人事担当者がいつも悩むテーマに「どうやって 研修効果測定 をするか?」というものがあります。
受験教育であれば授業の効果が生徒のテストの点数に反映されるはずので分かりやすいですが、社員教育の効果を測定するのはそう簡単ではありません。
例えば機械の操作とか商品知識であれば、教えた内容が身についているかテスト等で効果測定可能です。
しかし、そういった判断基準が明確ではない新人研修、管理職研修、DX研修などは、どのように実施効果を測定すればいいでしょうか?
今週のブログでは研修効果測定をどのように行ったらよいか、その方法についてお伝えします。
目次
研修効果測定 5つの方法を解説
研修の効果測定は以下のように5つの段階に応じた測定が可能です。
①研修実施前
会社として研修を導入したばかりで社員から研修に対する認知が弱かったり、参加意欲が薄い場合など、「まずは研修参加者を増やそう」という段階で活用できる測定指標です。
②研修実施直後
研修実施直後にアンケートを配って色々な観点から満足度を測るもので、企業研修の効果測定でよく用いられます。
参加者のダイレクトな感想を把握できるメリットがあり、その内容を次の研修企画に活かすことができます。
しかしこの方法は本質的な効果測定ではありません。
なぜなら研修の目的は“いい研修をやること”ではなく、研修を通じて社員の育成を促進すること、その研修で狙った育成効果を得ることに他ならないからです。
研修実施直後のアンケートの結果が良いからといって、本来の目的に沿った効果が得られたかは分かりません。
③研修実施後遅滞なく
これは知識系の研修効果を測定する場合に特に向いています。
研修で学んだ内容が身についているか、ペーパーテストや実技テストによってチェックします。
合格すればOK、不合格であれば再チャレンジしてもらうことで、全体のスキルの底上げを図ります。
④研修実施から数ヶ月後
行動変容を測定するものです。
研修で学んだ内容を活かして、参加者の意識が変わったか、さらに行動が変わったかを測定します。
研修から数ヶ月経った後に本人へのアンケートや上司へのアンケートで参加者の変化度合いを問うのは有効な方法です。
管理職研修であれば、研修前と研修数ヶ月後の二時点で部下にアンケートをとると、研修参加者の意識および行動の変化状況がよくわかります。
営業職であれば、成果を出すためのプロセスとして商談数や提案数などを測定することで、行動の変化を見ることができます。
⑤研修実施から半年~1年後~数年後
これは研修投資によって得られた仕事の成果を測定するものです。
研修実施から結果が見えるまでは一定の時間を要するものです。
しかし最終的には参加者の意識が変わり、行動が変わり、成果につながることが研修の最終ゴールのはずなので、この測定から目を背けることはできません。
管理職研修であれば、職場の従業員サーベイの点数の改善や離職率の減少などで測定が可能です。部下の業績改善度なども活用可能です。
工場の現場改善研修であれば、歩留まり向上や生産性改善などで測定することができます。
経営幹部のリーダーシップ研修であれば、部署の業績改善、最終的には全社の業績改善につながってこそ、研修の効果があったと言えます。
目的が曖昧では 研修効果測定 は不可能
①から⑤の方法をご説明しましたが、研修によってどの測定方法がふさわしいかは異なりますが、
研修の目的が明確であれば測定方法は自ずと決まってきます。
例「とりあえず全社員にコンプライアンス研修をやります」という会社の場合
研修の実施背景が「世間的にコンプラへの姿勢が厳しく問われる時代だから、とりあえず当社も実施しよう」なので目的が曖昧です。
目的が曖昧であるため、何をもって効果測定すべきかわかりません。
そこで以下例のように目的を明確にすれば、コンプラ研修の効果測定方法が浮かび上がってきます。
目的例 全社員がコンプラ研修に参加したという事実を残す
測定方法 研修受講率(=①の方法)
目的例 全社員にコンプラへの意識、関心をもってもらう
測定方法 研修直後の満足度アンケート(=②の方法)
目的例 コンプラの最低限の知識をつけてもらう
測定方法 研修受講後の知識習得度チェック(=③の方法)
目的例 上司から部下に対するパワハラ、セクハラなどを減らす
測定方法1 部下に対するアンケートで従前の上司の振る舞いと研修数ヶ月後の振る舞いを聞く(=④の方法)
測定方法2 パワハラ、セクハラ発生件数(=⑤の方法)
このように、目的によって測定方法は変わるものです。
最近はDX研修などを実施する会社が多くありますが、その目的は明確でしょうか?
実施目的(ゴール)が曖昧なまま研修を行ってしまうと、後から研修効果を測定しようと思っても測定しようがありません。
例えば研修実施前に
- 研修のゴール(管理職層):DX研修の内容にもとづいた現場業務改善を1つ以上実現
- 研修のゴール(一般社員層):DX研修の内容にもとづいた現場業務改善を1つ以上提案
と目的を定めておけば、研修後の「提案数」「改善実現数」などの指標で効果測定が可能です。
意欲ある人には「DX研修応用編」というもっと実践的な研修を用意してあげれば、その研修への自主参加者数なども行動変容を測定する一助になるのではないでしょうか。
合わせ技の 研修効果測定 もOK
1つの研修だけで業績が改善することは滅多にありません。
例えば職場活性化を目的として、下記のような研修を行うとします。
a. 管理職研修
b. 心理的安全性研修
c. リーダーシップ/フォロワーシップ研修
d. コミュニケーション研修 など
この場合、1つ1つの研修が職場活性化にどのようにつながったかを測定するのは難しいので、a~dの研修を一連のものと見なして「従業員サーベイの点数改善度」で効果測定するのは妥当です。
a~d個々の研修の良し悪しは先ほどの②の段階の研修直後アンケートで済ませ、行動変容や成果はa~dをまとめて効果測定する・・・という合わせ技でもいいと思います。
研修効果測定 では平均値だけで見ない
先ほどの測定方法のうち②(研修直後のアンケート)を用いた場合、研修参加者30人の平均値を見ることが多いと思いますが、それが必ずしも正しい効果とは言えません。
研修には常にメインターゲットが設定されているはずです。
研修参加者全員におしなべて同じ効果をもたらすのは現実的でないため、最も高い効果をもたらしたい対象層を定めるべきです。
例えば経営幹部研修を実施する場合、将来的に経営幹部の一翼を担ってもらいたい有望人材にどのような効果をもたらしたかが重要です。
有望人材以外の管理職も研修に参加させるとしても、効果測定では全体の平均値よりも有望人材の声を聞くべきです。
逆に新入社員研修の場合、「最もレベルの低い人であっても現場に配属して足を引っ張らない程度に育てる」ことが目的だとしたら、
効果測定のメイン指標とすべきは「上位人材の声」ではなく下位人材の仕上がり度合いではないでしょうか。
まとめ
研修の効果測定には、段階に応じて主に5つの方法がありますが
どの効果測定方法がふさわしいかは、研修の目的(ゴール)によって異なります。
目的が曖昧な研修では効果測定も曖昧になってしまうので要注意です。
研修を企画する時点で、目的(ゴール)、参加対象者、参加対象者の中のコアターゲットを定めることによって、研修の効果測定をより高い精度を行うことができます。
研修の効果測定は人事にとって避けて通れない仕事です。
効果測定にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
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