手のかかる部下 にどう向き合うか
上司の時間は有限です。
ほとんどの上司はプレイングマネージャーなので、個人としての業務目標も持ちつつ、チームの目標を持って部下のマネジメントをしなければなりません。
部下の人数が増えれば増えるほど、1人に対して割ける指導やアドバイスの時間も限られます。
その中で多くの上司が時間を取られがちなのが、「 手のかかる部下 」への対応です。
手のかかる部下に多くの時間を費やしても、その部下には全然改善が見られない一方で、他の部下に向ける時間がなくなってしまうーーー
このような本末転倒の結果になりかねません。
今週のブログでは、「手のかかる部下」にはどのように対応すべきか、上司の貴重な時間をどのように使うべきかについてお伝えします。
目次
「上司」の役割はチームの成果を出すこと
上司の最も大事な役割は、部下を管理することでも、部下を育てることでもありません。
メンバーの力を引き出し、チームとして最善の成果を上げることです。
そのため、マネジメントにおいて常に意識すべきなのは「自分はその目的に適う仕事をしているか?」ということになります。
もしあなたの部署に手のかかる部下がいた場合、その人の面倒をどこまで見るか、どこまで時間を使うかは、「チームとして最善の成果を出す」という目的のために、必要ならばやるし、必要でなければやらないという判断になります。
手のかかる部下 の原因は何?
手のかかる部下、成果の出ない部下には、当然ながら原因があります。
もし、部下の成績が悪い原因が以下のようなものである場合には、指導の仕方次第で十分に回復の可能性があります。
頑張っているけどやり方がズレている
真面目すぎて精神的に落ち込みやすい
同僚との人間関係がうまくいかず仕事に影響している
あれこれ色んな仕事に手を出し過ぎどの仕事も成果が出ない
など
上記のケースでは、適切な指導を行うことで、成果が改善される可能性があります。
一方で、「明らかに能力が不足している」「やる気がない」「仕事に対して不真面目である」などの場合は、簡単には改善できないでしょう。
ここからは、これらが原因で成果が出ない「手がかかる部下」を念頭において、その対処の仕方をお伝えします。
この3つがない部下には時間を使い過ぎない
まず、どんな仕事であっても最低限やるべき事をやるためには、以下の3つが必要です。
真面目に集中して仕事に取り組む姿勢
一定の意欲(向上意欲、改善意欲、貢献意欲など)
一定の能力
これらが備わっていない人は、第三者である上司の力だけで成果を出させるのは容易ではありません。
さまざまな工夫や努力によって改善できる余地はありますが
「部下指導という投資」に対するリターンを得るのは難しいでしょう。
他の部下にかけるべき時間も踏まえると、この部下にはあまり時間をかけず、最低限のマネジメントに留めることが求められます。
手のかかる部下 への具体的なマネジメント方法
手のかかる部下の指導においては、以下の4つを意識してみてください。
やるべき事を明確化し、それ以外の時間を使わない
高すぎる要望をせず、最低限必ずやってもらうことを明示します。
具体的には、1日、1週間、1ヶ月の単位でやるべき業務を明確に指示します。
その上で、2週間の間に一回程度、30分ほどのまとまった時間をとり、進捗を報告してもらいます。
この報告の場では上司から聞くのではなく、部下の方から「やるべきことに対して何がどの程度進んでいるか」を報告してもらいましょう。
その際、以下のように客観的に事実を伝えることが重要です。
「〇〇はできているね」 / 「△△はできていないね」
そして、できていない部分については「次回までには必ず終えてください」と伝えます。
恐らくこの段階でもできていないことが多いと想定されますが、その際もあまり叱ったり、原因追及したりせず
「最低限この仕事をやってもらわなければ会社として困ります」と厳しめに伝える必要もあります。
この報告サイクルを基本とし、原則それ以外の時間をこの部下には使わないと決めることが大切です。
1. 1日、1週間、1ヶ月の単位でやるべき業務を明確に指示
2. 進捗を報告させる
3. 客観的に事実を伝える
4. できていない部分を指摘する
5. さらにできていない場合は厳し目に伝える
➡︎これ以外の時間を割かない
できていなければ低い評価をつける
半期に一度の業績評価の際には、もし半年間通じて指示した仕事ができていなければ、その通り低い評価をつけてください。
評価は会社の基準に則って、できるだけ感情を入れず、客観的な評価を行うことが重要です。
会社の評価制度によりますが、評価が低ければ、賞与の金額が同僚より低くなり、昇格はおろか、降格となり給料が下がることもあるでしょう。
気持ち的に「かわいそう」と感じるのは共感できますが、それに流されてしまうと、成果を出した人も出していない人も扱いが近くなり、成果を出した人が不満を覚えます。
「やるべきことをやらなくても給料が下がらないんだ」となれば、それが会社のメッセージとなり、他の社員に蔓延してしまう恐れもあります。
冒頭でお伝えしたように、上司の役割は何でしょうか?
チームとして成果を出すことがゴールである以上、やるべき事をやらない人を低く評価することもマネジメントに欠かせない判断です。
成果が出ない原因をしっかり伝える
上司の気持ちとしては、そうは言っても自分の部下に成果を出せるようになって欲しいという「親心」のような気持ちを抱くこともあるでしょう。
その時にすべきことは、成果が出ない理由を率直に伝えることです。
例
上手くいかない時にすぐに他人のせいにする癖がある
➡︎ その点を明確に指摘し「改善しないと成果が出ませんよ」と伝える
ITツールを活用するスキルが足りていないのに学ぼうとしない
➡︎ 「このまま学ばなければ、いずれ任せられる仕事がなくなりますよ」と伝える
自分の仕事の後始末で周囲に迷惑をかけているのに周囲にお詫びや感謝がなく、結果として周囲から一緒に仕事したくないと思われている
➡︎ すばりその問題を指摘して改善を促す
仕事で成果が出ない人の多くは、成果が出ない要因の上位3つを直せば、ある程度は仕事ができるようになるものです。
上司がそれに気づいているにも関わらず、面と向かって指摘しなければ、その部下は「仕事ができない存在」から抜け出せません。
間違っても、最も直すべき問題を棚に上げ、スキル指導や学習、励ましやプレッシャーで成果を出させようとしてはなりません。
その方法では時間を浪費するばかりで、得られる成果はあまりなく、上司自身が疲弊してしまうだけでしょう。
期待する以上は信頼する
成果が出ない部下であっても、あなたが改善に期待しているならば、その気持ちを示すことも大切です。
成長の可能性を感じているならば、いったんは部下を信頼し、人と人としての関係を築き、期待を口に出して伝えてあげましょう。
指導に時間はかける必要ないものの、「期待」はかけます。
その上で改善点を指摘し、芽が出るのを待ちましょう。
とくに人に信頼される経験が少ない人の場合、信頼されるだけで行動が変わるケースもあります。
「期待する」「信頼を示す」ことは、有効な方法の1つと言えるでしょう。
まとめ
上司の悩みの一つに、手のかかる部下への対応があります。
その対応に手を焼くあまり、上司自身が体調を崩したり、マネジメントの仕事が嫌になってしまうことも少なくありません。
手のかかる部下は上司1人が背負い込み、再生に導くのは決して容易なことではありません。
他の部下へのサポートがおろそかになり、チーム全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼすリスクもあります。
あまり情や義務感にとらわれることなく、この記事でお伝えした観点を踏まえながら、必要以上にエネルギーを使わず淡々と対処することが重要です。
この姿勢が、結果として上司自身やチームにとって良い結果をもたらします。
「チームとして成果を出す」という上司の本来の役割を果たしながら、より健全なマネジメントを実現するためのヒントとして、今回の内容をご活用いただければ幸いです。
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