人事部門が 社員育成 の施策を検討する際、「機会の平等」に捉われてしまうことがあります。
学校教育(特に公立の学校教育)は、基本的には全生徒に平等に教育の機会を提供することを使命としていますが、企業はそうではありません。
企業における人材育成は、会社の発展に貢献する優秀な人材を重点的に成長させる一方で、伸びしろが限られる人材には必要以上の教育投資を避けるべきです。
つまり投資対効果を踏まえた人材育成計画を考えなければなりません。
本日のブログでは、全社員に平等に行うべき教育と、会社の成長を加速させるために優れた人材の成長を加速させる教育についてお伝えします。
目次
全員平等に行う社員教育
採用した社員には誰しも一定レベル以上に到達してもらう必要があるので、基礎的な教育は広く全員に行う必要があります。
典型的な例としては、新入社員研修や初めて後輩を持つ人向けの研修、初めて管理職になる人向けの研修などの階層別教育です。
また、機械操作スキル、PCスキル、接客スキル、システム操作知識などの業務に不可欠な知識やスキルの教育も同様です。
これらは対象者を選別する必要はなく、該当者全員に対して実施されるべきものです。
全社員のスキルを向上させて組織全体の能力を底上げし、企業の成長に寄与することが期待できるためです。
「不平等」に行う社員教育
一方で、会社の成長を加速させるためには「優れた人材の特別な育成」にも重点を置く必要があります。
会社の成長、とりわけ非連続の成長を支えているのは、社内の中でも特に優秀な人材たちです。
彼らが持つ抜きん出た力、リーダーシップをどれだけ活かせるかで、会社の未来が大きく変わってくるとも言えます。
そのような優秀な人材は、平均的な育成方法ではポテンシャルを十分に生かし切れません。
彼らには大きな成長のきっかけとなるような特別な機会を提供し、修羅場を経験させ、リーダーシップを発揮させる場を与え、質の高い教育を施すべきです。
具体的な育成方法を説明します。
異動、抜擢などによる新たな経験
視野を広げ、視座を高めるには、本人の経験の幅を広げて、色々な環境で色々な人と仕事をさせることが重要です。
同じ部署で日々同じような仕事を同じメンバーでやっていると、マンネリ化し、刺激が減り、クリエイティビティが失われ、新しい事にチャレンジするマインドが減退しがちです。
コツコツ継続する仕事ももちろん大事ですが、優秀で成長意欲の高い人材は、停滞する環境に長くいると飽きてしまい、力を持て余し、能力を活かせなくなります。
これは!という才能ある人材がいる場合、同じ環境にずっと閉じ込めることなく、次のような経験をどんどんさせていきましょう。
- 部署異動
- 新商品開発プロジェクトリーダーへの抜擢
- 新規事業責任者への抜擢
- 社内横断プロジェクトの責任者
- 買収した子会社への出向
- 他社との共同事業の責任者への抜擢
- 社長側近への登用
など
こうした新たな任務について苦労しながら一定の成果を出したら、更に新たな機会を与えていくことで、能力が飛躍的に高まっていくでしょう。
一般的に中小企業は職種間異動が少なく、それぞれの職種における専門性を重視します。
しかし会社の将来を担う突出した人材に対しては、専門性を高めるだけでなく、職種を超えた普遍的で汎用性の高いスキルを磨いていくことも大いに意味があります。
選ばれし者だけの研修
優れた人材には、通常の研修とは異なる特別プログラムに参加させる方法も効果的です。
例えば下記のようなプログラムがあります。
■ 経営幹部候補だけを集めたアクションラーニング型研修
会社全体の課題解決に焦点を当てます
■ 優秀な管理職だけを集めた上級マネジメント研修
■ 優秀で成長意欲の高い若手のみを集めたリーダーシップ研修
など
いずれも、能力と意欲を兼ね備えた人材を選定し、教える内容のレベルが高く、求められる負荷も大きい研修プログラムを用意します。
特定の人材だけを選抜するのは抵抗感がある?
選抜することにより、人によっては妬み、やっかみが生じるかもしれませんが、それはきちんと説明することで解消できます。
全社に対して、次のような説明、情報発信があるといいですね。
会社の成長エンジンとなるポテンシャル人材の育成に積極的に投資すること
能力が高く、かつ成長意欲の高い人材には相応の育成プログラムを用意すること
参加にあたっては、これまでの業績、上司の推薦、本人の意欲などを加味して選定すること
今回選ばれなかったとしても、今後も毎年開催するため挽回や逆転のチャンスがいくらでもあるということ
色眼鏡なく公平な人選を心がける
社員育成の機会にメリハリをつける場合、社員の中で誰を急行に乗せ、誰を特急に乗せるかを判断する必要があります。
この判断を間違えてしまうと、せっかくの教育投資が無駄になるだけでなく、他の社員からも批判を受けてしまうことになります。
人物の選定に際しては、ぜひこちらのブログを参考にしてください。
「経営幹部になる人」と「中間管理職にとどまる人」の差|分かれ道となる5つのマインドセット
社内から逸材 を発掘!バイアスを排除して「本当に優秀な社員」を見つける方法
性別や年齢にとらわれることなく、冷静にフラットに人物を見極めること大事です。
「彼はまだ若いから・・・」
「女性は子育てとの両立に限界があるから・・・」
「〇〇さんは年齢が高すぎるから・・・」
このような先入観を排除し、個人の実績やポテンシャルを客観的に評価するところが最初の一歩です。
まとめ
人事の仕事は「社員全員に対して公平であるべき」という思考にとらわれがちですが、社員育成においては全員平等に行う必要はありません。
新入社員教育、スキル教育、階層別教育などは全員平等に提供されるべきものですが、
それと同時に、会社の未来を支える特に優秀な人材、突出した人材に対しては、ポテンシャルを大きく開花させる経験、成長がさらに加速する機会を与えましょう。
全体の底上げは大事ですが、会社の未来を左右するのは会社を牽引するリーダー人材をいかに育成できるかです。
優秀人材をさらに成長させるにはどのような機会を与えたらよいか、ぜひ考えてみてください。
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