「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまった・・・」 中途採用者の離職 はとても残念なことです。
明らかなミスマッチによる離職であれば止むを得ませんが、多くの場合、入社初期の受け入れに起因する問題が離職につながっています。
早期離職を防ぐためには、入社から3ヶ月程度の初動期において、いかに職場に馴染み、仕事に慣れ、「自分はここでやっていけそう!」という気持ちを抱いてもらえるかが重要です。
今週のブログでは、中途入社社員の早期離職を防ぎ定着化を促すための、オンボーディングプログラムの作り方についてお伝えします。
目次
中途採用者の離職 を防ぐオンボーディング 5つのポイント
中途採用は他社で業務経験がある人を採用するので、受け入れる側の心理として放置しがちなところがあります。
学卒の新入社員であれば手取り足取り教えますが、中途入社者に対しては「お手並み拝見」的なスタンスになり、サポートするよりも、本人が自らの力で早期に成果を出すことを期待してしまいます。
しかしながら、何も知らない新しい会社に入ったという点では学卒の新入社員と変わりません。
上手く人間関係を築けるか不安を抱えているのも同様です。
そこで、入社初期のオンボーディングにおいては以下5つのポイントに留意して、しっかりサポートをしていきましょう。
1 会社を理解する
2 部署を理解する
3 人間関係を築く
4 仕事のルール、トンマナに慣れる
5 仕事を覚え、仕事のペースに慣れる
詳しく見ていきましょう。
会社を理解する
採用面接の段階で会社のことをある程度理解してもらってはいるものの、入社後にも改めて会社の詳細を伝えましょう。
ゴールは、社員に「自分がどのような会社で働いているかを第三者にしっかり説明できるレベル」になってもらうことです。
これにより彼らは、会社の一員としての自覚と誇りを早い段階で持つことができます。
以下は伝えるべき必須項目です。
会社の歴史
事業内容、強み・特徴(同業他社との違いなど)、課題
今後の成長性、事業計画
組織
経営理念
入社初日に人事などの本社部門の人から伝えるのが望ましいです。
できれば、社歴が一定期間あり、社内に精通している人に行ってもらいましょう。
部署を理解する
会社のことを理解したら、続いて配属される部署について詳しく伝えましょう。
伝えるのは以下のような内容です。
部署が提供する商品、サービス
全社における当該部署の役割
主な仕事内容
部署の組織
部署のキーパーソン
入社初日または数日内に配属部署の受け入れ責任者から伝えるのが望ましいです。
人間関係を築く
社内で縦と横の関係性を早期に築けるかどうかは定着化の生命線です。
人間関係でつまづいてしまうと、せっかく業務適性や能力がある人材でも早期離職にいたるリスクが高まります。
関係づくりは「鉄は熱いうちに打て」が原則。中途採用者にとっては入社数日間がとくに重要です。
初日
配属部署の皆さんと挨拶し、お互いに自己紹介する
上司にあたる人と本人で、個人的な交流も含む対話の場をもつ。今後やってもらう仕事、期待することについてもある程度話をする。
部下にあたる人と本人で、個人的な交流も含む対話の場をもつ。
ランチは上司部下や同僚と一緒にとる
数日以内
仕事で関わりの多い他部署の人に挨拶し、お互いに自己紹介する
上司と今後の仕事内容、進め方などの詳細を摺り合わせる
部下から今やっている仕事、仕事上の悩みや困りごとなどを聞く
可能であれば歓迎会を開く
ヒューマンスキルの高い人やマネジメントに慣れている中途採用者は自ら上記のような手順を進めていきますが、どちらかというと受け身で待っている人の方が多いです。
そのような「人によるバラつき」が生じないよう、受け入れ手順を会社の正式なルールとして定め、部署の上司に責任をもって実施してもらいましょう。
中途採用者が同時期に複数名入社する場合、そのメンバー同士(同期)のつながりを深めるのも意味があります。
配属後に職場で困難に直面した時に、”同期”という相談できる存在がいるのはとても心強いです。
仕事のルール、トンマナに慣れる
受け入れの盲点になりがちなのが仕事のルールやトンマナの説明です。
細かい実務的な話ですが、新入社員はここがちゃんと分からないと何をするにも不便で、仕事が滞る原因になります。
同僚に親切な人がいればラッキーですが、教えてくれる人がにいないと孤独感がつのるので、オンボーディングの流れの中でしっかり説明の時間をとりましょう。
1 各種ルール(就業規則、勤怠、手続きなど)
2 利用システム(勤怠、経費精算、グループウェア、メール、情報保管場所など)
3 社内のコミュニケーションの特徴(メインはメールか?チャットか?、電話の利用、報連相の方法など)
4 主な会議(会議の種類、スケジュール、本人が参加するもの)
5 服装、休憩、昼休みの取り方など
上記の中でも2~5は会社のカルチャーが色濃く出ます。
異なる文化から入ってきた中途採用者は、実はここで戸惑うことが多々あります。
最初に伝えておけば本人も順応しやすくなるで、必ず説明の時間をとりましょう。
伝え方としては、全社共通の内容は本社人事から伝え、部署個別の内容は部署の人事または上司から伝えるのがよいでしょう。
仕事を覚え、仕事のペースに慣れる
中途入社初期は会社を理解し、周囲との人間関係を構築し、職場に馴染んでいくことが先決です。
その期間が終わると、いよいよ仕事にしっかり対応し、周囲から信頼を勝ち取る段階に入ります。
中途採用者は前職の経験があるので、1から手取り足取り教える必要はありませんが、完全に放置して本人頼みにしてしまうと離職リスクを高めます。
中途採用者を受け入れる上司は、下記の点を意識してサポートすることで、早期に仕事に慣れ、成果を出す近道になります。
入社後の仕事進行スケジュール
入社から一定期間までの仕事のステップアップの目安を伝えます。
目安が何もないと、自分が順調に仕事を覚えているか、貢献できているか、成長しているか、が不安になります。物差しを提示してあげることで、自分のペースを判断し、軌道修正しながら進んでいくことができます。
以下は営業職の例です。
1ヶ月目:業務知識、商品知識の習得。先輩社員との同行商談
2ヶ月目:既存顧客の引継ぎ、顧客への挨拶、新規商談への同行
3ヶ月目:単独営業開始。新規開拓研修参加
4ヶ月目:新規受注1社以上、先輩社員の事例勉強会参加
5~6ヶ月:新規受注3社以上、先輩社員の事例勉強会参加
定期的な1対1の面談とフィードバック
定期的に1対1の面談の時間をとり、困っていることがないか?何かサポートが必要か?を聞いてあげましょう。進捗に対して上司の視点からフィードバックを行ってください
適応が遅い社員への追加支援と育成指導
仕事への適応が遅い場合には、別メニューを与えたり、不足知識を補ったり、コツを教えるなど育成指導を行います。
例
- ロープレの相手になる
- 過去の営業商談事例集を渡す
- 商談に行く前に狙いや提案内容をチェックする
オンボーディングアンケートの設計
入社初期のオンボーディングにおける5つのポイントについて説明しました。
この5つのポイントが実際に順調に進んでいるかをチェックする仕組みとして、オンボーディングアンケートの実施をおすすめします。
なぜなら、5つのポイントを定めたところで、人事担当者が忙しくて説明を省いてしまったり、受け入れる現場の上司が中途入社者と面談の時間をとってくれないなど、色々な不備や抜け漏れが生じるからです。
それらが放置されたままだと早期離職につながりかねません。
そこで、受け入れの不備や本人の悩みを早期に拾い上げ、対策につなげるためにアンケートを実施します。
アンケートの発信主体は本社人事とし、「アンケートに書かれた内容は直上司には伝えない」とした方が、本音を書いてもらえます。
アンケートで聞く内容のサンプルを提示しておきますので参考にしてください。
入社1週間後、入社1ヶ月後、入社3ヶ月後で、それぞれ質問内容を変え、本人の気持ち、仕事への慣れ、人間関係の状況などを確認するものです。
【入社1週間後アンケート例】
◾️ ご自身の仕事の内容、役割など上司としっかり話はできましたか?
◾️ 仕事のやり方、必要な知識などきちんと教えてもらっていますか?
◾️ わからない事があった時にすぐに聞ける人はいますか?
◾️ 一緒に働くメンバーを紹介されましたか?
◾️ 職場に溶け込めそうですか?
◾️ 仕事内容は入社前に想定していた事と大差ありませんか?
◾️ その他、何か職場で相談できない事や困り事があればご記入ください
【入社1ヶ月後アンケート例】
◾️ 仕事に慣れてきましたか?
◾️ 仕事のやり方、知識などきちんと教えてもらっていますか?
◾️ わからない事があった時にすぐに聞ける人はいますか?
◾️ 普段から上司としっかりコミュニケーションがとれていますか?
◾️ 職場の同僚や部下との人間関係は良好ですか?
◾️ 仕事内容は入社前に想定していた事と大差ありませんか?
◾️ 体調は問題ありませんか?
◾️ その他、何か職場で相談できない事や困り事があればご記入ください
【入社3ヶ月後アンケート例】
◾️ 今後職場で貢献していけると感じていますか?
◾️ 上司としっかりコミュニケーションがとれていますか?
◾️ 職場の同僚や部下との人間関係は良好ですか?
◾️ 今後の役割や自分が期待されていることは明確ですか?
◾️ 仕事量は妥当ですか?
◾️ 体調は問題ありませんか?
◾️ その他、何か職場で相談できない事や困り事があればご記入ください
アンケート結果は本社人事が確認し、悩みが深刻な場合に本人と面談したり、必要に応じて本人の上司に改善を促したり、サポート対応を行ないます。
3ヶ月経過した節目では、本社人事が対面で面談を行い、本人のマインドを確認しつつ、職場適性、仕事適性、ポジション適性などを判断することも必要です。
まとめ
中途入社者の早期離職を防止し、少しでも早く職場、仕事に慣れてもらうためのオンボーディング施策についてお伝えしました。
今の中途採用市場は競合が多く、少ないパイの奪い合いとなっています。
採用コストはどんどん高くなり、採用決定までの時間も長期化しています。
であるからこそ、せっかく採用した人材が早期離職してしまったら、あまりに大きな損失です。
採用するまでに多大な力を注いだのと同様、入社後もしっかり定着を促す仕組みを作り上げましょう。
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