上司と部下は、人としての上下関係ではありません。組織の中で異なる役割と責任を担っている関係です。
上司の役割は組織としての成果を出すことであり、部下の責任は担当業務で成果を出すことです。
そのゴールに向けて、上司は部下に対する指示指導を行い、成果が出るようサポートし、組織の意思決定を行う仕事です。
上と下という立場でとらえ、「上司の言うことが聞けないのか」というスタンスのマネジメントは有効な方法とは言えません。
私は管理職研修や幹部育成研修などのトレーナーとして、マネジメント育成を支援させていただくことがあります。
研修のテーマは、リーダーシップ、PDCA、コミュニケーション、部下の育成など多岐にわたりますが、最も大切にしているのは上司としての心構えや役割認識についてです。
チームの大小問わず、メンバーを統率する上司は、
「本来何をするべき役割なのか?」「どのような責任がある仕事なのか?」
という非常にベーシックな部分の理解が不足している方がたくさんおられます。
基本的なこの理解が揺らいでいると、いくら努力してもマネジメントが上手く回りません。
今週のブログでは、部下を持つすべての上司が大前提として抑えておくべきポイントについてお伝えします。
上司と部下の関係とは

部下を持つ人が最初に認識しておくべきことは「上司と部下の関係とは何ぞや?」ということです。
上とか下という字が使われていることもあり「上司は部下より権力がある」と考えている人もいますが、その認識は改める必要があります。
上司と部下の関係は上下関係ではない
「つべこべ言わずにやれ!」
「俺の指示に従わないやつは出世させない!」
「嫌なら他の部署でも行けば!?」
こんなことを言っている人があなたの会社にはいませんか?
または内心思っている人がいませんか?
上司も部下も同じ人間です。まるで召使いに対するような言い方をしては相手を不愉快にさせるだけ。
そして、厳しく指導することと、権力をふりかざすことは意味が違います。
上司と部下は上下関係ではなく、お互いのリスペクトの元に成り立つ関係です。
上司と部下は役割分担
上司と部下は、仕事を役割分担していると考えましょう。
上司は束ねる組織全体の成果に責任をもち、部下は自分の担当業務に責任をもつという関係です。
それぞれが会社組織にとって必要な機能であり、その機能を分担し合っている関係です。
組織として意思決定する権限は上司にありますが、それは上司が「偉いから」ではなく、「意思決定する役割、部下を導き育てる役割、を担当しているから」にすぎません。
部下の業績が悪いのは、本人の問題もありますが、部下が業績達成できるようサポートして導くのは上司の役割であるため、上司の責任でもあります。
部下は上司の鏡
部下の行動や成果に問題があるとき、部下だけを責めるのではなく、自分の関わり方や組織の状態にも原因がないか振り返ることが上司には求められます。
出来の悪い部下を嘆く上司がいますが、その姿勢こそが問題です。
子は親の鏡と言うように、部下は上司の鏡。
部下の能力不足は上司の能力不足や指導不足を映しています。
部下の遅刻や勤務態度の乱れは上司および所属組織の乱れに起因する場合がほとんどです。
- 部下に本気になって欲しければ自分が本気になる
- 部下に本音で話して欲しければ自分が本音で話す
こういった姿勢が求められます。
続いては「上司の役割とは何か?」についてです。
上司の役割とは

上司の役割は、単に部下の仕事を「管理すること」ではありません。最も重要なのは、部下の力を活かしながら組織全体を動かし、組織目標を達成することです。
「上司の役割は部下を管理すること」だと思っていませんか?
しかもその“管理”というのは、「部下の仕事の状況を把握し、必要に応じて指示・指導や各種承認等を行い、状況を自分の上司に報告すること」だと認識されがちです。
しかし上記の“管理”は上司の数ある仕事のごく一部でしかありません。
組織の長である上司の最も大事な役割は、組織目標の達成です。
組織には必ず目指すゴールがあります。
営業組織であれば売上やシェアなどの目標、
物流部門には配送スピードやコスト削減などの目標、
カスタマーサービスには顧客満足度の向上、などの目標があります。
その目標に向けて、経営資源である人、モノ、カネ、情報を駆使して達成させることです。
では組織目標を達成するためにやるべき仕事のうち、上司が特に力を注ぐべき仕事は何でしょうか?
それは「たゆまぬ改善・革新」「人材マネジメント」「会社方針の媒介役」の3つです。
たゆまぬ改善・革新
上司には、目の前の業務を回すだけでなく、組織が継続的に成果を上げられるよう仕事のやり方を改善・革新していく役割があります。
昨年と同じことを継続するだけでは、仮に今年の目標を達成できたとしても十分には評価されません。
組織目標を来年も再来年も達成するためには、常に仕事の質を改善・革新していく必要があります。
日々のPDCAを回しながら、戦術の見直し、品質改善、顧客満足度の向上、省力化、自動化、ナレッジの蓄積、リスク対応などを常に意識し、組織的な改善・革新を促していきます。
メンバーが目先の仕事にとらわれすぎないよう、改善・革新につなげていくのは上司の重要な役割です。
人材マネジメント
組織目標を達成するためには、部下一人ひとりの能力を高めると同時に、その力を発揮しやすい環境をつくる必要があります。
部署のメンバーの能力を高め、その力を最大限引き出すことができれば、組織力は大いに高まります。
上司が”人材マネジメント”として力を割くべきは「人材育成・管理」と「環境整備」の2点です。
★人材育成・管理
部下が成果を上げるために必要な業務知識やスキル、仕事の姿勢などを高めます。
上司が直接教えるだけでなく、メンバー同士の学び合い、外部研修、マニュアル整備、自己学習等も上手く組み合せます。
仕事の姿勢に問題があれば指導します。
部下が様々な壁を乗り越えていけるよう、精神的な支えにもなってあげます。
また成果をあげるためのサポートとして、目標設定~進捗管理~指導・フィードバックのサイクルを日常的に回します。
★環境整備
メンバーが力を発揮しやすい土壌づくりも欠かせません。
個々のメンバーの能力が高くても、お互いの関係性が悪く協力姿勢がなければ組織として成果を上げることができません。
相互に信頼感があり、皆が意見や気づいたことをフランクに言える職場にするため、常にアンテナを張っておく必要があります。
リモートワーク環境などの整備や勤務体系など、メンバーが働きやすい環境を整えるのも大事な仕事です。
メンバーが余計なストレスに悩むことなく、全力で仕事に集中できる環境を用意してあげなければなりません。
会社方針の媒介役
上司には、経営陣の方針をそのまま伝えるだけでなく、現場が理解し行動できる言葉に置き換えて伝える役割があります。
会社のビジョン、社長の発するメッセージは、必ずしも現場の担当者に正しく伝わっているとは限りません。
上司は各現場が理解しやすい形で伝え直し、正しい認識と実行を促します。
会社が言っていることと、現場でやっていることが食い違わないよう、現場に落とし込んでいくのも上司の役割です。
上司と部下の関係・役割についてよくある質問
Q. 上司と部下が上下関係ではないなら、仕事上の指示をどのように行えばよいですかよいですか?
上司と部下は人としては対等です。上と下のようにとらえてしまう人は、権力で従わせるような指示になりがちです。
「上のいう事なんだから聞け!」ではなく、仕事としてあるべき方針・やり方をわかりやすく伝え、自分自身がなぜそのように考えるかの背景を説明し、相手が納得できるよう導く指導が求められます。
自分の考えを受け入れてもらいやすいよう、普段から信頼関係を築き、部下のことをよく理解しておく姿勢も大切です。
Q. 部下の成果が上がらないとき、上司はどこまで責任を持つべきですか?
部下本人にも、自分の担当業務で成果を出す責任があります。
一方で、目標設定、必要な指導や支援、働きやすい環境などを整えることは上司の役割です。
成果が上がらない場合は、本人の課題だけでなく、上司の関わり方や環境にも改善できる点がないかを振り返ることが大切です。
Q. 部下を尊重しながら、必要な指導をするにはどうすればよいですか?
部下を尊重することは、何でも受け入れたり、厳しいことを言わないことではありません。
必要な指導や注意はしっかり行いながらも、人格ではなく行動や仕事の進め方に焦点を当てて伝えることが重要です。
上司の立場を使って押さえつけるのではなく、役割と責任にもとづいて伝えることで、相互のリスペクトを保ちやすくなります。
まとめ
上司と部下は、人としての上下関係ではなく、それぞれ異なる役割と責任を担う関係です。
そして上司の最も大きな責任は、部下を支配・管理することではなく、組織目標を達成することにあります。
まとめて確認しましょう。


部下を持つ上司は自らの役割を正しく認識することが出発点です。
間違っても部下に対して「あなたを管理することが私の役割」と思ってはいけません。
上司が意識すべきなのは、
上司と部下を人としての上下関係だと考えない
組織全体の成果に責任を持つ
仕事を継続的に改善・革新する
部下を育て、力を発揮できる環境を整える
会社の方針を現場につなぐ
という役割です。
上司としての役割認識が変われば、部下への接し方も変わります。
部下を「管理する対象」と見るのではなく、同じ組織目標に向かって異なる役割を担うメンバーとして向き合うことが、より良いマネジメントの出発点です。
こちらの記事もおすすめです。





