あなたの部署が忙しすぎるのはなぜ?不健全な忙しさを見抜き、生産性を高めるマネジメント

2026.11.05

部署が忙しすぎるときに見るべきなのは、単に「忙しいかどうか」ではなく、その忙しさが成果や生産性の向上につながっているかどうかです。

 

部署のメンバーが常に慌ただしく動いており、忙しすぎる状態にある場合、それをそのまま放置するのは避けなければなりません。 

あまりに忙しい状態が続くと、皆が疲弊し、コミュニケーションも減り、お互いの仕事に無関心になっていきます。
 

それに耐えかねた1人が退職すると、その人の業務の引き継ぎで、他のメンバーの負担が増し、
追い打ちをかけるように2人目の退職が続くと、もはや手の施しようがない状態になってしまいます。
 

こうした事態に陥らないためには、忙しさが限界に達する前から、マネージャーが何らかの対策を打つ必要があります。
 

今週のブログは、あなたの会社や部署の忙しさが健全か不健全かを判断し、生産性を高めながら仕事を見直す考え方についてお伝えします。

 

健全な忙しさと不健全な忙しさ

 

まず確認したいのは、その忙しさが「成果につながる忙しさ」なのか、「時間だけが奪われる忙しさ」なのかという点です。

「忙しい」にも健全な状態と不健全な状態があります。
 

例えば営業部の場合はこのように考えられます。

 

営業部の健全な忙しさ

受注がどんどん増えており、その対応で忙しい

忙しさに比例して売上や粗利が伸びている

新商品の売り出しに伴い業務が増えているが、商品デビュー以降は売上の伸びが期待できる

 

営業部の不健全な忙しさ

営業手法が顧客ニーズに合っておらず、ひたすら営業アポイントを増やして残業しても売上につながらない

営業担当者の商談力が低い状態のまま、数を当たっているが、まったく成果につながらない

顧客に過大な期待をさせて販売したため、販売後のクレームが殺到しその対応に追われている

さまざまな報告書作成など、営業成果に直接つながらない仕事に追われている

 

営業部では、時間をたくさん費やしている割に営業成果につながらないと感じた時こそ「急がば回れ」です。
 

勝算がないまま労働時間でまかなおうとしても、時間投入に見合う効果も持続性もなく、メンバーも疲弊してしまいます。

ここは経営者やマネージャーの出番。いったんスタートラインに立ち返って次のような見直しを行う必要があります。
 

自社の商品サービスが顧客にもたらす価値の見直し、磨き込み

営業担当者のスキル向上

効果的な営業手法、顧客の信頼を得られる営業手法へ見直し

営業活動に集中し、それ以外の業務を極力減らす

1人当たりの売上、粗利を伸ばし、メンバーの給料を上げられるようにする

 

続いて、営業の受注関連事務や契約対応などを一手に引き受ける業務部を例に考えてみます。

 

業務部の健全な忙しさ

部内の各チームで業務効率改善を進めているためとても忙しいが、昨年に比べて、同じ仕事の処理時間が確実に短くなっている

営業とのやり取りのルール化や段取りの明確化で忙しかったが、結果として営業部も業務部も仕事が減り、営業から感謝された

部員自ら改善プロジェクトを立ち上げ、その業務で非常に忙しくなっている

 

業務部の不健全な忙しさ

営業の要望を元にさまざまな改善テーマが発生するが、それぞれのテーマの解決・実運用に到達する前に次のテーマへとどんどん目移りしていき、結果としてどれも形にならない

営業が作成した見積書の情報を見積システムに入力し、その情報を別の顧客管理シートに入力して・・・というように、ファイルやシステム間の転記や照合などの作業のオンパレードになっている

夜遅くまで残業して何とかしのいでいるが、一向に生産性は上がらない

営業側のルール外の特殊対応や期限ぎりぎりの要請などが多く、日々想定外に発生する仕事に追われ、自分の仕事を計画的に進められない

 

業務部のようなバックオフィス系の仕事では、特に管理者のコントロールが重要です。

次のような点をケアしながら、メンバーの業務を適正化していかなければなりません。

 

あれこれやり過ぎて共倒れにならないよう絞る。1つずつ着実に仕上げていく

アンコントローラブルな仕事(急な依頼、急な問い合わせ対応など)に振り回されないよう、業務のルールを明確にする

ルール外の急ぎ対応などを何でも受け入れるスタンスは、結果として非効率が会社に温存され、誰のためにもならないと肝に銘じる

データの転記作業や入力チェック作業などの付加価値を生まない仕事、頭を使わない仕事をできるだけ撲滅し、考える仕事の時間を増やす

1人当たりの生産性を年々高め、メンバーの給与を上げられるようにする

 

「1人当たり・時間当たり生産性」が重要

営業部と業務部を例に、忙しさの健全性について見てきました。

どちらにも共通して重視すべきは「1人当たり・時間当たり生産性」です。
 

「1人当たり・時間当たり生産性」とは、事業活動によって生み出した価値をメンバー全員の労働時間で割ったものです。
 

営業であれば、簡便的に部署の粗利益をメンバー全員の労働時間で割り算すれば目安を出すことができます。

一方で、バックオフィスの場合は粗利の算定が難しいので、同じ業務を昨年より少ない時間でこなせていれば、生産性が向上したと判断することが可能です。
 

どれだけ忙しくなったとしても、「1人当たり・時間当たり生産性」が向上していれば、実入りが増えているので健全な状態です。
 

逆に労働時間が増えたのに「1人当たり・時間当たり生産性」が下がっているとしたら、忙しいだけで成果が増えていない状態です。

それでは社員への還元を増やすこともできず、持続性がない状態と言えます。

 

不健全な忙しさに陥らないために

一度不健全な忙しさに追われてしまうと、その状態から抜け出すのは簡単ではありません。

そのため、問題が深刻化する前から継続的に手を打つ必要があります。
 

「継続的に」というのが重要です。

生産性を阻害する要因は、仕事をしている限り常に発生します。

新しい業務が増えたり、ルール外の対応が常態化したり、以前は必要だった仕事がいつの間にか不要になったりするからです。
 

そこで、マネージャーが意識しておくべき点をお伝えします。

 

業務の廃棄・縮小プロセスを組み込む

仕事は放っておくとどんどん増えていきます。

仕事をしていれば次々と課題が出現するので、それに一つ一つ対応していくと、業務は増える一方です。
 

ところが、業務を減らす話題はまずもって出てくることはありません。

増える話がある一方で減る話がなければ、いずれ業務量は限界に達します。
 

そこで、意図的に業務を廃止したり縮小したりする議論の場を組み込んでください。
 

月に1回、部内で「やめる業務」「減らす業務」を議論する時間を持つのもいいでしょう。

社員の定期的な業務報告書の中に「やる意味がないと思う業務」「投入する時間に対して効果の低い業務」を書き出してもらうという手もあります。
 

大切なのは、そういった議論が起きる場、考える機会をもつことです。

 

1人当り時間あたり生産性を意識させる

メンバーにも「1人当たり・時間当たり生産性」を意識して仕事をしてもらいましょう。

これは、「自分の貴重な労働時間を何に投入するかを真剣に考えてほしい」というメッセージでもあります。
 

何となく気の向くままに、目の前の仕事を片付けるというスタンスからは卒業してもらい

「今日はAとBの仕事をする」

「Aの仕事は4時間で終わらせる、Bの仕事は2時間で終わらせる」

といったように、あらかじめ時間の目安を持って仕事を進めてもらいます。
 

そして、その時間が昨年より、もしくは前月より減っているかを意識してもらいます。

営業であれば、自分の稼いだ月次の粗利を月間労働時間で割った数字を重要指標として見る方法もあります。
 

この数値を業績目標としても設定し、毎月の1on1等の場でも定点観測し、翌月以降の改善策を考えるサイクルを組み込みましょう。

そして「1人当たり・時間当たり生産性」を高めた人の報酬を上げていくところまでつなげてください。

 

作業を「面倒くさい」と思う文化をつくる

業務改善や生産性向上を進める時に大きな壁となるものがあります。

それは、作業を面倒くさいと思わない人たちの意識、非効率なやり方に疑問を感じない人たちの意識です。
 

手間のかかる作業や効率の悪い仕事でも、それを当たり前の仕事として受け入れ、淡々とやる人が実は少なくありません。

その人たちにとってはそれが仕事であり、特段のストレスも感じないので、文句も言わずにやり続けます。

結果として不効率が温存されることとなります。
 

これを打破するには、単純作業や非効率な作業について

「面倒くさいもの」

「やらなくて済むならやりたくないもの」

「やっている限り給料が上がらないもの」

として、メンバーに強くブランディングしていく必要があります。
 

マネージャーが口を酸っぱくして伝えるだけでなく、日報や週報で自分のやった業務を振り返る時に、その業務が単純作業であるか否かチェックをつけてもらうのもいいでしょう。

記録することで、自分が単純作業に費やしている時間が可視化されるので、それをどうやって減らしていくかを考えるきっかけにもなります。

忙しすぎる部署の改善についてよくある質問

Q. 「忙しすぎる状態」に入る前の予兆は、どこを見れば分かりますか?

残業時間よりも、仕事の「滞留」が増えていないかを見ることです。

例えば、着手した仕事が完了するまでの期間が長くなっている、未完了の案件が積み上がっている、予定していた仕事を翌週・翌月へ繰り越すことが増えている、といった変化です。

こうした変化が続くと、表面上は仕事が回っているように見えても、部署の処理能力を上回り始めている可能性があります。

こうした「滞留」を見ることで、忙しさが限界に近づく前に気づきやすくなります。

 

Q. 業務内容の変動が大きい部署では、「1人当たり・時間当たり生産性」をどう捉えればよいですか?

業務内容や難易度が毎月大きく変わる部署では、単月の数字だけで良し悪しを判断すると実態を見誤ることがあります。

その場合は、一定期間での推移を見ながら、投入した労働時間に対してどれだけの成果や価値を生み出せたかを捉える方が適しています。
 

毎月まったく同じ条件で比較しようとするのではなく、仕事量や難易度の違いも踏まえながら、生産性が中長期で上がっているかを見ることが大切です。

例えば、人事部における年末調整業務といった毎年同じ時期に集中発生する業務については、年末調整業務にかかる時間だけを切り出して前年実績と比較するなど、プロジェクト単位で生産性を測るのもいいでしょう。

 

Q. 「1人当たり・時間当たり生産性」を高める際、業務品質とのバランスはどう考えればよいですか?

「短い時間で終わらせること」だけが目的になると、必要な確認まで省いたり、顧客対応の質を落としたりする可能性があります。

1人当たり・時間当たり生産性を高めるには、価値を生み出している仕事の時間を増やし、逆に価値を生み出さない時間(単純作業や重複作業など)を減らすというメリハリで考える必要があります。

価値を生み出さない時間を極力減らし、価値を生み出す時間に移していけば、業務品質には悪影響を出さずに改善ができるでしょう。

 

まとめ

忙しい部署を立て直す際に大切なのは、忙しさそのものを問題にするのではなく、その忙しさが成果と生産性につながっているかを見極めることです。
 

部署が忙しいからといって、それ自体が悪いわけではありません。

判断の軸になるのは、その忙しさによって「1人当たり・時間当たり生産性」が上がっているかどうかです。
 

マネージャーは、メンバーがどれだけ忙しく働いているかではなく、限られた時間からどれだけの価値を生み出せているかを捉える必要があります。

そして「1人当たり・時間当たり生産性」を継続的に高め、その成果をメンバーの給与にも還元できる状態をつくることが重要です。
 

忙しさを当たり前として受け入れるのではなく、「この忙しさには意味があるのか」を問い続けること。

それが、部署を不健全な忙しさから抜け出させ、持続的に生産性を高めていくために欠かせない視点ではないでしょうか。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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