員に対して更なる成長を促すものです。
ex.マネジメント研修
自社の管理職のマネジメントスキルを高めるために行うものです。
この場合、マネジメントを行っている人なら全て対象範囲に入るので、部長クラス、課長クラス、係長クラスなど広く研修参加候補者がいます。
さて、このように対象者層の人数が多い場合、参加メンバーをどのように選んだらいいでしょうか。
マネジメント研修のメンバー選定方法 (1) 役職で区切る
部長・課長のみ参加というように役職で限定したり、部長だけで1クラス、課長クラスでもう1クラスと分けて進めるのもありです。
この場合のメリットは、
参加メンバー選定が楽、同じ役職なので参加者同士の悩みが近く議論が噛み合う という点です。
ただし各人のマネジメントスキルにばらつきがあるため、研修を進める上で支障をきたす可能性があります。
マネジメント研修のメンバー選定方法 (2) スキルレベルで選定する
参加候補者(部長、課長、係長クラス)をマネジメントスキルのレベルに応じて選定する方法です。
もし初中級レベルのマネジメント研修を企画しているのであれば、初中級者のみを参加対象とします。
この場合のメリットは参加者同士のレベルが近いので、研修カリキュラムを対象者の課題にフォーカスしたものにできることです。
ただし、ここでも「初中級者をどのような基準で見極めるか」が悩みどころです。
分け方によっては社員に不満が生じる可能性があるため慎重に判断する必要がありますが、事前にアセスメントを行ったり、外部の第三者が面談してスキルを見極める、など方法は色々と考えられます。
おすすめは、本人にエントリーしてもらう方法です。
例えば今回の研修が初中級者向けならば
「初中級レベルを受けたい!」という人にエントリーしてもらいましょう。
会社から「あなたは初中級」と認定されるよりも、本人の納得感があります。
マネジメント研修のメンバー選定方法 (3) 上司の推薦者のみ参加する
対象管理職の上司に部下を参加させるか決めてもらう方法です。
上司には研修の企画内容を事前に伝えた上で「マネジメントに課題があり、ぜひ学んでほしい部下を推薦して欲しい」と伝え、選定を行ってもらいます。
上司は部下のマネジメントの課題も業務との兼ね合いもよくわかっているので「学ぶべき人が適切に選定される」というメリットがあります。
マネジメント研修のメンバー選定方法 (4) 希望者のみ参加させる
参加するしないを完全に本人に委ねる方法もあります。
事前にマネジメント研修を実施する旨を全体に案内し、自ら参加したいと手を挙げた人だけ参加してもらう方法です。
この方法のメリットは参加者の意欲が高い点です。
一般的に研修のメンバー選定は会社側が行う場合が多く、強制参加に近い形をとります。
しかし強制参加方式にすると、受け身の姿勢で嫌々参加する人が出てくる問題があります。
参加者が受け身の姿勢の場合に起こり得ること
- 当日になって「別の仕事の予定が入った」と欠席する
- 遅刻してくる
- 忙しいのを理由に宿題をやってこない
- 研修への参加姿勢が消極的
受け身参加者がこのような状態だと積極的に参加している周囲の人への悪影響もあります。
「自分のマネジメントスキルをもっと高めたい」と思って参加する人たちだけに絞れば、研修は非常に盛り上がり、得られる効果も大きいです。
とはいえ、会社としては(希望者だけでなく)全員を強制参加させたい事情があるのも理解できます。
その場合には、「研修の習熟度を測るテストを事後に実施する」「参加姿勢や習熟度を人事考課の対象にも入れる」など、ある程度強制的に参加意欲を高める仕掛けが必要です。
テーマ別研修のメンバー選定方法
ex. ロジカルシンキング研修
ロジカルシンキングはビジネスパーソン全てに求められるスキルなので、広くとらえれば全社員が対象となります。
ただし全社員への研修となるとコストや手間の問題もあるので、ごく基本的なことはeラーニングの動画教材で見てもらうなり、本を読んでもらうなり、ある程度自主学習で済ますといいでしょう。
ロジカルシンキングを実践で活用すべく、もう少し踏み込んだ研修を行うならば、まずは上級職や管理職から始めるのが望ましいです。
上の役職になるほどロジカルシンキングのようなコンセプチュアルスキルを必要とされるからです。
意思決定の判断を行う人ほど必要なスキルなので、まずは上の役職者からスタートするのが望ましいです。
上司のロジカルシンキングが上達すれば、自ずと部下もその好影響を受けていくでしょう
職種別研修のメンバー選定方法
ex. 営業力強化研修
営業力強化の場合は広くは営業職全員が対象となりますが、営業力は新人からベテランまでかなり能力の開きがあります。
個々の課題も人それぞれです。新規開拓が得意な人もいれば、大手企業向けソリューション営業が得意な人もいます。
商品説明は分かりやすいけどクロージングが苦手な人、顧客との関係構築は上手だけど提案力のない人・・・色々な人がいて、課題克服への道のりも異なります。
このような職種の場合には下記の方法がいいでしょう。
- ニーズに応じた細やかなカリキュラムを作成し、自らが弱いと思う研修に参加してもらう
- 上司が部下の弱点に対して該当する研修に参加を指示する
例えば、以下のような研修メニューを用意し、それぞれが自分の苦手とするところに参加するイメージです。
”研修”とは記載していますが、動画教材やテキスト教材なども交えながらでいいと思います。
商談ロープレ研修
商品知識研修
プレゼン資料作成研修
クロージングトーク研修
cold call研修
顧客リレーションシップ研修
商談進捗管理研修
理念研修のメンバー選定方法
経営理念や行動指針の浸透を図るために研修を実施することがあります。
経営理念は全ての社員に関わるものなので、対象者は全員になります。
ただし研修の切り口によって、参加者をどのように分けるかは要検討です。
例
行動指針の中に「スピード経営」のような定めがあったとします。
実現するためには社員1人1人がスピード、効率を意識する必要がありますが、その実現方法は階層によって異なります。
新人なら新人なりに自分の仕事の習得を早めスピードを高めることが要求され、中間管理職は自分の仕事よりも部下の仕事、組織全体の仕事の仕方の観点からスピードを実現する必要があります。
よって、研修においてもある程度階層に分けて内容を変えながら実施するのが望ましいです。
一方で「●●のお客様に感動を!」のようなミッションを掲げている場合、その内容を理解するためには「顧客の感動とは何なのか?」「感動をもたらすために、どのようなスタンスで仕事ののぞむべきか?」といった抽象度の高い話になります。
このような内容は、階層や能力レベルにかかわらず全社員が共通に考えられることなので、全体集会などの場で経営トップから語り掛けるなどの方法が有効です。
まとめ
研修の企画を進めていくと、あれもやろう!これもやろう!となってメニューが複雑化し、社員も参加する研修が増えすぎてしまうことがあります。
研修運営側としても参加者が広がりすぎると、誰のための何のための研修かが曖昧になってしまい、結果として効果が下がる恐れがあります。
研修効果を高めるためには下記を意識して参加者を適切に選定しながら企画を進めていきましょう。
- 目的に応じて参加者を明確にすること
- 参加者のレベルやニーズに沿った研修を行うこと
- 参加者が主体的に参加できる状態にすること
これらのポイントを考慮しながら研修を進めることで、参加者の学びや成長を最大限に引き出すことができます。
必要な人材に効果的な研修を実施し、組織の発展につなげていきましょう。
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