意見が出ない会議 を劇的に変える6つのファシリテーション技法

2024.06.20

意見が出ない会議

会議中、上司から何らかの説明をした後、部下に「何か意見や質問はありますか?」と問いかけます。
ところが、参加メンバーから何も反応がないことがありませんか?

会議室が「シーーーン」と静まり返り、誰も手を挙げない。

このような状況になると、上司は「特に意見や質問がないようなので、次の議題に行きます」と言って、先に進んでいくこととなります。
 

しかし、部下たちは本当に上司の説明を理解し、納得できているのでしょうか?

このような光景は、実は日本中のいたる所で日々展開されています。
 

今週のブログでは、会議のやり取りをもっと深め、相互理解を深め、次の行動につながるマネジメント方法についてお伝えします。

 

質問はコミュニケーションの起爆剤

会議の場で上司が何らかのテーマで説明した後、

「何か質問や意見はありますか?」と聞いても誰からも反応がないことがよくあります。

これはとても勿体ないことです。
 

人から説明を受けた際、その要点や全体像が一発で分かるなんてことは滅多にありません。

分かった箇所もあれば、そうでない箇所もあるのが普通です。

この5合目程度の理解を8~9合目まで押し上げるものこそ「質問」です。

質問が発せられ、それに答えるやり取りを通じて、初めて本当の理解に辿り着きます。
 

意見が出ない会議

 

よって、「質問や意見が出ない」という状況は非常に脆い砂上の楼閣のようなコミュニケーションと言えます。

質問や意見が出る会議にできるか否かは、組織を動かすリーダーシップの源泉とも言えます。

 

会議で質問や意見が出ない理由

 
会議で質問や意見が出ないことには下記の4つの原因があります。

 

1. 組織風土要因

上司の説明は絶対であり、それに意見するなんてとんでもないという企業体質があり、説明する上司側も意見や質問が出ることなどほぼあり得ないと思っているケース。
もしくはお互い無関心で仕事に真摯に向き合えていない組織風土。
 

2. 関係性要因

上司と部下もしくは部署のメンバー同士の関係性が悪く、極力議論を避けたいと思っているケースや、上司個人のキャラクターとして部下の意見を聞く気などさらさらないケースなど
 

3. 情報の非対称性要因

説明する上司と部下の持っている情報に差があり過ぎるため、上司の説明が十分に理解できず、質問や意見の糸口すらつかめないケース
 

4. 会議の進め方要因

部下側に質問や意見を出したい気持ちはあるが、どこから質問したらよいか分からなかったり、変な質問をして周りから変な目で見たら嫌だなと遠慮する等のケース

 

上記4つの要因のうち、「1. 組織風土」と「2. 関係性」については今回のブログでは対象外とし、

その他2つの要因「3. 情報の非対称性」「4. 会議の進め方」に対して、もっと質問や意見が出るやり方を考えてみましょう。

 

会議で質問や意見が出やすくする方法

 

質問や意見を促進するためには、3つのポイントがあります。
 

■会議の場の共通ルールを決める

■相手に伝わる説明をする

■ファシリテーション技法を駆使する

 
それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

会議の場の共通ルールを決める

 
会議には、本来その目的に応じてルールがあります。

しかし、ルールを意識して会議参加している人はあまりいません。

ルールをちゃんと意識させるよう伝えている上司もどちらかと言うと少数派ではないでしょうか。

質問や意見が出やすくするために、次のようなルールをあらかじめ定めて、皆で共通理解をもっておくとよいでしょう。
 

会議のルール

  • わからないことがあったら、それがつまらない質問と思ったとしても、些細なことであっても、何でも聞きましょう。それが皆の理解を深めるきっかけになります。
     
  • 何か違和感やしっくりこないことがあったら、素直に意見を出しましょう。意見をもらった側は頭ごなしに否定せず、いったん受け止めた上で次の意見を出しましょう。
     
  • 上司部下、年次、立場などに遠慮せず、率直に意見を出しましょう。組織全体のために意見を出し合うことが、より強い組織を作ります。
     

このように会議のルールを決めたら、会議の都度、冒頭に全員でしっかり確認し合い、ルールを忘れないようにしてください。

  

相手に伝わる説明をする

最初に説明をする上司がいかに部下にわかりやすい説明をするかは、質問や意見の出やすさを左右するとても重要な要素です。

難しい内容を難しい言葉で説明しても、その情報は部下の耳を素通りするだけで、記憶や心に刻まれることはありません。

伝える際のイメージとしては、中学生でも分かる言葉しか使わないことです。
 

ビジネスの会話の多くは中学生が分かる言葉で十二分に説明可能です。

誰が聞いても理解にブレがない、シンプルでわかりやすい言葉で説明すれば、伝えたい内容が部下に響き、結果として次の意見や質問につながります。
 

伝える技術については、それはそれで奥深い話なのでここでは触れませんが、部下への説明もプレゼンテーションも基本的には同じです。
 
自分が伝えたい事を伝えるのではなく、相手(聞き手)の気持ちになって、相手がすんなり理解できる情報に転換して伝えましょう。

 

ファシリテーション技法を駆使する

 

上司の説明に対して意見や質問が出ない時、会議の進め方次第で逆転させることが可能です。

ファシリテーションは「皆の共通理解を促し、良い意見を引き出し、議論を活性化し、良い結論に導く」技術です。

ファシリテーションには色々な技法がありますが、意見や質問を促進する有効な技法について紹介します。

 

① 誰かをあてる

 
自分から意見を言わないからといって、意見がないとは限りません。

会議で皆を見ていれば、意見を言いたそうな表情の人がいるものです。

注意深く観察し、その人をあててください。

「自分から意見を言わないやつ、当てられないと意見を言わないやつはだめだ」という考えも確かにありますが、

それで切り捨てて良い意見が出ないならば、結果、真の目的である「ちゃんと伝えて理解してもらい、行動にうつしてもらう」は達せられません。

現状の組織が、「自分から意見が出にくい組織」であるならば、まずは誰かをあてて答えてもらうところからのスタートでも十分な進歩ではないでしょうか。

 

② 聞き方を変える

 
「意見や質問やありませんか?」と尋ねるのではなく、

「気になる点はありますか?」「不安に感じることはありますか?」

のように投げかけます。
 

“意見や質問”は少々堅い言葉で、相手が身構える言葉でもあります。

もう少し聞き手の気持ちに寄った言葉を投げかけると、結果として意見や質問が出やすくなります。

 

③ グループに分ける

 
全体に対して意見を聞くのではなく

「2~3人ずつのグループに分かれて、感じたことや分からなかったことを話し合ってみてください」

と進行してみましょう。

会議全体の場では意見が出にくくても、小グループに分かれることで話しやすくなり、個々の意見が出てきます。

少し時間を取り、各グループで出た内容を全体に発表してもらいましょう。

 

④ 紙に書いてもらう

 
「では、説明を聞いて分からなかったこと、理解しづらかったこと、疑問、意見などをノートに3つほど書いてください」

と進行します。

各自の頭の中でじっくり考えてもらうことで、質問や意見が出てくるでしょう。

説明を聞いてすぐに意見を出す瞬発力が弱い人は、自分でじっくり考える時間を与えると考えが熟成されます。

 

⑤ 理解した内容を聞いてみる

 
「Aさん、今私が説明した内容のポイントを話してみてもらえますか」

とAさんを指してみましょう。

恐らく明確な説明はできないかもしれませんが、そのたどたどしい回答を聞くことで、Aさんがどこまで理解し、どこで理解が及ばなくなったかが手に取るようにわかります。

上司はAさんの話を補足する形で、改めて大事なポイントを説明すれば、皆の理解が深まります。

 

⑥ 質問の範囲を限定する

 
例えば、営業組織において体制変更を説明する会議において。

これまでの商品別の営業担当制を顧客別の営業担当制に変更し、今後営業担当者は全ての商品を扱う方針となったことについて説明したとします。

上司からは、現状の問題点、変更の目的、今後の営業のやり方の違い、移行スケジュールなど多くの事項についての説明がありました。

説明後、行った説明全体への意見や質問を問われるとなかなか出し難いので、質問をパート分けしてみます。
 

「現状の課題と変更の目的において、何か意見や質問はありますか?」

「皆の営業のスタイルが大きく変わるけど、それについてどう感じますか?」

「各自扱う商品が増えることになるけど、それに関して心配事や質問はありますか?」

 

以上の例のように、話の範囲を限定して意見や質問を聞いてください。

こうすることで部下はより具体的に論点をイメージすることができ、意見や質問をかなり出しやすくなるはずです。
 

以上6つのファシリテーション技法をお伝えしましたが、それぞれを組み合わせて使うのも有効です。

 

まとめ

 

 
今回のブログでは「会議で部下から質問や意見が出ない」というよくある悩みについて、その解決策を解説しました。

会議を活発な意見交換が行われる場に変えるためには、3つのポイント「会議の共通ルールを決める」「相手に伝わる説明をする」「ファシリテーション技法を駆使する」が重要です。

これらのポイントを実践することで部下の理解度が高まり、会議がより有意義なものへと変わります。
 

特に、ファシリテーション技法は会議の雰囲気を大きく変える可能性を秘めています。

今回紹介した具体的な手法を用いることでコミュニケーションを改善し、なかなか発言できないメンバーから積極的に意見を引き出していきましょう。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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