幹部に 仕事を任せられない? 強い幹部が育っている会社の育成法(後編)

2020.06.04

 
中小企業において社長が仕事を任せられる幹部人材がなかなか育たないのはなぜでしょうか?

前回のブログで2つの理由についてふれました。

  • 社長と幹部の力量の差は社長が想像する以上に大きい
  • そもそも社長と幹部の覚悟が違う

 

社長は幹部に対して、

  • 「もっと経営者目線を持ってほしい」
  • 「自分のような意思決定ができるようになってほしい」

と願いますが、実際はなかなか差が埋まらないのが現実です。

しかし、世の中には社長以外に強力な幹部が育っている会社もあります。

そういう会社はどうやって経営者人材を育てているのでしょうか?

 

「強い幹部が育っている会社」の育成法

仕事を任せられない

経営者視点をもつ幹部(=経営者人材)が育っている会社はどのようなやり方をしているのでしょうか?

 

「事業部」を「会社」にして社長をたくさんつくる

 

新しい事業を始める時、1部署としてではなく別会社化して進めるポリシーの会社があります。

事業責任者は「事業部長」ではなく「社長」になります。

「立場が人をつくる」と言われるように、社長というポジションにつくことで意識が変わります。

 

会社化すると

  • 売上・利益だけでなくバランスシートも見るので、経営の視野が広がる。
  • 付き合う人のレベルが上がり、多くの刺激を受けるチャンスが生まれる。

といったメリットもあります。

 

できれば株式も少し持たせた方が、本気度が高まるのでいいいですね。

子会社をたくさんつくると管理面の煩雑さなどのデメリットも生じますが、経営者人材の育成においては有効な方法です。

 

ただし、1つご注意下さい。

「誰を社長に登用しますか?」

人選を誤ると、社長の責任を感じるより、社長の権力を使いたがる人が出てきます。

 

幹部登用については、是非こちらの記事をご参考にして下さい。

→→→経営幹部登用に失敗しないシンプルなコツ

 

社長が直接育てる

社長のカバン持ちという仕事がありますよね。社長の疑似体験ができてとても勉強になる仕事です。

通常カバン持ちと言えば若手社員ですが、幹部候補人材を社長の身近においてみっちり育てるのも良い方法です。

幹部候補のうち、有望株に絞って帝王学を学ばせるやり方です。

  • 社長は1つ1つの経営判断をどのように行っているか?
  • 普段どのような情報を収集しているか?
  • どんな相談事が持ち込まれてくるのか?
  • どんな時、どのように叱っているか?

などなど、社長の側で肌で感じてもらいます。

 

ただし横に居て見ているだけでは十分ではありません。

例えば社長がある意思決定を下した後、

  • それについてどう思ったか?
  • 自分が社長ならどのように判断したか?
  • なぜか?

などを継続的に議論して下さい。

議論することにより、視座の違い、決断力の違いが明らかになり、それが財産となっていきます。

 

幹部候補に子会社の経営をまかせる

幹部候補に子会社の経営を任せるのも地力のつく育成方法です。

送り込む先として、

  • 優等生子会社ではなく、様々な課題を抱えた会社
  • 派遣される人が不案内な事業、不慣れな環境
  • 社長の力で動かしやすい規模

だと望ましいです。

社長として送り込まれた先はアウェー。

子会社の社員は新社長に対して「お手並み拝見」のスタンス。

慣れた本社で慣れた同僚や部下と仕事をするのとは全く違います。

その環境下で事業を再建したり、成長軌道にのせるチャレンジは非常に価値のある経営経験となります。

 

経営幹部を中途採用して既存社員の育成につなげる

 

社長が「自分に代わる人材の育成なんて待ってらんないよ」と仰るのも分かります。

長らくワンマン経営をやってきた会社が経営者人材を育てるには相当な時間がかかります。

そこで第一弾として外部から経営者人材を採用するのも有効な手です。

2つの観点で有効と言えます。

  • 採用した人材が経営の一翼を担ってくれる
  • 社長にモノを言える人材、自ら事業を推し進める人材が目の前にあらわれることにより、既存社員に刺激を与える

将来の経営者人材育成においては、特に2つ目の目的がとても重要です。

 

「社長の言うことは絶対」と信じ、言われたことを忠実にこなしてきた社員は、自ら判断し、自分の考えを社員に説き、社長を説得して事業を推進する、という仕事の仕方が苦手です。

外部人材の招聘により、その実例が目の前で見られる効果は非常に大きいです。

 

数字に厳しい会社

 

目標数字が明確で、責任者がその実行責任を強く感じている会社ほど、経営者予備軍が豊富にいるものです。

数字に厳しい会社は、オフィスに行くと緊張感があります。

数字が曖昧な会社は職場に行った時に迫力を感じません。

 

業績は様々な要因によって変動しますが、それも全部ひっくるめて結果を出すのが社長の仕事です。

運不運もひっくるめて結果で評価されるのが社長です。

数字に厳しい会社なら、社長のヒリヒリした感覚をある程度疑似体験できる効果があります。

結果を出すために知力、体力、時の運、人脈を総動員する感覚を味わえば、経営者人材に一歩近づけるでしょう。

 

強い幹部を育てる社長の度量

経営者人材を育てるには社長にも条件があります。

 

幹部の意見に耳を傾ける

 

経営者人材というのは、自ら問題発見し、自ら対策を考え、リーダーとして社員を導いていける生き物です。

したがって自分の考えや意見をしっかり持っています。

そのような人材は当然ながら、社長と意見が異なる場合があります。

その意見を社長がしっかり受け止め、建設的な議論ができる会社は幹部が伸び伸び力を発揮します。

これまで1人で全て判断してきた社長にとって、部下から意見されるのは気持ち良くないかもしれません。

しかし、社長自身がここを乗り越えられるか否かは経営者人材の出現に大きく影響します。

ここは存分に忍耐力と愛を発揮してください(笑)

 

人材の育成には頭と時間を使う

 

経営者人材の育成方法や育つ環境について述べてきました。

育てる大前提として認識すべきは、社長と現幹部には相当な実力差があるということ。

日々のオペレーション業務ではその差は埋まらないということです。

よって、経営者人材を意図的に育てる方法を考える必要があります。

 

人材育成という仕事は、営業や新商品開発に比べてアドレナリンが出ず面白くないかもしれません。

すぐに成果が出るものでもありません。

仮に面白くなくても、社長自ら時間を投入し、具体的な方法を考え、厳しく指導しながら、忍の一字で育て上げる。

経営者人材の育成は、そういう覚悟が必要な仕事なのだと思います。

 

こちらの記事もおすすめです。

 

筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

筆者プロフィール詳細