中小企業ならではの 働きやすさ で転職防止|強みを活かした事例と実践方法

2024.02.29

 
中小企業は「 働きやすさ 」では大手企業にかなわないと思っている人も多いでしょう。

確かに、年間休日日数、有給付与日数、福利厚生の充実度、住宅手当などなど、資金と体力のある大手企業に太刀打ちできないのは確かです。
 

一方で、中小企業には、中小企業ならではの強みがあります。

それは個々の事情を考慮した柔軟な働きやすさの実現であったり、それをサポートする職場の雰囲気づくりなどです。
 

“かゆい所に手が届く” 働きやすさを提供できるのは、制度がガチガチでない中小企業の特技であり、それが社員の定着を促進する強みにもなります。
 

今週のブログでは、中小企業が働きやすさを高めれば、他社への転職を防止する絶大なる抑止策になることを、詳しい事例付きでご紹介します。

 

「 働きやすさ 」で大事なのは、制度よりも周囲の理解と協力

 

例えば有給付与日数上限が20日のA社と、在籍期間に応じて日数が増え上限として25日分付与されるB社があります。

日数だけ見れば付与日数の多いB社が魅力的に見えます。
 

それでは、内情を見てみましょう。

 

A社は休暇をとりやすい雰囲気

 
A社では社員がお互いに有給消化できるよう協力し合う文化が構築されており、社員たちは年間で15日前後の休暇を取得しています。

雰囲気的に非常にとりやすいので、長期旅行でまとめて使う人もいれば、子育てとの両立で小まめに取得する人もいたりと、それぞれがライフスタイルに合わせて自由に活用しています。
 

B社は付与日数は多いものの・・・

 
一方のB社では、有給取得をとても言い出しにくい雰囲気です。

休みの人を協力し合う関係性が成り立っていないため、休暇中の自分の仕事をリカバーしてくれる人もいません。

そのため、せっかく有給を取得しても仕事のことが気になり、リラックスして休めない・・・という状況です。

結果、制度としては在籍期間に応じて付与日数が増えていくものの、実際のところは、多くの社員が年間に7日程度しか取得できていません。
 

比較してみていかがでしょうか?

有給付与日数という制度においてはB社が優れていますが、実際はA社の方が有給取得において働きやすい会社と言えます。

 

つまり、働きやすさは制度自体の良し悪しより、周囲の理解やサポートなど、会社の風土や環境にも大きく影響されると言えます。

 
よって、制度自体で劣る中小企業であっても、働きやすさで勝てる可能性は十分にあります。

 

働きやすさ で長く会社に貢献している人の例

営業事務職のCさん

 
Cさんは広告系の中小企業で7~8年ほど営業事務職として勤務しています。

もともと体力面で不安があり、通勤電車の混雑がとても苦手でした。

当初は頑張って通っていましたが、通勤がきついため家の近くの会社に転職も考えていた頃に、ちょうどコロナ危機が発生し、一時的に在宅で仕事をするようになりました。

実務能力は高い人だったので、在宅でも支障なく営業メンバーを的確にサポートし、同僚にも感謝されていました。

 
会社はコロナ明けに基本的に出社する形態に戻しましたが、例外的にCさんの在宅勤務継続の希望を認めました。

正式なルールでは在宅勤務は認められていませんが、あえて適用としたのです。

Cさんの仕事ぶりがとても良かったこと、同僚から信頼されていたこともあり、この例外的な在宅勤務に反対する人はいませんでした。
 

結果として、Cさんは今でも安定的にこの会社に勤務しています。

Cさんの待遇面やこの会社の福利厚生などは並みの中小企業水準であり、決して世間的に言う“働きやすい会社”ではありません。

しかしCさんにとってはとても働きやすい会社です。

 
仮にCさんがもっと待遇がよく、家に近い会社に転職したとします。

確かに通勤は楽かもしれませんが、その会社でフルリモート勤務を認めてもらうにはかなり時間がかかるでしょう。

同僚から信頼され、フルリモートで働けるくらい業務に精通し、周囲からもフルリモート勤務を理解してもらえるようになるかは、実際に働いて何年か経過してみないと分かりません。

そのようなリスクを冒してまで、Cさんが転職する理由は見当たらないので、今後も長くこの会社で貢献してくれることでしょう。

 

法人営業職のDさん

Dさんは4年前、クラウドサービスのIT企業に法人営業職として転職してきました。

地方都市にある会社なので、家から会社までは車で10分程度と便利だったのも魅力でした。

とはいえ、幼稚園児の子供がいるため子供が風邪をひいたり、お迎えのため通常より早く退勤する日があったりで、仕事との両立は簡単ではありません。
 

ただ幸運なことに、この会社には時間単位で有給をとれる制度がありました。

朝、子供を病院に連れて行ってから出社したり、お昼前後の時間だけ子供の迎えに行きお昼ごはんの用意をしたりと、短時間だけ仕事を抜けることができ、その時間を有給に充てられるのでとても助かりました。
 

入社前に「有給の時間単位取得」の制度があると聞いてはいたものの、

「実際はそんな簡単に取得はできないんだろうな?」

と思っていました。

ところが、入社してみたら子供のいる女性営業職も多く、皆が時間単位有給を上手く使っていました。

当然ながら周囲の理解もあるので、仕事に支障が出ないようコントロールすれば、かなり自由に時間単位有給をとれます。

Dさんには正に自分にぴったりの働き方ができる職場であり、「転職など考えられない」と思っています。

 

販売職のEさん

 
Eさんは物販小売業の会社に新卒で入社し、現在入社10年目です。

入社以来ずっと小売店舗の販売職としてバリバリ働いてきましたが、結婚して子供が生まれ、育休明けに復帰するタイミングで、週4日時短勤務社員を選択しました。

通常は1日8時間×週5日=40時間勤務のところ、1日6時間×週4日=24時間という、フルタイム勤務者の6割の勤務時間の社員となったのです。

以前は育休明けの復帰方法はフルタイム勤務しかありませんでしたが、Eさんが復帰する少し前にこの制度ができました。

Eさんは「この制度がなければ退職していたかもしれません」と言います。

将来的にはフルタイム社員に戻るかもしれませんが、子供がある程度大きくなるまでの間は、6時間×4日は仕事と子育てを両立できる適度なバランスです。

Eさんには願ってもない選択肢でした。

当初は現場としてもフルタイムでない社員をどのようにシフトに組み込むか悩んでいましたが、社長の「何が何でもこの制度を定着させたい」との強い思いで全社的にポジティブに取り組み、実現しました。

社長は「長年当社で働いてくれた貴重な人材が出産をきっかけに離れてしまうのを防ぎたい」という課題感から、この制度を取り入れようと思ったそうです。

 

働きやすさ を支えるのは働く環境

 
上記事例に共通しているのは、Cさん、Dさん、Eさんの働き方に同僚や上司の理解があり、皆が協力的であることです。

制度の有無も大事ですが、周りのサポートがその働きやすさを支えているのです。
 

中小企業のいい所は、社長が本気で推進すると決めれば、会社がそのベクトルに向かって動けるところです。

大手企業は立派な制度は作れても、各職場に方針を徹底するところは苦手分野です。

中小企業は制度自体は並か並以下かもしれません。

しかし、自社の社員に適した制度を取り入れ、その制度が使いやすいよう魂を入れ、会社全体で意志をもって促進していけるのは中小企業ならではの強みではないでしょうか。

 

例外も認める

 

ルールに書かれていない多少の例外であったとしても、社長や周囲がOKと言えば認められるのは中小企業の強みです。

制度上フレックスがなかったとしても、介護で困っている社員がいれば、朝の出勤時間を「1時間遅らせてもいいよ」などと柔軟に認めているケースは実際に多々あるのではないでしょうか。

ベースとなるルールは必要ですが、自社にとって大切な社員を特別扱いすることは、時にはいいことです。

会社の目的は、全ての社員を完全に平等に扱うことではなく、貢献度の高い社員が更に進化し会社が発展していくことだからです。

社員にとって働きやすい環境を特別に用意してあげれば、仮に制度が良い他社に転職したところで、(同じような特別配慮をもらえるわけではないので)実際の働きやすさは確実にレベルダウンします。
 

結果としてその社員の転職抑止効果が十分働くことになります。

 

社員が今ここで働く理由

 
あなたの会社の社員が、今そこで働いているのには必ず理由があります。

転職に理由があるように、転職せずに続けるのにも理由があります。

よって、「辞めずに残る理由」を十分作ることができれば、社員はそう簡単には転職などしません。

最後にこちらの下図をご覧ください。

 

社員が今あなたの会社で働いている理由は、以下の1~5のいずれか、または複合要因によります。
 

働きやすさ

 

1~5の理由のうち、会社として改善しやすいものもあれば、すぐには手をつけにくいものもあるでしょう。

その中で「2. 環境軸」は中小企業であっても高めやすい要素です。

働きやすさを高めれば、社員があなたの会社で長く続ける大きな理由の1つになります。

ぜひ自社でどんな工夫ができるかを考えてみてください。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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