指示が下手な上司?指示が伝わらない部下?「 仕事の指示 」をめぐるお互いの不満の解決法

2023.01.20

 
仕事の指示 の出し方ってなかなか難しいものですよね。

伝えたはずなのに伝わっていなかったり、想像していたアウトプットイメージとは違うものが出てきたり…。
 

「仕事の指示の出し方」は、実は思っている以上に成果への影響度が高いものです。 
 

指示が適切であれば、部下は良い仕事を効率的に進められます。

指示が適切でない場合、多くのロスを生み出します。
 

上司が「指示出しが下手な人」と言われてしまうこともありますが、

指示を出す側の上司の問題であると同時に、受け手の部下の問題でもあります。
 

今週のブログは、仕事の質を最適化する指示の出し方/受け方についてお伝えします。

 

仕事の指示 が上手くいかないのはなぜ?

 
仕事の指示が上手くいかない場合、いくつかの原因があります。

とても基本的なことばかりですが、実際の職場では疎かにされていることが多い問題です。

 

仕事の指示が上手くいかない原因「目的、背景を伝えていない」

 
例えば、営業企画の担当者に上司が次のような指示をします。
 

「各支店の経費がどのくらいかかっているかまとめて欲しい」
 

もしこの指示に対して、担当者が

 
「はい、わかりました」

 
と言って作業を開始したら、残念ながら上手くいかないことが最初から明らかです。

「12月の札幌支店70万円、仙台支店50万円、新潟支店45万円、横浜支店80万円・・・」

このようなアウトプットが出てきても何らおかしくありません。
 

上司が欲しかったのは、そのようなアウトプットではありません。

「各支店の発生経費を比較した上で、経費の使い過ぎを検証するための根拠資料」が欲しかったのです。
 

よって、アウトプットには「各支店に在籍する営業担当者の人数や経費の明細」まで情報がなければ、その目的を達成することができません。
 

最初に「なぜ当該業務を行うのか?」「それを何に使うのか?」という情報伝達をしないと、このような擦れ違いが生じてしまいます。

どんな仕事の指示であっても、最初に目的や背景を伝えることが重要です。

 

仕事の指示 が上手くいかない原因「指示がアバウトすぎる」

 
仕事の指示はアウトプットイメージをお互いに共有できるレベルまで、解像度を上げる必要があります。

先ほどの例の営業支店の経費比較の場合、解像度が高い状態というのは次のようなイメージの共有ができていることです。

 

  • 各支店の昨年1年間(※月のバラつきがあるので1年通算で見るべき)の経費を調べる
     
  • 経費額は、経理部から支店別、経費明細別(交通費、会議費、交際費・・・)のデータをもらう
     
  • 経費明細別に区分された積上げ棒グラフで各支店の発生経費を比較できるようにする
     
  • 各支店の営業人員数にもとづく1人当たり経費を、同様に積上げ棒グラフで比較できるようにする
     
  • 各経費について、1人あたりの金額の大きい順にランキングを作る

 

仕事の進め方について、このレベルまで具体的に認識合わせできていれば、後でピントのずれたアウトプットが出てくることはないでしょう。
 

「えっ?ここまで細かく指示しなきゃ駄目なの?」と思う人もいるのではないでしょうか。

それこそが上司の腕の見せ所です。
 

優秀な部下であれば、もっとざっくりした指示であっても目的をしっかり伝えれば十分でしょう。

そうでない部下の場合、このレベルまで具体的に明示しない限り、適切なアウトプットにたどり着けない可能性が高いです。
 

 

「指示が伝わる部下」と「指示が伝わらない部下」の違い

 
 
「部下にどこまで具体的に指示すべきか」を見極めるポイントがあります。

 
優秀な部下の場合、上司のざっくりした指示に対してこのように的を得た質問や確認をしてきます。
 

 「経費は月毎のバラつきがあるので、1年分の合計を使っていいですよね?」

 「経費は明細別に分けた方が、何に使いすぎているか分かるのでいいですよね?」

 「支店合計額だけでは比較しづらいので、1人当たりにした方がいいですよね?」
 

ここまで先を見通せる人であれば、ざっくり指示でお任せしても問題ないでしょう。

 

逆に質問も確認もない部下の場合、見通す力や構想する力が弱いので、お任せしても望むアウトプットが出てきません。

このときは必ず上司の側から解像度を高めるための説明をする必要があります。

 

仕事の指示 が上手くいかない原因「コミュニケーションが一方通行」

 
仕事の指示において「●●をやっておいて。来週までに」だけで終わってしまうような、一方通行のコミュニケーションがあります。

上司は指示したつもりになっていますが、部下は本当に理解、腹落ちしているでしょうか?
 

もし部下からすぐに質問や意見が出なかったとしても、本人の内面では
 

「いやー、今は忙し過ぎてその仕事をやる余裕がない・・・」

「具体的にどうやっていいかよくわからない・・・」
 

といった印象を抱いていることもあります。
 

特に上司が部下から「恐い上司」と思われている場合、部下は質問したくてもできませんし、そうでなくても上司がいかにも忙しそうにしていると質問のタイミングを失うこともあります。
 

この状態を放置してはいけません。

「一方通行の業務指示」というのは、上手く進むことは滅多にないからです。
 

指示した後には必ず、
 

「どのように進めればよいかイメージできる?」

「やる時間はある?」

「何か不明点や不安点はある?」
 

などと投げかけてください。
 

何度か会話のキャッチボールをすることで、部下は指示内容への理解が深まり、どのように進めたらよいかイメージが湧いてきます。
 

仕事の指示

 

仕事の指示が上手くいかない原因「スケジュールが曖昧」

 
仕事の指示は常に期限とセットなので、期限を曖昧にしてしまうとうまくいきません。
 

加えてもう一つ大事なのは、期限までの途中進捗の管理です。
 

ある程度試行錯誤が必要な仕事の場合、締切最終日の一発回答ではうまくいかないことが多いので、途中で一度擦り合わせの場を設定し、方向性がずれていないか確認し合う場をもうけましょう。
 

必ず具体的に「期限は1週間後、途中経過報告は3日後」のようにあらかじめ定めておきます。

 

仕事の指示を出すマナー、受けるマナー

 
仕事の指示がうまく行かない要因についてお伝えしましたが、「仕事の指示」を、上司にとっても部下にとってもスムーズに進めるには、双方の歩み寄りが欠かせません。
 

ポイントは
 

「上司は正直に」

「部下は上司の視点で」
 

具体的に見ていきましょう。

 

「上司は正直に」

 
なぜ上司が正直であるべきかというと、仕事の指示を出す上司自身が、アウトプットのイメージを描けていなかったり、具体的な進め方を設計できていない場合があるからです。

そんな時、上司自身が分からない仕事を、曖昧な指示で部下に丸投げしてはいけません。
 

分からないのであれば、
 

「この仕事は部長から指示されたんだけど、僕も正直どう進めていいか見えていないんだよね。」
 

と正直に伝えます。

 
恰好つけず上司もわからないことは分からないと伝えれば、部下はその分自分がもっと考えねば!という気になってくれます。
 

また、「上司は部下より優秀」とは限りません。自分より優秀な部下をもつ人もいるでしょう。

その時は素直に部下に相談してください。

 
「僕はどんなアウトプットがよいかイメージできていないんだけど、●●君、知恵を貸してもらえるかな」
 

「上司は部下より優秀でなきゃ」とか「部下に、できない自分を見せるのは恥ずかしい」という思考に縛られると、上から目線の的を得ない仕事の指示になり、結果としてうまくいきません。
 

上下関係で指示するスタンスを捨て、「部下は仕事のパートナー」と捉えて仕事を指示する意識を持ちましょう。
 

「上司と部下の関係」については、こちらの記事もご覧ください。
 
 

 

「部下は上司の視点で」

 

「上司からの仕事の指示が曖昧だ!」と文句を言っている人は、自分の仕事の仕方を変えてみましょう。
 

仕事を受ける時は、指示に対して質問し、不明点を確認する「受け手の義務」があります。
 

上司が最初から明確に伝えてくれればいいですが、そうでない場合、部下の方から不明点をちゃんと問いかけなければなりません。

上司に「その仕事の目的は?」「具体的なアウトプットイメージは?」「期限は?」と問いかけてください。
 

上司自身がゴールをイメージできていないのであれば、上司を批判するよりも、自分だったらどんなアウトプットが望ましいか、必死に知恵を絞ってください。
 

そうすれば何か解が見えてきますし、何より自分の力がつきます。
 

上司からの指示通りに受け身で仕事をする限り、いつまで経っても仕事の応用力がつきません。

指示の内容をより深く理解するための質問を繰り返し、上司と同じ目線でアウトプットの在り方について議論する。

是非そういう仕事の習慣を身に着けていきましょう。

 

まとめ

 
普段何気なく行っている仕事の指示は奥深いものがあります。
 

仕事の背景/目的を共有し、アウトプットイメージを共有し、作業ステップを確認し、お互いの疑問点や不安点を解消し、具体的なスケジュールを描く、という双方の綿密なコミュニケーションがあってこそ、仕事の指示が質の高い仕事につながります。

 
ついつい各ステップを疎かにしてしまいがちですが、この基本を忘れてはいけません。

仕事の指示は指示する側だけではなく、指示する側と指示を受ける側の両方に責任があります。
 

上司は部下を「仕事のパートナー」と捉えて正直に伝え、部下は受け身ではなく上司の視点で責任感を持って指示を受けるのが仕事のマナーです。

お互いが歩み寄ることで、仕事の質が高まり、それが皆にとってのハッピーにつながるはずです。

 

 

こちらの記事もおすすめです。
 

筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

筆者プロフィール詳細