組織における「 2・6・2の法則 」とは、組織の構成員のうち、優秀な人材が2割、普通の働きをする人材が6割、貢献度の低い人材が2割という理論です。
この3つの層は、それぞれ特徴や課題が異なるため、同じ方法で指導するのではなく、相手に応じて育成方法を変えることが重要です。
上位2割には成長を「加速」させる機会を与え
真ん中6割には「仕組みと丁寧な指導」を行い
下位2割には「基本動作の徹底」を行う
これが組織全体の底上げにつながります。
アリの集団における、よく働くアリが2割、普通に働くアリが6割、怠けものが2割という「働きアリの法則」と同様の考え方です。
社内で「2・6・2の法則」が出現するのは自然な現象と言えますが、それぞれに対してどのようにアプローチするかは組織マネジメントの重要ファクターです。
仮に下の2割を辞めさせたところで、また新たな2・6・2ができあがるので、下位を切れば解決するという単純な問題ではありません。
今週のブログでは、「2・6・2の法則」があるという前提のもと、組織全体を底上げするためにどのようなアプローチで育成を行うべきかについてお伝えします。
「 2・6・2の法則 」それぞれの人材の育て方

「2・6・2の法則」に応じて人材育成を行う際に重要なのは、全員に同じ指導をするのではなく、それぞれの状態に合わせて指導方法を変えることです。
今あなたの営業部署に4人の部下がいるとします。
社内でも優秀と評判のA君

普通にコツコツ働いているが、特筆すべきものはないB君とCさん
仕事の理解力が足りずミスも多く皆の足を引っ張りがちなD君
新年度を迎えて昨年よりも部署として売上3割増の計画を目指すこととなりました。
達成のためには4人全員が成長し、それぞれ昨年の業績を超えてもらわなければなりません。
さて、あなたはそれぞれにどのようなスタンス・方法で指導を行いますか?
優秀人材(2割)への指導法
優秀タイプ(上位2割)への指導のキーワードは「加速」です。
本人の自律的な成長を邪魔せず、より高いレベルの仕事や新しい経験を与えることが重要です。
優秀人材A君は以下のような特徴があります。
- 言われなくても自ら課題を見つけ改善していくことができる
- 物事の理解が早く、何でもすぐに習得する
- メンタルが安定し、常に強い気持ちで仕事に取り組んでいる
- 上司や同僚とも適切にコミュニケーションをとっている

自分で学び自分で修正していける人材なので、あまり干渉したり細かく管理する必要はありません。
既に順調に回転している車輪を、邪魔することなくさらに加速させてあげるのが指導者の役割と言えます。
よって、優秀人材には次のような観点からの指導を意識しましょう。
よりチャレンジングな機会をどんどん提供する
- 今までの顧客よりも企業規模が大きく要望度も高い顧客を担当させる
揺らぎ、変化、修羅場を与える
- これまで扱ってこなかった新しい製品の提案営業も行ってもらう。リーダーに位置づけ、他のメンバーの指導をやってもらう
視座を上げる
- お客様の要望に応える提案ではなく、お客様の期待を超える提案を考えさせる。今期の達成だけでなく、数年先を見据えてどのような仕掛けを行なっていくべきかを考えさせる
- A君にとって勉強になる社内外の人材に会わせる。良い本を薦める
弱点を補う
- 仮に得意の顧客と苦手な顧客がはっきりしているとしたら、苦手顧客となってしまう自身の原因を突き止め、その原因を改善する
- 強みを伸ばすためにも明らかな弱点は改善しておく

普通人材(6割)への指導法
普通タイプ(真ん中6割)への指導のキーワードは「仕組みと丁寧な指導」です。
ゴールとそこまでの道筋を明確にし、小さな成長を積み重ねられる環境をつくることが重要です。
普通人材のB君とCさんは以下のような特徴があります。
- 言われたことはきちんとやるが、自分から能動的に動くことが少ない
- 向上心はさほど強くない。必要以上に仕事にエネルギーをかけない
- あまり深く考えずに仕事をする
- 上司や同僚とは普通にコミュニケーションをとるが、報告漏れや共有漏れもときどき発生する

B君、Cさんは、先が読みづらい仕事や曖昧な仕事を自ら切り開いていくのはハードルが高いです。
ゴールに向けて明確な道筋を示してあげ、その道を着実に進んで行けるよう導いたり、後方支援したりする必要があります。
具体的には次のような観点からの指導を意識しましょう。
成果が出やすい仕組みを整える
一定の武器を与え、早く成果にたどり着けるように
- 例えば営業であれば、一から提案書を作るのではなく、質の高い基本フォーマットを提供し、それを活用してもらう
- 商談進捗管理において、次にとるべきアクションがわかるような営業管理システムを導入する、などの方法でゴールに早くたどり着けるようにする
- 職種にかかわらず、ルーティン作業や単純業務を減らし、成果に直結する仕事に避ける時間を増やす
飛び越えるハードルが低くなると、ゴールにたどり着きやすくなる
ゴールを経験すると仕事の楽しさが増し、さらに次のステップに上がっていけるようになります
仕事のPDCAをしっかり回す
- 目標とそれに向けて行うべきアクション定め、行動計画におとしてもらう
- 計画に対して定期的に進捗を確認し、都度対策を考えるサイクルを回す
フィードバックをしっかり与える
- 本人のよくできている点、足りない点などを丁寧にフィードバックし、どのように改善していくかを自分なりに考える機会を持たせる(自ら考えて仕事する習慣が重要)
足りない実務能力を高める
- 商談でクロージングが苦手であれば、クロージングのロープレを行い、見本を見せる
スキル向上ステップを示す
- まずaをできるようなったら、次にbを習得し、さらにcができるようになろう!そうすればX地点まで到達できます!といったスキル向上ステップを、本人に分かりやすい形で見える化してあげる
仕事のやりがいを感じてもらう
- お客様からの感謝の声をしっかり伝えたり、上達した事をしっかり褒めながら、仕事の醍醐味を感じてもらう
先輩や同僚からの刺激を与える
- 先輩や同僚のやり方を学んだり、自分の工夫点を同僚に教える機会を持つ。相互に学び合い、お互いを高め合う

貢献度の低い人材(2割)への指導法
貢献度の低いタイプ(下位2割)への指導のキーワードは「基本動作の徹底」です。
いきなり高い成果を求めるのではなく、仕事の進め方や記録、タスク管理など、基本動作から立て直します。
能力が足りず貢献度の低い人材D君は以下のような特徴があります。
- お客様から言われたことができなかったり、伝えられた内容と違うアウトプットを出してしまう
- 仕事の優先順位を適切につけられない
- ミスが多い
- 意欲が足りず、自信がない
- 報連相が不十分

仕事の基本を習得する機会がないまま年次を重ねてしまった人は、今さら基本に立ち返ることもできず、要求されるレベルに能力が全く追いつかない状態になってしまいます。
新入社員研修で実施するような内容ができていないからこそ苦しんでいるので、改めてそこから徹底する必要があります。
貢献度の低いタイプの中には能力が明らかに不足している人もいますが、基本を徹底することで立ち直る人もいます。
具体的には次のような観点からの指導を意識しましょう。
モチベーションや姿勢を直そうとせず、業務のやり方を変えてもらう
- 意欲のなさを無理に改善させようとしても簡単には変わりません。
- ミスを叱責してもまた同じことが起きます。この人なりの仕事ができるよう、仕事の進め方の基本を見直すところから始めるのがおすすめです。
メモの取り方を見直す
- 上司やお客様から言われたことをメモしていなかったり、メモのとり方に型がないので、後から読み返しても本人が訳わからなくなっています。
メモの取り方、記録の残し方、メモをとった後の事後対応について徹底させましょう。
仕事リストを整理する
- 通常、自分がやるべき仕事をタスク一覧でまとめておくものですが、それができていない人が多いです。
タスク一覧の作成方法、優先度に応じた順位付けなどを日々考えさせる必要があります。
毎日の決めたタスクを確実にこなす
- 毎朝その日にやるべき仕事を報告させ、必ずそれを終えてから帰る習慣にしてもらいます。
帰り際に実際の進捗状況を報告してから帰社してもらいましょう。
毎日日報を書いてもらうのも1つの方法です。
強みに集中させる
- このレベルの人は苦手な事を直すのが簡単ではありません。苦手を直すよりも、”強いところ”を活かす仕事に特化させた方が会社にとっても本人にとっても意味があります。
- 例えばソリューション型の営業は苦手だけど「質より量」のアタック営業には躊躇しないのであれば、数を当たることが重要な小口企業の担当に専念させるのもありです。
- 自分で考えるのは苦手だけどルール通り作業するのが得意ならば、処理ルールを明確に定めた仕事に専念してもらってもいいでしょう。
- 営業に向かないのであれば、長期的には別部署に異動させるのもありです。

「 2・6・2の法則 」それぞれの育成への時間配分
指導時間は3つの層に均等に使う必要はありません。
特に育成効果を期待しやすく、人数も多い真ん中6割に、最も多くの時間を配分することがポイントです。
指導する上司の時間は有限なので、上記のような指導をいかに効率よく進めるかも考えねばなりません。
ありがちなのは、下位2割に指導時間をとられる割に、効果が見られないというものです。
これは絶対に避けねばなりません。
下位2割に対しては、最初は少し時間は要しますが、仕事の仕方のルールを決め、それ通りにとにかく日々やってもらうことで上司の費やす時間はほどほどにしてください。

上位2割にもあまり時間をかける必要はなく、限られた時間で良い気づきやきっかけを与えることで、さらに自ら成長していくことができます。
最も時間を割くべきは「真ん中の6割」
最もボリュームを割くべきは真ん中の6割です。
人数が多いというのもありますし、適切な指導を受けることで最も成長の変化率が高い人たちだからです。
このゾーンの人材をいかに成長させられるか、上司の指導力が問われるところです。
この層の人材のポテンシャルを引き出すことができれば、組織全体の生産性を飛躍的に高められるでしょう。
管理職研修で「2・6・2の法則」をどう活用するか
「2・6・2の法則」を管理職研修で扱う場合は、架空の部署を題材にして、組織全体の育成計画を考えるケーススタディに活用できます。
例えば
①この記事に登場するA君、B君、Cさん、D君の情報を参加者に提示し、グループごとに次の内容を整理してもらう
- それぞれに、どのような成長目標を設定するか
- 具体的にどのような仕事を任せるか
- 上司がどのような支援を行うか
- 誰の育成に、どの程度の時間を使うか
- 一定期間後に、何を基準として成長を確認するか
②その後、各グループが作成した育成計画を発表し、指導方法や時間配分の違いを比較する
同じ部下の情報を見ても、管理職によって課題の捉え方や指導方法は異なります。
他の参加者の考えを知ることで、自分にはなかった育成の選択肢にも気づけるでしょう。
「2・6・2の法則」を正解として覚えるのではなく、限られた時間の中で組織全体をどのように成長させるかを考える材料として活用することで、実践的な管理職研修になります。
2・6・2の法則を人材育成に活用するときのよくある疑問
Q.組織は必ず2割・6割・2割に分かれるのでしょうか?
必ず正確な割合に分かれるわけではありません。おおよそこのような分布になるというのが、多くの人の肌感覚に合っているので使われています。
2・6・2の法則は、社員を厳密に分類するためのものではなく、組織の中には能力や仕事への取り組み方が異なる人材がいると捉え、それぞれに合った育成方法を考えるための目安として活用するとよいでしょう。
Q.2・6・2の法則で一度決まった層は変わらないのでしょうか?
同じ人が常に同じ層に属するとは限りません。
担当業務や周囲のメンバー、上司の関わり方などによって、本来の力を発揮できることもあれば、思うような成果を出せなくなることもあります。
現在の評価だけで人材を固定的に捉えず、仕事の状況や成長に応じて、指導方法を見直していくことが大切です。
Q.2・6・2の下の2を切るとどうなるでしょうか?
下の2割を切っても、残った人材の中で新たな2・6・2ができあがる可能性が高いです。
次は自分が切られるのではないかと社員がビクビクしたらパフォーマンスが下がってしまいます。
会社への信頼が低下するかもしれません。
下の2を切って、それが好循環になる会社というのは非常に限られます。
少なくとも次の条件を満たしている必要があるのではないでしょうか。
- 切った人の代わりに、もっと優秀な人材を次々に採用できる
- 厳しい仕事に見合う報酬を払っている
- 働き手が「厳しいけれど育つ道場」だと思って入社してくる。力がなければ切られても仕方ない、と本人が思っている
まとめ
組織における「2・6・2の法則」において、上司は上位2割、真ん中6割、下位2割ににそれぞれに応じた指導を行っていくことが重要です。
それぞれの指導におけるキーワードは、「加速」・「仕組みと丁寧な指導」・「基本動作の徹底」です。
上位2割は自ら学び成長していく力があるので、それを加速させてあげるような指導が有効です。
真ん中の6割は放っておくと主体性に欠けますが、ゴールを示し着実なPDCAを回す中で成長していく人材なので、地道で丁寧な指導によって変化します。
下位2割は高い要望をしてもついてこれません。
そもそも仕事の基本ができていないのが根本要因なので、やるべき事をルール化して、日々着実に遂行してもらうことが有効です。
そして、限られた育成時間の中では、特に真ん中の6割の成長を後押しすることが、組織全体の底上げにつながります。
組織全体の成長に貢献するためにも、部下一人ひとりに向き合い、最適な指導方法を模索していきましょう。
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