自社ならではの「 人が辞めない会社 ・活躍する会社」のつくり方

2022.12.01

 
当ブログの名称「ツドイカツヤク研究所」の“ツドイカツヤク”とは、

「会社にいい人材が集まり、1人1人が存分に力を発揮し、長く続ける環境をいかにして作るか?」

という、企業の永遠のテーマに由来しています。
 

  • もっと意欲的に働いて欲しい
  • 主体性を発揮して欲しい
  • 辞めずに長く働いてもらいたい
  • いい人材を採用したい

 
社員にこう願わない会社はありませんが、現実はなかなか難しいものです。

あの手この手を尽くし、さまざまな工夫を施しても、空回りすることも多々あります。

今週のブログでは、「社員が活躍し、辞めない会社」を自社の環境に応じていかに作りあげるか?についてお伝えします。

 

社員が「今ここで働く理由」

 
社員が今この瞬間、あなたの会社で働いているのには必ず理由があります。

それを「今ここで働く理由」として5つの要素に分けています。

 

 

 

この5つの要素の魅力がどのように存在するかによって、企業の「人をひきつける力」「定着させる力」「意欲的に働く環境の力」などに差がつきます。
 

5つの要素を簡単に説明すると下記のようになります。
 

1 事業/会社軸
事業の魅力、会社の知名度、社長の魅力、会社の成長性など

2 環境軸
職場の人間関係や上司との関係性。働く環境など、いわゆる“働きやすさ”

3 成長軸
仕事を通じて成長できる、成長できる職場環境など

4 評価/報酬軸
自分が納得のいく評価と報酬を得られているか、求める報酬を得られているか

5 やりがい軸
仕事を通じて人に感謝されたり、貢献を感じられるか(ただ言われたことをやるだけでなく自分の裁量があるかも関係します。)

 

人が辞めない会社

 

要素の強弱の考え方

 
5つの要素が全て高い水準にあれば申し分ないですが、それは現実的ではありませんし、そんな会社はほぼ存在しません。
 

まずは自社の強みがどこにあるかを明確に定め、その要素を大きく伸ばすことが第一です。

しっかりエッジを立てることです。
 

 

ただし、強みの要素以外の他の要素が低すぎると社員を留めておくことが難しくなります。

自社にとって弱い要素があるならば、そこが致命傷にならないよう、一定水準以上までは高めなければなりません。
 

自社の社員が求めているものとあなたの会社の5つの要素の強弱バランスがマッチすれば、その社員にとっては「とてもいい会社」になります。

社員は会社を選び、会社は社員を選ぶので、両者が「マッチする」ことが何より大切です。全ての人に満足してもらおうと思ってはいけません。

 

会社を辞める理由から要素の強弱を考える

 

大手企業からの離職

 

近年は新卒で大手有名企業に就職した若手人材の離職が増えています。

しかも同期の中でも優秀な人材の流出が多いと言われています。

大手企業は、先ほどの5要素のうち

1(事業/会社軸)・2(環境軸)・4(評価/報酬軸)が十分に高い水準にあり、中小企業からしたら羨ましいくらいの競争力をもつはずです。

では、なぜその大手企業を退職してしまうのでしょうか?

理由は、その他の要素である、要素3(成長軸)・5(やりがい軸)の欠如です。

 

 

■(組織が大きすぎて)自分の仕事が社会にどう役に立っているのかわからない

■ 重要な仕事をまかせてもらえない

■ 補助的な仕事ばかりやらされ、成長できそうにない

 
社員はこれらの理由で離職します。

大手企業を辞めてベンチャー企業に転職する人が多く存在するのは、仕事の手触り感を求めたり、若いうちからどんどん仕事を任せてもらえる環境を求めたからです。

 

ゆるブラック企業からの離職

 
“ゆるブラック企業”については以前このブログでも取り上げました。
 

 
働き方改革の主眼が「残業削減」や「働きやすい環境」に偏り過ぎた結果、

「環境軸(要素2)は素晴らしいんだけれど、仕事が楽すぎて成長できない、やりがいがない・・・」

と感じる社員が辞めていきます。
 

要素3(成長軸)や5(やりがい軸)が欠落してしまっている状態です。

会社自身の成長力も失われ、要素1(事業/会社軸)も損なわれている場合もあります。

 

 

低報酬企業からの離職

 
要素1〜3、5はいずれも満足しているものの、4(評価/報酬軸)だけが低すぎて退職する人もいます。

特に結婚して子供をもつようなタイミングで家計について真剣に考えた結果、退職を決断したりします。

せっかく他の4つが高い水準にあっても、たった1つの要素が低すぎるとそれが足を引っ張ってしまう例です。

 

 

ただし「仕事において報酬を重視する度合い」は人によって、ライフステージによって異なるので、この環境に満足して続ける人も必ずいます。

 

成長ベンチャーからの離職

 
成長ベンチャーの特徴は要素1(事業/会社軸)・3(成長軸)・5(やりがい軸)が高い傾向にあり、その魅力に人が集まります。

2(環境軸)の働きやすさや4(評価/報酬軸)の報酬は低い傾向にありますが、それを覆い隠す成長スピードと高揚感が人をひきつけます。
 

しかし、成長スピードが衰えたり、組織が拡大して1人1人の仕事の裁量が狭まったり、官僚的組織に変化していくと、さらにアーリーステージのスタートアップに転職していく人がいます。

ライフステージの変化に伴い2(環境軸)や4(評価/報酬軸)を重視し始めた人が中堅企業や大手企業に転職するケースもあります。

 

 

 

独立する人が享受するメリット

 
5年ほど前くらいから、私の周りでも若手ベテランに限らず独立する人がたくさんいます。

その多くは独立して食べていける人たちなので、優秀な人材です。
 

独立した人達の多くはとても楽しそうに仕事をしていますが、それはなぜでしょうか?
 

 

理由は、要素2(環境軸)と5(やりがい軸)にあります。

 
要素2(環境軸)では、自分のリズムで自分の好きな環境で仕事ができるようになります。煩わしい社内の人間関係もなくなり、価値感の合う人たちと連携して仕事ができています。

要素5(やりがい軸)は独立の理由でもありますが、会社員時代とは違って、自分の得意な仕事、好きな仕事に絞り込み、それを通じてお客様の感謝を感じています。自分の裁量で仕事を選び、仕事を自分でコントロールできるのも理由です。
 

人によっては独立して収入が上がったため要素4(評価/報酬軸)が関係している場合もありますが、やはり何よりも要素5(やりがい軸)を強く感じられるのが、独立して楽しい理由のようです。

 

中小企業はどの要素を強めるべきか

 
中小企業では、特に要素2(環境軸)・5(やりがい軸)を高めるのが現実的です。

とりわけ要素5(やりがい軸)をしっかり作り上げることが大切です。

 

要素2(環境軸)

 
環境軸はお金をかけずに色々な工夫ができます。

ライフステージ等に応じた働きやすさの提供はもちろんのこと、何よりも社内の人間関係がいいことほど効果的なことはありません。

上司部下、同僚、それぞれの人間関係が良ければ、会社に行って一緒に仕事をするのが楽しくなります。

もし会社を辞めようと思って悩んでも、そのつながり1つ1つが抑止力になります。

社内の良き人間関係は最高の良薬とも言えるでしょう。

 

要素5(やりがい軸)

 
「やりがい軸」は大手企業を離職したり独立した人が最もメリットとして感じているように、重視しない人がほとんどいません。働く人誰にとっても大切な要素です。

どんな人でも自分のやった仕事が誰かの役に立てば嬉しいし、感謝されたら「もっと頑張ろう!」と思えます。

よって、お客様に喜んでもらえる自社の強みがあるビジネスに絞ること、仕事の価値・やりがいを社員に伝え、社員自身が自分の仕事の意義を感じる機会が必要です。

 
若手社員に雑用ばかり与えていたら勿体ないです。やりがいも成長感もありません。どんどん骨太の仕事を与え、一定の裁量も与え、チャレンジングに仕事をしてもらいましょう。

 

その他の要素

 
要素1(事業/会社軸)は高いに越したことはありませんが、市場環境やビジネスモデルなど考慮すると優位性のある魅力を打ち出すのが難しい場合もあります。

要素4(評価/報酬軸)は生産性向上の努力ともに確実に高めていく必要はありますが、相対的に魅力ある水準に届くまでは時間がかかります。

よって、要素1と4に関しては「低すぎる」ということがないレベルにまで達していれば良しとし、要素2(環境軸)と要素5(やりがい軸)を優先的に高めていくのが多くの中小企業におすすめです。

 

社員が活躍し、辞めない環境づくり

 
社員が「今ここで働く理由」の5つの要素から、社員が活躍し、辞めない環境をどのように作っていけるかを考えてみました。
 

自社が抜きんでて優位性があると言える要素をしっかりつくること。

5つの要素の強弱バランスが、社員の求める傾向にマッチすること。

強みではない要素においても致命的にならないよう、一定以上の水準に整えていくこと。
 

これぞという要素が難しい中小企業においては、とりわけ要素2(環境軸)と5(やりがい軸)を高めることに力を入れてみてください。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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