いつも目の前の仕事に追われてばかりで、本来やるべき仕事が進まない「 仕事に追われる人 」がいます。
次々に降りかかる問題に対処することで目一杯となり、仕事に自分の時間をコントロールされてしまっている状態です。
自分で仕事をコントロールしないが故に、そこから生じる問題に対処していくだけとなり、いつまで経っても「目の前にある仕事の対応」から卒業できません。
今週のブログは、「仕事に追われる人」の原因を究明し、そこから卒業するための指導方法についてお伝えします。
「仕事に追われる人」とは?
仕事は本来自らコントロールすべきものです。
自分で仕事の計画をたて、そのスケジュールに沿って進めていきます。
ところが突発的・予期せぬ事態が起きると、本来進めるべき仕事が滞ってしまうことがあります。
人はここからの対応で2つに分かれます。
それでも立て直して自分でコントロールする状態に戻せる人と、
そのままずるずると受け身のまま更に発生する仕事に流される人です。
後者の受け身のまま仕事に流されていく人が「仕事に追われる人」です。
「 仕事に追われる人 」の典型例
- 作成した案内書類に不注意によるミスが発覚
- ミスした資料がそのまま各部署に配布されてしまっていたので、その訂正に追われる
- ミスだけでなく、そもそもの資料が分かりづらいので、各部署から問い合わせが増え、その対応に追われる
- 問い合わせされる質問への回答を用意していなかったので、上司に相談する
- 上司が出張に出ているため、なかなかつかまらず、回答を返すのに時間がかかり、現場から催促される
- そうこうしているうちに、次の仕事の期限が迫り、そちらの対応も疎かになってしまう
このように、仕事のミスや精度の低い仕事をきっかけとして、想定外の仕事が次々増幅し、手の付けられない状態に向かっています。
若手社員に限らず、ベテラン社員でも多く見られる問題です。
マネジャー職位の「 仕事に追われる人 」の典型例
- 新しい業務システムの導入に関して説明会を行ったが、ぎりぎりになって準備したので説明が要領を得ず、皆の理解が不十分なまま本稼働に突入してしまった
- その後、利用方法などについて各部署から質問が殺到
- チームメンバー3人で対応するが、3人間の情報共有が不十分であったため、それぞれが同じ質問に対して異なる回答をしてしまい、現場がさらに迷ってしまう
- 受けた質問をもとに、説明マニュアルの作成にとりかかるが、本来決めておくべき事が曖昧なままだったため、説明マニュアルの内容が固まらない
- 部長に相談したが、「説明会のやり方が悪かったのではないか。そもそも私は説明会の内容を事前に相談されてない」と叱られ、突き放されてしまう
- マネジャーは各部署責任者に頭を下げて回るが、完全に信頼を失ってしまった
このような非効率な仕事の習慣は、若手のうちに気づいて修正すれば大きく改善しますが、ベテラン社員になってからでは直すのもなかなか大変です。
仕事に追われる人 と 仕事がスイスイ進む人の違い
例えば人事異動で新しい人が着任した際、前任と後任の労働時間が全く違うことがあります。
同じポジションで同じ役割であるにもかかわらず、前任者はやたら残業が多かったのに対して、後任は毎日定時帰社できているという状態です。
これは「同じ仕事であっても、誰がやるかによって要する時間が全く異なること」を示しています。
では、同じ仕事でも手際よく終わる人と残業して仕事に追われる人の違いはどこにあるのでしょうか?
その違いを生み出す主な要因を考えてみました。
1. タスクの数
2. タスクの進め方(協働タスク編)
・入口での目的及びゴールの確認
・関係者の役割明確化
・関係者への適切な情報共有
・キーマンとの打合せや情報収集
・不明点は早めに確認
3. タスクの進め方(個人タスク編)
・最初に設計する
・1つの仕事を細切れにせず集中してやる
・仕事の在庫をもたない
・タスクリストの管理
4. 職務遂行能力の差
・知識・経験
・集中力
・論理的思考力
・聞く力・伝える力
・PC等の操作スキル
1つずつ詳しく見ていきましょう。
タスクの数
あなたも自分がやらなければならない仕事をタスクリストとして持っていると思います。
そのタスクの数はシンプルに労働時間に直結するので、コントロールが必要です。
自分がやるべきタスクが増えるのは当然ですが、やらなくていいタスクまで引き受ける人がいます。
例えば
■ 必ずしも出る必要のない会議へのお付き合い参加(参加はするけどその場にいるだけ)
■ 本来自分の仕事ではないのに頼まれたら断れずついつい引き受けてしまった仕事
■ 過去からの習慣で毎週作っているが実は誰も見ていない資料 など
このような不必要タスクを積み重ねると、仕事量はとめどなく増えます。
自分が責任をもつべき仕事が増えるのは避けられませんが、同時にタスクの数をいかに減らすかを常に追求すべきです。
タスクは油断するとすぐに増えていきますので。
タスクの進め方(協働タスク編)
1つ1つのタスクをどのように進めるかも仕事の効率を左右します。特に関わる人とどのように協働していくかは大きく影響します。
入口での目的及びゴールの確認
仕事を引き受ける最初が肝心です。
目的やゴールを曖昧にしたまま受けてしまうと、後で手戻りが発生し、膨大なロスの原因となります。
仕事を受けるタイミングで相手からしっかり確認する必要があります。
関係者の役割明確化
複数の人が関わるタスクの場合、お互いの役割を明確にしておかないと、後でぽっかり漏れが出たり、仕事が被ってしまったり、迷走の要因となります。
入口でそれぞれの役割をしっかり決めることはもちろんですが、進行途上においても状況が変わってくるので、適宜見直す必要があります。
関係者への適切な情報共有
タスクに関連する情報は速やかに関係者に共有する必要があります。
「後で伝えよう」と思っていても大抵は忘れます。
情報共有が悪いと余計な仕事が増えたり、連携プレーに支障をきたすことがあるので、「情報入手→即共有」を習慣にしたいですね。
キーマンとの打合せや情報収集
タスクを進める上でキーマンとなる人には、早めに情報シェアしたり、打合せの時間をとって意見を聞いておくべきです。
7~8合目位まで進んでからキーマンが真逆の見解であることが分かると、迷走が甚だしくなります。
不明点は早めに確認
タスクを進めるために必要な情報があるならば、関係者から早めに収集が必要です。
不明な情報をいつまでも確認しないままタスクを進めていくと、それまでやってきた仕事が全て無駄になるようなロスが生じかねません。
タスクの進め方(個人タスク編)
前段では同僚と協働する上での留意点をお伝えしましたが、ここでは個人が自分の仕事を進める上でスピードと質を左右する要素についてです。
最初に設計する
自分の仕事の進め方を最初にざっくり設計しましょう。
■ アウトプットはどのようなものか
■ どの作業をいつまでに終えるか
■ 調査が必要ならばどのような調査を行うか
■ 誰かと相談する必要があるならいつ相談するか
■ 会議を招集するならいつ招集するか
■ 誰の承認を得る必要があるか
まずはこれらを頭の中にデザインしましょう。
その段階でタスクを進める上での課題や難所が大方想定でき、業務をスムーズに進める助けとなります。
1つの仕事を細切れにせず集中してやる
どんな仕事も細切れで進めるより、まとまった時間をとって一気に進めた方が効率が上がります。
特に「考える仕事」、「頭を使う仕事」は集中して取り組む時間をとりましょう。
忙しいからといって、細切れに時間をとって進めようとすると、更に余計な時間がかかり、自分の首をしめることになります。
仕事の在庫をもたない
業務効率が悪い人の多くは、仕事の在庫を抱えています。
在庫を増やす仕事とは以下のようなものです。
■ 他人から質問メールが来た際、すぐに答えられるにもかかわらず、返信を後回しにする
■ 会議でもう一押し議論すれば決まることを「いったん持ち帰り次回検討」とする
■ その場で次回打合せスケジュールを決めればいいのに、あえて後で日程調整の時間をとる
■取りかかった仕事を完結させず、処理途中のまま次の仕事に移る
このようなことは避け、とにかく仕事の在庫を抱えないことが肝心です。
自分に来たボールはさっさと投げ返しましょう。
ボールを持てば持つほど管理しきれなくなり、他人に催促されてやっと片付ける状態になってしまいます。
タスクリストの管理
タスクリストをどのように管理するかは人それぞれ型があります。
私の場合、Googleカレンダーに「打合せ」「集中して行う作業の予定」「急ぎタスク」をあらかじめ記入しておき、基本的にその時間に沿って1日の仕事を進めます。
別途、緊急度は高くないけど重要なタスクが書かれたリストを作成しており、合間時間を使いながら順次対応します。
リストは毎日見返して、漏れや遅れがないか確認します。
その他、メールで来る依頼や返信が必要なものは、極力その場で返します。
返せないものは受信トレイにそのまま残し、一日が終わる時にトレイが空っぽになるように心掛けています。
管理方法は人それぞれ自分に合ったやり方がいいですが、仕事に漏れ、忘れが出る人はタスク管理方法を見直した方がいいでしょう。
職務遂行能力の差
同じ仕事をいかに早く、効率よくこなせるかは、本人の能力も大いに関係します。
知識・経験
知識・経験があれば、わざわざ調べなくても進められます。
迷った時の判断も的確に行えます。
集中力
同じ1時間であっても、脇目もふらず集中できる人がいる一方で、途中で集中力が途切れてしまったり、一服しないと持たない人がいます。
この二者は、時間あたりでこなせる仕事量と質(=生産性)が全く異なります。
論理的思考力
現状の問題をロジカルに分析し、原因の本質を抑えられれば適切な対策をうつことができます。
MECE思考で検討課題の漏れをなくす観点も必要です。
論理性が弱く感覚的に進める人は、後で大事なポイントが抜けてしまうなどのロスが生じがちです。
聞く力・伝える力
これは業務効率において最も重要な要素と言えます。
相手の意図を正しく理解できずに仕事を進めると、その誤解が原因でタスクの方向性が全くずれてしまうことがあります。
自分の仕事の進捗を関係者に正しく伝え、適切に情報共有する伝達力も欠かせません。
伝え方が上手くないと、話を誤解され、やはり仕事の方向性がずれてしまいます。
PC等の操作スキル
基本的な能力ではありますが、意外とできていない人が多くいます。
効率的な入力作業、パワーポイント等の効率的な作成、エクセルでの効率的なデータ処理、相手に見やすい資料の作成など、PC操作スキルによっても仕事のスピードと品質に大きく差が出ます。
まとめ
同じ仕事でも誰がやるかによって、かかる時間と仕事のクオリティは全く異なります。
「A君は仕事の効率が悪くて残業してばかり」と言われる社員があなたの会社にもいませんか?
そしてそのA君に対して「君は仕事の効率が悪いから、もっと改善するように」という指導だけでは、本質的には何も解決しません。
仕事の効率が悪い人、仕事が遅い人には相応の原因があります。
A君の原因がどこにあるかを上司とA君の間で点検し、1つ1つ問題点を解消してはじめて、A君の仕事の効率は改善していきます。
ぜひ上記のリストを参考に、A君のような社員の業務効率改善を進めていきましょう。
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