先週のブログでは、「 チームビルディング 【前編】チームビルドの必要性と効果的なタイミング」と題して、チームビルディングに取り組むべきタイミングについてお伝えしました。
良いチームを作るには適切なチームビルディング施策が必要ですが、多くのマネージャーに置き去りにされがちなものこそチームビルディングです。
マネージャーの仕事は、日常的な業務に追われ時間やリソースの制約がある・・・ということも承知しています。
しかしチームビルディングに気を配らないと、効率性や生産性の低下、メンバーのモチベーションの減退などさまざまな悪影響をもたらす可能性があるため、ぜひ意識して取り組んでいただきたい事です。
今週のブログは、具体的なチームビルディングのやり方についてお伝えします。
目次
チームビルディング は特別な活動ではない
「チームビルディング」というと、横文字ということもあり、何だか難しく感じたり、野外アクティビティみたいなものをしなければならないと思う人もいるようです。
しかし実際は難しく考える必要はありません。
より良いチームにするための活動であれば、すべてが「チームビルディング」となります。
参考までに、前回のブログでもお伝えしたように、良いチームとはこのようなチームのことです。
良いチームを構成する要素
- チームの明確な目標がある
- 個々の役割が明確である
- 目標に向けてお互いが(時には自分の役割を超えて)協力し合っている
- コミュニケーションをしっかりとっている
- 上手くいかない時は密に意思疎通して対策を練る
- 自ら学びチャレンジし、自己の能力を高めている
- 皆が目標実現に向けた強い意志・熱意をもっている
コミュニケーションがチームづくりの生命線
良いチームづくりにおいて、コミュニケーションの質ほど大事なものはありません。
そもそも「コミュニケーションが悪いのに良いチーム」というのは存在しえません。
MIT(マサチューセッツ工科大学)組織学習センターの創始者であるダニエル・キム氏が提唱した「組織の成功循環モデル」というものがあります。
これによると、組織改善のステップの1番目は「関係の質」です。
それを高めると「2. 思考の質」の向上につながり、さらに「3. 行動の質」が高まり、最終的に「4. 結果の質」につながるというもの。
良い組織の出発点は「関係の質」にある、というのが重用なメッセージです。
また、職場のコミュニケーションには段階があります。
例えば新しいメンバーが集まって新組織ができたとしたら、最初から「高い目標に向けて協力し合う組織」とはなりません。
下図のように、お互いを知る段階から、理解を深め、共感し、共に何かを作り上げていくというように、組織は徐々にステップアップしていきます。
この初期の段階(↑)をすっ飛ばしてしまったら、なかなか良いチームは作れません。
さて、ここからはマネージャーであれば誰でもトライできるようなチームビルディングについてお伝えします。
大小さまざまな方法があるので、あなたの職場やメンバーに適した方法からぜひ試してみてください。
どれか1つで解決!ということではなく、チームの課題に応じて、複合的かつ継続的に進めていくことで効果が生まれます。
チームビルディング 【チーム初期の相互理解を深める】
同じチームのメンバーのことをお互いどれだけ知っているでしょうか?
現代の職場は「個業」に陥っていることがよく見受けられます。1人1人が個人商店的に仕事をしながら、コミュニケーションは必要最低限・・・という状態です。
しかし、良いチームになるためにはまずお互いを知ることが出発点となります。
お互いを知る方法としては、いくつかのパターンがあります。
いわゆる一般的な自己紹介
名前、部署、入社年次、仕事内容、前職などの経歴、出身地、趣味などを紹介し合うものです。
入口の理解としてはとても大事なもので、お互いの共通点などが見えると親近感がわきます。
一歩内面に踏み込んだ自己紹介
お互いの性格や考え方など内面をより深く知るための自己紹介です。
相手をより深く知ると、その人の発言の背景や、興味の有無、好き嫌い、悩み、大事にしていることなどが分かるので、日常のコミュニケーションにおいても相手の内なる思いや考えを察する量が増えていきます。
内面に踏み込んだ自己紹介のテーマとしては、下記のようなものがいいでしょう。
- 「なぜこの会社に入社したか」
- 「仕事を通じて実現したいことは何か」
- 「好きな言葉とその理由」
- 「これまで他人からどのような性格と言われたか。それを自分自身どのように受け止めているか」
- 「大事にしている価値観は何か。またその価値観が形成された背景」
- 「過去の転職の理由と次の職場を選んだ背景」
- 「子供の頃どんなタイプだったか」 など
テーマ的にいきなり聞かれると重たいものもあるので、あらかじめ「今度、〇〇のテーマで自己紹介をしましょう」と伝えておき、時間を確保してじっくり紹介し合います。
カジュアルなテーマで相手の理解が深まることもあります。
「これまでの旅行で特に思い出に残っている場所や風景」「好きな本や漫画」、今風でいくなら「推し活」など、じっくり話を聞くのも面白いです。
診断ツールの活用
今は様々な種類の性格診断や強み診断、行動特性診断などのツールがあります。
それらの診断テストを受けて結果をお互いに共有し合うと、これまで気づかなかった相手の特性が理解でき、コミュニケーション上意識すべき点もわかり有用です。
ex.
論理を重視する人には結論の見えない会話や感情の赴くままの相談はしない
共感できるかが大事な人には情熱を伝える など
診断テストは自分自身を理解する助けにもなります。
チームビルディング 【日常の+αコミュニケーションでコツコツ関係深化を図る】
日常の仕事の中で、コツコツチームビルディング活動を積み上げていくことも可能です。
挨拶、声がけ
朝の挨拶やちょっとした声がけでチームの雰囲気は変わります。
目を合わせて多少笑顔を見せあうだけで、お互いの距離が縮まります。親近感がわきます。
朝から挨拶もせず壁を作ってしまったら、昼間の仕事でも声をかけづらくなるでしょう。
毎日の朝礼等
1~2人の担当者を決め、最近良かったこと、嬉しかったこと、新たな発見や気づきなどを1分程度で話してもらいます。
繰り返しているうちに、チームメンバーそれぞれへの理解が深まり、共感できることも多くなっていきます。会話が活性化する糸口にもなります。
会議の前の雑談
会議の前に毎回くだけた雑談が数分あるだけでも組織の緊張状態は緩和され、お互いが近づく効果があります。
ランチ
ランチをいつも同じ人ととるのではなく、例えば毎週水曜はチーム内でランダムに組み合わせてランチに行ってもらうと、チーム内のコミュニケーションの偏りが是正されます。
お互いが行っている仕事を共有
朝礼などで仕事の内容を話し合うだけでも、理解と配慮が進みやすくなります。
「そういうことなら僕ができることで助けてあげよう。有用な情報があれば伝えてあげよう」
という気持ちも芽生えます。
逆に何も知らないと、
「あの人は大して仕事がないはずなのに私にどんどん業務を振ってくる・・・」
「あの人は私と関係のある仕事をしているのに、どうして何も伝えてくれないのだろう・・・」
などと不安や不信が増大しがち。
相互共有や質問を通じて互いの状況を知るだけで組織の安定感が増します。
チームビルディング 【オフサイト活動を通じてコミュニケーションを加速させる】
日中の仕事とは別の時間を使って、比較的簡単にチーム内の理解促進、協力姿勢を高める方法もあります。
カジュアルな雑談タイム
仕事のピークタイムを外して少し余裕のある時間帯に、チームメンバー同士でカジュアルに語り合う場です。
普段あまり言えなかったけど感じていることとか、ちょっとした改善アイディアとかを、上下関係に捉われずフランクに話せるといいですね。
チームの目標の再確認や、普段マネージャーが良く言っていることの背景をしっかり説明するとか、そういう活用方法も有効です。
お互いの認識ギャップを埋めたり、誤解を解いたり、ベクトルを揃えるきっかけになります。
飲みゅニケーション
オフサイトの代表的なものは言わずと知れた飲みゅニケーション。
お酒を飲んで、いつもよりリラックスした気持ちで会話をすれば、日中には見えなかった個性や面白味に気づけます。
→ コンパ
飲みゅニケーションの中でも、京セラ創業者の稲盛氏が提唱していたのは「コンパ」です。
飲んでただ世間話や馬鹿話をするのではなく、仕事に関するテーマについて熱く議論を交わす場です。
リラックスして上下関係など気にせず、本音の議論ができればとても効果的な場になります。
勉強会
技能や知識の向上などを目的とする勉強会は一石二鳥です。
学習効果があるだけでなく、メンバー同士一緒に学んでいると同士のような気持ちが芽生え、普段の仕事における協力姿勢も強まります。
読書会
本を指定してお互い読み込んだ上で学びや感想を共有し合う場です。
仕事に直接つながる本でもそうでない本でもいいと思います。
他人の感想を聞くと、モノの見方の多様性、歩んできた経験の違いによる受け止め方の違いなどを感じることができ、多様性を受容しやすくなる効果があります。
読書習慣は思考力や創造力を鍛える効果もあります。
振り返りミーティング
月末や半期末などに皆で集まり、その期間の振り返りや成果を共有し合う場も有効です。
日常的にはどうしても同僚が何をやっているか、どんな苦労をしているかを知る機会が少ないので、このような機会で理解を深めることでチームの一体感が増します。
チームビルディング 【職場をポジティブムードにする】
職場が明るい雰囲気で皆が前向きであるほどチームの結束力は強くなります。
高い壁に直面して皆が苦しい時こそ、ポジティブな雰囲気づくりがチームを支えます。
ポジティブストローク
チーム内におけるポジティブストロークを増やしてみましょう。
ポジティブストロークとは「感謝する、励ます、褒める、期待する、笑顔を見せる」などの言動です。
ポジティブストロークをもらった人は幸福度が増し、次への意欲が湧いてきます。
特にリーダーは意識的にポジティブストロークを使い、チーム内の雰囲気をよくしていきましょう。
サンクスカード・ありがとうポイント
以前であれば、例えば月に1回、自分が最もお世話になった同僚にお礼のメッセージを書いた紙のカードを渡す会社がありました。
今はクラウドツールが出ており、同僚同士「ありがとう」をオンライン上で伝え合うと、それに応じてポイントが加算され、一番「ありがとう」を受け取った人に表彰するなどの方法もあります。
「ありがとう」を乱発し過ぎる弊害や、導入当初の盛り上がりが徐々に停滞するなど運用面の難しさはありますが、上手く使えば有効なツールです。
賞賛・表彰
いい仕事をした人は皆の前で賞賛しましょう。
管理者はメンバーの仕事ぶりをよく見て、いい仕事や成長が見られた時はそれを言葉にする。本人を褒めるもよし、ミーティングの場で皆の前で褒めるもよし。
言葉にすることに大いに意味があります。
とくに四半期や半期の区切りの場では、優秀社員や大きな成長を遂げた社員をぜひ表彰で称えましょう。
表彰のいいところは公になることです。
ボーナスを沢山支給した社員の名前は公表されませんが、表彰は全体の前で発表されるので、本人は名誉を感じ、周りのメンバーには刺激になります。
この場合「賞与を10万円アップする」よりも、10万円のMVP表彰を与え、その金額を含めて社内に公表した方がインパクトは大きいです。
チームビルディング 【組織に問題が生じた時の解決手法「雨降って地固める」】
組織にはメンバー同士の対立や、上司に対する不信、方向性の乱れなど様々な問題が生じます。
問題が起きた時は、すぐに対処し、チームの混乱を収拾し、結束力を回復しなければなりません。
そのような局面で行うチームビルディングは「雨降って地固める」ことを目指しましょう。
不信、不満、疑念の解消
チームメンバー間で不信、不満、疑念などが溜まっている場合、一度吐き出してもらうことが大事です。
ただし文句の言い合いみたいになっては良くないので、吐き出した上で建設的な場にもっていきましょう。
例
チームメンバー間で分断や相互不信があった場合、ファシリテーター役が間に入り、解決のためのセッションを行います。
↓
セッションの目的は分断を解消し、協力関係にもっていくという事をしっかり伝えた上で、それぞれの言い分を出してもらいます。相手から自分達がどう見られているかも想像してもらいます。
↓
その上で互いの言い分に対する意見交換をします。
途中で相手方の立場になり替わって議論してみたり、対立両側の構成員を混成チームにして解決方法を議論させるなど、いくつかの手法を取りながら解決の方向性を探っていきます。
上司に対する不信や不満
上司に対する不信感が高まり支障をきたしている場合、アシミレーションという方法をとり、ファシリテーター主催の場で上司には席を外してもらい、部下から上司に対する意見を出してもらいます。
ファシリテーターがその意見を取りまとめ、後ほど上司にフィードバックします。
上司はそのフィードバックを、自分の上司にも見てもらった上で、改善策を考えてもらいます。
意見の対立
チーム全体の意見が真っ二つに割れてメンバーの行動に統一性がなくチグハグになっている場合、リーダーも決めかねている場合があったとします。
この場合、ディベートも有効です。
A対Bで対立があるならば、AのメンバーはBの意見の立場で、BのメンバーはAの意見の立場で議論してもらいます。
その上で、最後はフラットにどちらの方向に進めるべきかを議論します。
組織を揺るがす問題が生じた場合には、その問題に応じた対応が求められます。
上記に限らずさまざまな方法がありますが、一番良くないのは放置です。
やり方が多少下手でも全然構いませんので、問題を何としても解決しようという強い意志をもって動くリーダーがいれば、いずれ良い方向に転じていくでしょう。
チームビルディング 【規律と秩序のあるチームを作る】
良いチームは規律のあるチームでもあります。
チームビルディング活動を頑張って相互理解が進んだとしても、規律を守らない人がいたら組織の信頼と信用はあっという間に崩れてしまいます。
リーダーは常に規律が守られているかを意識しておかねばなりません。
チームメンバーが必ず守るべきルールを明確にし、口酸っぱく伝える必要があります。
例
「会議には遅刻をしない」
「相手からの依頼を放置しない」
「思ったことは率直に伝える」
「他人を尊重し陰口などを言わない」
チームビルディング 【イベントやアクティビティで結束力強化】
合宿
何らかのテーマを皆で議論して解決するために合宿を行う会社もあります。
オフィスでの議論だと時間的制約や他の仕事に気を取られてしまうので、思い切って場所を変え、たっぷり時間をとり、リフレッシュした気持ちで参加できるのがいい所です。
2泊3日の全てが仕事の議論だと疲れてしまうので、最終日は観光に充てたり、一部は野外アクティビティにあてるというケースもあります。
社員旅行
かつてほど盛んではなくなりましたが、社員旅行で親睦を深めるのもお互いの絆が強まります。
今でも年に1回の社員旅行を行っている会社もあります。
家族帯同にすれば、上司が奥さんに平身低頭の姿が垣間見えたり、普段厳しい人の家庭的な一面が見えたり、新しい発見もあるでしょう。
チームビルディング 研修
大自然に囲まれた研修所等に行き、さまざまなアクティビティを行ないながら、チーム結束の大事さ・意見の違いの理解と許容・助け合いの大事さなどを学んでいくものです。
アクティビティは、共同作業系のものが多いです。
アスレチックのようなアクティビティをチームで競う、皆で何か作品をつくる、チームの総力を結集して競うようなゲーム、ミニスポーツ大会など色々なものがあります。
夜は焚火を囲んで対話するなんていうのも結構定番ですね。
上記のイベント、アクティビティ系のチームビルディングは、予算も時間もかかるので細やかな設計が重要です。
またチームビルディング研修をやると、その当日3日間は熱狂があり皆の意識が変わったような感覚が得られますが、大事なのは戻ってからの日常の仕事の姿勢です。
戻った翌日以降、日々の仕事の中でチーム力を高めるための行動を実践しない限り、研修効果は一過性のものになってしまうので要注意です。
まとめ
2回のブログでチームビルディングについて考えてきました。
前編では「どんな時にチームビルディングが必要となるか?」
今回の後編では「チームビルディングの具体的なやり方」をお伝えしました。
具体的な方法をご覧になって感じられたと思いますが、特別なものはあまりありません。
ほとんどのチームビルディング手法は誰でもその気になればできるものです。
何となく自分のチームに合いそうだなと思うものがあれば、ぜひトライしてみてください。
組織は生き物なので、何かをきっかけに雰囲気が良くなったり、逆に悪化したりします。
一番良くないのは、組織の状態がよくないと分かっているにもかかわらず、何も手を打たないことです。
ずるずる組織が悪い方向に沈んでいってしまいます。
チームを良くするための工夫は身近な所にいくらでもあるので、何か意識して意図的にやってみること。
何よりメンバーと共にいいチームを作ろう!と本気で思うこと。
失敗も多々あると思いますが、その積み重ねを経たマネージャーこそ、真のリーダーシップを身に着けることができます。
チームビルディングには絶え間ない取り組みが求められますが、その結果として強固な組織と素晴らしいチームを築くことができるでしょう。
こちらの記事もおすすめです。