部下を持つ人にとって「 上司と部下の関係 」は、しばしば悩ましい問題です。
複数の部下がいる人ならば、それぞれに公平に接するのが理想ですが、個人的な感情もあって、相手によって接し方が異なることもあります。
人間である以上、仕方のない面もあるでしょう。
今週のブログでは、上司は部下に対してどのようなスタンスであるべきなのか、典型的な問いを通じて考えてみたいと思います。
取り上げる質問は以下の3つです。
「上司は部下と友達関係になっても良いか?」
「部下に接する時間は均等であるべきか?」
「年上の部下には特別な配慮が必要か?」
目次
上司は部下と友達関係になっても良いか?
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回答:Yes but No
インテルの中興の祖であるアンドリュー・S・グローブによる著書「ハイアウトプットマネジメント」に、この問いに対する興味深い見解があります。
「友達関係になってよいか否か?という」観点からマネジメントの在り方を説明するのは非常にユニークであり、かつリアルで分かりやすいと感じたので紹介します。
本で書かれているのは以下のような内容です(要約)
「特定の部下と友達となって一緒に遊びに行ったり家族ぐるみの交流をしても構わない。
ただしその部下の業績が悪かった時に、情に流されることなく厳しい評価を下せることが前提である。
友達であるからといって評価が甘くなるならば、友達関係になってはいけない」
また、こうも述べられています。
「友達としての情と、客観的で厳しい評価を両立できる人もいるが、そうした人は必ずしも多くない」
さて、あなたはいかがでしょうか?
アンドリュー・S・グローブが求めているのは、なかなかハードルの高いことだと思います。
親子であれば、子供に愛情をかける一方、子供のために厳しいことも言わなければならないし、叱るべき時は厳しく叱る必要があります。
これと同じことが部下にもできるでしょうか?
部下と表面的に仲良くつるんでいる程度だとしたら、恐らく厳しいことは言えないでしょう。
友達として深く交流し信頼するとともに、その部下の将来のために厳しいことも言える、時には鬼にもなれる。
そのような理想的な関係を築けるならば、友達関係と上司部下の関係が両立するのだと思います。
部下に接する時間は均等であるべきか?
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回答:いいえ
部下が5人いたら、その5人に均等に時間を使うべきでしょうか。
(この5人同士はフラットで上下関係がないことが前提です)
結論として、定期的な接点は均等が望ましいものの、それ以外はアンバランスでも構わないと思います。
定期的な接点
例えば、週1回の進捗確認ミーティングとか、月1回の1on1といった、あらかじめ日時を決めて定例で行うものは、各部下とほぼ均等に時間を取ることが求められます。
定例で行うと位置づけているにもかかわらず
「部下Aさんとは毎週」
「部下Bさんとは月に1回やるかやらないか」
部下によってこのような差があると、その上司は部下からフェアでない人とみなされてしまいます。
よって、定例的な接点は、多少のメリハリはあれど原則均等で行います。
随時の接点
一方で、部下からの個別の相談事であったり、特定プロジェクトに関する打合せなどの随時の接点では、部下によって個人差が出るのは必然です。
また、小まめに仕事の細部まで指導すべき部下と、ある程度放っておいても自ら動ける部下で、それぞれ時間配分に差がつくのも仕方ないことです。
ただし1つだけ意識すべきは、接する「時間の長さ」に違いはあっても、「会話の頻度」は均等が望ましいということです。
仕事の上で接する時間が少ない部下であっても、上司が遠い存在と思われるのはよくありません。
ちょっとした雑談でも立ち話でもいいし、「◯◯の件は順調?」などの声がけは怠らないようにしましょう。
部下との接点は、時間の長さを均等にすることよりも、会話する回数のバランス(1回当たりが短くても構わない)を重視しましょう。
年上の部下には特別な配慮が必要か?
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回答:いいえ
部下が年上であっても、特別な配慮は不要です。
もちろん基本的な敬語や礼儀は必要ですが、それ以外は年下の部下と同様でいいと思います。
よく「年上の部下にどう接したらいいか分からない」という声を聞きますが、
この背景には、“年下”部下のマネジメント手法と”年上”部下のマネジメント手法には違いがあるのでは?という思い込みが存在しています。
さらに紐解くと、年上という武器に頼って「年下の部下」をマネジメントしているが故に、「年上の部下」のマネジメントに悩む人が多いことがわかりました。
年上という武器に頼るマネジメント
年上という武器に頼るマネジメントとはこうです。
上司:「例のプロジェクトの件、〇〇の対応をしておいてくれる?」
部下:「それだと少しお客様が納得しづらいかもしれません。。」
上司:(内心:まあその可能性もなくはないけど)「いいからそれでやっておいて」
部下:「はぁ、わかりました」(内心:その対応はしない方がいいのになぁ・・・」)
このように、年上である上司の方が権力が強いことを前提に、年下の部下の納得感が得られなくても指示通りやらせるマネジメントスタイルです。
仮に自分の指示が間違っていても、部下が納得していなくても、「自分が年上である」というパワーに依存して相手に強制する方法です。
ところがこのスタイルだと、相手が年上の部下の場合には状況が変わってきます。
上司:「例のプロジェクトの件、〇〇の対応をしておいてもらえますか?」
部下:「〇〇の対応は避けた方がいいのではないでしょうか」
上司:「何とか〇〇の対応で進めてもらえませんか」
部下:「お客様のことを考えると、その対応はやめた方がいいです」
上司:(困ったなぁ・・・)
このように意見を言われた時、年上に対して「いいからやっておいて」とは強制しづらいので、マネジメントに困ってしまうのです。
マネジメントの本来の在り方を考える
ここで改めてマネジメントの本来の在り方を考えてみましょう。
マネジメントのセオリーでは、本来相手の年齢は関係ありません。
「相手の年齢に関係なくマネジメントできる方法」こそが正しいマネジメントです。
正しいマネジメントでは、強制力を使って相手を従わせる方法は王道ではありません。
(稀に使う局面はあるものの、滅多に使うものではありません)
「仕事の目的を伝え、具体的な指示を伝え、相手が理解できるようわかりやすく説明し、相手に納得感を持って動いてもらう。その上で結果を出す」
これが上司の役目です。
- 部下から別の意見があれば、それを受け止めてより良い方策が何かを話し合い、その上で上司として判断して指示を出す
- 仕事としてあるべき解を求め、自分よりいい意見があればどんどん取り入れていく
つまり、マネジメントとは「上司の意見に何が何でも従わせること」ではないのです。
このように考えれば、部下が自分より年上か年下にかかわらず、マネジメントのやり方に違いはないことがわかると思います。
先ほどの例でもう一度考えてみましょう。
上司:「例のプロジェクトの件、〇〇の対応をしておいてくれる?」
部下:「それだと少しお客様が納得しづらいかもしれません。。」
上司:「その可能性もあるね。では、どうしたらいいだろう。何か良い方法はあるかな?」
普段からこのような正しいマネジメントを行っていれば、急に年上の部下を持つことになっても迷いなく対応できるでしょう。
まとめ
多くの上司が「部下との関係性」に悩んでいます。
今回は3つの典型的な質問を通じてその在り方を考えてみました。
「上司は部下と友達関係になっても良いか?」
「部下に接する時間は均等であるべきか?」
「年上の部下には特別な配慮が必要か?」
どの問いにも共通するのは、上司が部下に対して公平で誠実な姿勢を持ち続けることの重要性です。
上司と部下の関係は一朝一夕で築けるものではなく、日々の接し方やコミュニケーションの積み重ねです。
上司として、愛情と厳しさをもちつつ、情に流されることなく管理職の役割を全うすること。
それが組織全体の成長にとって不可欠です。
今回の記事が、少しでも日々のマネジメントに役立てば幸いです。
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